慌てた様子で、ゴールデンローズ劇場が誇るスタイリスト殿は、煌びやかな舞台とは程遠い、この古惚けた探偵事務所に飛び込んできた。その勢いで私の腕の中に飛び込んできてくれても大歓迎だったのだが、彼は私の襟首を掴んで揺さぶった。
「知りませんでしたよ、おまえがクロートーのファンだったなんて……!」
なんだと。気分はまるで浮気を問い詰められる亭主だ。いや待て、悋気を浴びる伴侶という立場なら、全くの悪展開、というわけでもないように思える。だがそんな感情は、今は仕舞っておかなければならない。
「なんのことだ?」
「ホセのお巡りさんから聞きましたよ!?クロートーのファンサービスの列に加わって、彼女と握手をしてサインまで貰ったそうじゃないですか!?」
ホセ、ということはあの時、互いの情報交換のために、そう装う必要があった場面のことか。ホセめ、あれは自分は演技をしただけだと、分かり切っているはずなのに、どうせ話を端折ったんだろう。だから結婚相手がいないんだ、まったく。
「それは事件の情報をクロートーと遣り取りするための表面上のものだ。周りに勘付かれないためのな。」
「……ふーん?」
金のハサミは大人しくなった。どうやら事情を察して落ち着いてくれたようだ。本来彼は思慮深い。それがこうも取り乱してくれるとは、そんな一面も見られたことは、ラッキーだった。
「そう、私はクロートーなんて興味無……。」
「はあ!?貴様馬鹿にしているのか!?クロートーは、薬を使ったレディベラにこそ敵いませんでしたが、あの子だってプロなんですよ!?それをなんの魅力も無いと!?おまえ程度の男ならイチコロのはずですが!?」
「ええ……!?」
さっきより癇癪が大きいように思えるのは気のせいだろうか。悲しい。
いつもの助け舟、頼みのトゥルースは席を外している。金のハサミとのこの近い距離感は美味しいが、やっぱりアンラッキーかもしれない。
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