望月 鏡翠
2026-04-13 00:09:14
984文字
Public 日課
 

#2048 THE MEME! その15

#毎日最低800文字のSSを書く/ダーリンランデヴー!

「模造品」「大水槽」「貴方ごしに見ている、見られている」
 愛するものが何一つないとはおかしな話じゃないか。
 今こうして、愛するものと見つめあっているというのに。
 本当に一つもないというのなら、今すぐその同じ顔の片割れを置いて仕事に戻ってもらいたいものだ。
「愛しい妻がいるじゃないか」
「これは模造品です。俺そのものも、そうだ。一度死んで蘇った偽物です」
 確かにラダが自分を歴史上の有名人だと思っているだけの、ただのおかしな人間であるという可能性だってあるのだ。異常な再生能力を見せたので、ダーリンであることに変わりはないが。外見は彼女の名乗る生前の人物と異なっている。
 本当のところは誰にもわからない。
「偽物は、愛せないか」
「大切に思っています。ただ喪失の悲しさを埋めてくれるわけではありません」
 観覧車の中、向かい合って座る二人の表情は動かない。全く人形のような女なのだ。
「お前も同意見なのか?」
 ラダのmeme_@を見る。
「俺とラダは考えを同じくしています。ですが、イライジャが混乱するので、口を開くのは片方にしようと決めました」
「なるほど、気遣い痛み入るな」
 果たして、本当にそうか。
「違いを見抜かれないようにするためじゃないか?」
 パンツスタイルの方がラダ、ワンピースをきている方が模造品。そのように認識し、そのように扱っている。しかし知らない間に入れ替わったとして、イライジャにはわからなかっただろう。
 ラダは白々しい作り笑いを浮かべた。
「よく気がつきましたね」
「舐めるなよ。俺はお前を監視してるし、飼い主でもあるんだぜ」
「わかっています。俺は俺の命運をあなたに委ねた。この世界が俺をどのように扱うのか、あなた越しに見ている。そしてあなたに見られている。すみません、あなたのことを騙そうとしました」
「お前はお前の相方が大事で仕方がない。だからいざというときに処分されないように、身代わりになるつもりだったのか」
 だがmeme_@は今のところCLOUD MINEという大水槽の中でしか泳げない魚だ。外に出たらきえてしまうか、出ようとしたところで処分される定めである。
 庇ったところで、なんの意味があるというのだろう。
「それとも、死んでそれで終わりでいいと思ったのか?」
 ラダはその言葉を否定はしなかった。