おそらく、卓球というのは相手に球を返させないようにするのが主たるゲームなのだろう。しかし、卓球未経験の二人の実力は、到底そのレベルには達していなかった。
バウンドの回数などは不問。もちろん点数なんて数えているわけがない。ともかく、途中で球を落とさないようにゆるゆるとラリーを続けることを目的として、しばらく遊んだ。
それで楽しかったのかと言われれば、結論から言えばかなり楽しかった。最初に球が一往復したとき、思わず二人しておおと声が出た。そうやって感動していたので、球を落としてしまったわけだが、不器用なりに二人とも容量が悪いわけではない。
一度コツを掴めば、徐々にラリーが続く時間は増えて行った。
もし次回、卓球をするときがあれば、次はルールを把握するところまではいけるかもしれない。根拠はないが、そう思った。
風呂上がりの体に、また汗をかいて部屋に戻る前に少し涼む。
遊技場の壁沿いはちょっとした休憩室になっていて、自動販売機とベンチで休めた。
温泉街の定番は瓶牛乳というイメージがある。流石にそこまで昔の人間ではないから、何かしらの作品から植え付けられたイメージでしかないのだが、今だになんとなく憧れがある。
とはいえ、ニコチンとカフェインに溺れた比叡は、そのままの牛乳を飲むとあまりの生っぽさに戸惑う。
結局、妥協点のようにコーヒー牛乳を買った。
「そう言えば、野峨くん色ついたところ切っちゃったの?」
髪の毛の話だ。とんとんと自分の髪の毛を指差す。
出会ったときから、短くなっていたなと思ってはいたのだが、正直それどころではないから言及するタイミングが全くなかったのだ。髪型が多少変わったくらいでは、見間違えない顔立ちだったことも助かった。
主に下半身の毛の方に着目していたせいでもある。
まあ、その話は終わったので、さておいて。
確か彼は自分の髪の毛の色をつけたところを、気に入っていたんじゃなかっただろうか。
比叡も人のことを言えた義理ではない毛髪の伸び具合だが、同じ癖毛仲間として共感できる部分があったのだ。
「夏なんで」
「ヤンチャはやめたんだ。似合ってるよ、格好いい」
一足先に社会性がある側に行ってしまったのだなぁ、としみじみしながら甘い牛乳を飲み込んだ。
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