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ぽふむん
2026-04-12 10:30:15
2260文字
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ワンドロ
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魔女の証明
#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「反芻」「余韻」
現代if
大学生しのぶちゃんが、高額な舞台チケットを手にデートに誘った理由は……
舞台の余韻に浸りながら、童磨の解釈を元に内容を反芻するしのぶちゃんです。
私の理解できる範囲での論なので、童磨に語らせるには浅いかもです😅
➕30分
コーヒーの置かれた机の上に肘を付き、礼拝するように指を組んだしのぶは正面に座る男の顔を真っ直ぐに見つめた。
つい先ほどまで観ていた舞台の感想、解釈を求めている。
その様に、正面にいる男・万世童磨は苦笑せざるを得なかった。
「しのぶちゃんが自分からデートに誘ってくれるだなんて、珍しいこともあるもんだなぁ
……
と思っていたら、こういうことだったんだね」
まだ大学生のバイトの給料だ。
映画だろうと思っていたら、そんな気楽なものではなかった。
一枚一万は軽く超える、ストレートプレイのチケットだった。
それを二枚わざわざとって来たのだから恐れ入った。
一体どういう風の吹き回しかと思ったが
「なるほどねぇ」
この舞台の解釈を、宗教に係わる人間として求めてきたのだ。
今日観た舞台は、デートで見にいくような恋愛ものではない。
セイラム魔女裁判。
後に悪評とともに、非キリスト教文化圏でも伝聞されることのある実在の事件を扱った舞台だ。
集団心理の怖さだの、現代でも、どの国、どの団体でも起こりうることだのといった、ありきたりな応えをしのぶは求めていない。
そのくらいのことは童磨は理解していた。
「そうだねぇ
……
」
童磨はあの舞台の内容を反芻した。
他ならぬしのぶの願いだから応えてやろう。
「まず目に入ったのがあの独特な意匠の舞台
……
あの円形の舞台。まるで絞首台の輪のよう。そして、地獄の釜であり、ゴルゴダの丘の暗喩でもあるのかもしれないね」
童磨はまず、八百屋舞台という専門用語のあるステージのことに言及した。
奥にいる演者も効果的に見えるように勾配のあるステージのことだ。
客席から見る分にはいい。
でも、これは演者にとってはきつい意匠だとも聞く。
しのぶは童磨の語りを無言でうなづいて聞いていた。
「キリスト教文化圏の話だと言うのに十字架の意匠は一つも出てこない。
それはセイラム村の住民は清教徒
……
ピューリタンだからかもしれない」
しのぶは童磨の言葉に首を傾げた。
「プロテスタントとかトリックの違い。それは十字架に神がいるかいないか。
プロテスタントにとってそこに神はいないらしい」
こくこくとしのぶは頷いた。
「そして、ピューリタンというのはね、プロテスタントの中でも特に理想主義者な集団のこと。
蔑称の意味合いもあったらしいよ。Twitterなんかで、一部の過激な論調の人に対する侮蔑語を思い浮かべるとわかりやすいかもね」
カトリックに違和感を抱いた一部の信者が分派して、プロテスタントが生まれ、そこから清教徒。
「はっ
……
な
……
るほ
……
」
しのぶは、そんな意思もないのにTwitterのおすすめ欄に流れてくる論争を思い浮かべ納得した。
「そして後半、主役だね?ジョン・プロクターは自分の罪を告解することになる。
魔女と疑いをかけられ、捕縛された妻の疑いを晴らすため。
トランス状態になった振りで妻を陥れ亡き者にしようとしている者がいる。
それが、アビゲイルだ。
あの悪魔憑き現象は嘘だと告訴するために。その本来の原因の証言の為に」
しのぶは、まただまってうなづいた。
「アビゲイルと、それを行うに相応しい場所。家畜小屋で性行為に及んだ
……
キリスト教文化圏以外の人間にとってはムードもヘチマもない、汚く臭い場所で
……
と思うだろう?」
そこで童磨は一息つき、ぬるくなったコーヒーで口を湿らせた。
「聖母マリアはどこでキリストを産んだかな?」
はっ
……
しのぶは息を飲んだ。
「家畜小屋
……
ですね」
「そう。キリスト教の十戒のひとつ『汝姦淫すべからず』妻以外の女と、生殖目的以外の行為をプロクターはしてしまった。
聖なる場所を汚したんだ。神への侮辱行為なんだろうね。
その結果、十七の小娘を本気にさせてしまった。
アビゲイルという小娘の中に、人の子ではなく魔女の種を植え付けてしまった。
己が過ちで、アビゲイルという魔女をセイラム村に呼び込んでしまったんだ」
小娘は、妻を排除しプロクターを我がものにするため、あの狂気の芝居を繰り返した。
アビゲイルの狂言で、無実の者が次々と投獄された。
嘘の自白で自分の尊厳を破壊され生き続けるか、自白せず拷問死、もしくは絞首。
ただの十七の恋に恋する少女が、それを恐ろしいこととも思わなくなっていく狂気。
「後半 獄中でプロクターの妻の妊娠が発覚して刑が延期されたでしょ。あれ、多分受胎告知の暗喩かもね。
だって変じゃない?夫の不貞を疑って、夫婦関係は完全に冷えきっていた。なのに
……
ねぇ。
要するに、性行為してないのに受胎したってこと。尊いことと語られることでしょ。そして妻は最終的にはプロクターを赦しているとも受け止めることができる」
しのぶは目を見開いてうなづいた。
「一方、アビゲイルは愛した男から娼婦と罵られる。
子ではなく悪意と自己保身と虚栄心という魔女を腹の中に育て、罰せられることもなくどこかに消えた。
あれはマグダラのマリアの暗喩だろうね。
実際どこかで娼婦に身を落としたという噂もあるそうだ。
聖女と娼婦の対比かもねぇ」
そこまで語り、童磨はもうこれ以上語りたくないというように手をヒラヒラさせた。
しのぶの求めに応じただけ。
舞台の感想を言っただけだからね。というように。
童磨は、既に完全に冷たくなったコーヒーを一気に飲み干し
「熱いコーヒおかわりしようか」
完全に考え込んでしまったしのぶに微笑んだ。
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