ぽるすみす
2026-04-12 05:23:42
2618文字
Public
 

過ぎ

和田マミセルフ二次創作(※性行為の描写あり。喘ぎなし)

 毎回、マミが和田の下腹部を好き勝手触り続ける間、淫靡な香りを漂わせる気配もなく二人は喋り続けていた。
喋り続けると言うとまるで会話をしているように聞こえるが、七対三でマミの口数の方が多い。それも建設的な話ではなく、聞くことがなくたって人生困らないようなまるで必要のないこと。

「日本橋で食ったコロッケさ、なんかシナモンの味したんだよな。え?順平一緒いたっけ?忘れた」

「犬撫でてるみたい。ここの毛って何て言うの?もも毛?じゃあ桃の産毛は?いや鳥肉じゃなくて、果物の。俺白桃の方が好きなんだよね。缶詰の黄桃ってさ甘いじゃん」

「ジュンペーっていつからズル剥け?自分で剥いたん?エロガキじゃん」


「お前さぁ……フェラチオの時ぐらい口閉じろよ……
我慢の限界が来たように、和田はベッドに腰かけた自身の足の間に一段低いところから体を割り込ませるマミへ文句を投げる。
マミは無駄口を叩きながら終始、和田の陰茎を素手で掴み気が向いたら上下させたり、舌を当てたり、指でなぞってみたりしていたが、元はと言えば和田が要求して始まった行為ではなかった。
 マミが和田のことを恋愛的に好いているのか、和田には分からなかった。反面、和田のことを性的興味の対象にしていることは、マミ本人の口ぶりから明らかになった。
自分じゃ自分のしゃぶれねーじゃん?
他の奴とどんぐらい違うのかとか見てみたいし。
順平と俺がセックスすんのってなんか変だっけ。
マミが一体どんな許容範囲のなんの話をしているのか和田には明確には伝わっていなかったが、自分がマミにとって『セックスしてもいい相手』として認可されたことだけは明確だった。
いつだって断られる想定をせずに確定的な要求をしてくるマミに、和田は毎度「あぁそう。うん。いいけど」で何となく了承していたせいで、体が覚えているかの如く今回も「あぁ、そう。うん。」まで言ってしまった。
「いいけど」と言われていないことなど気にも留めず、マミはそれを了承の言葉だと認識し、おもちゃを貰った子供のように和田で遊び始めた。

 キスなんて前触れもなく体中に触れてきたり。服の上から性器を握られ硬度を持つまで撫で回されては馬鹿にされたり。
そう思えば、マミが飽きるまで何十分も唇を食んできたり。マミが入れてきた舌に和田はどうしたらいいのか分からず、最初の頃はただ少し舐めてやるくらいのことしかしてなかったが、行為が重なる毎にマミの喜ぶ傾向も見え始めた。甘噛みを返してしまったら「邪魔すんなよ」と機嫌を悪くしてしまうが、マミの咥内を蹂躙する分には何故か宜しいらしい。
これはペッティングにおいてもそうであり、マミは時たま乱暴にフェラチオを強要されるのに興奮を示した。
マミは恋人的な行為と言うよりも、制圧されたいという願望を自分より大柄で、男性の、ましてやこんなことを周りに言いふらしでもしたら一蓮托生でお先真っ暗になってしまう手錠付きの相方、和田順平に向けたのだと今なら分かる。

 しかし、それにしては喋りすぎていると和田は感じていた。
セックスの後の侘しさもなければ、セックスで得られる充足感も大してない。なのに、マミの口から出るいらない会話たちがこのセックス紛いの遊びを生活の延長線に結びつけてしまい、どうしようもなく気が抜けてしまう。
和田から懇願して始めた関係でも快楽でもない。向こうに付き合ってやってるだけのつもりだった。なのに、マミはセックスも真剣じゃないうえ会話も真剣ではない。
恐縮もしなければ張り切りもせず、二人が合意した戯れであるかのように和田の性器を好きに弄り、咥えたその口で最近観たドラマの話をする。
 
「和田が全然勃たねーからじゃん。喋れねーくらいデカくしてみろや」
暗に喋るなと言われたマミは、和田の責任だと擦り付けてくる。気まぐれで適当な愛撫を受け半勃起程度を続けている和田の性器を、マミが荒っぽく扱く。
「あででで、おい!人の体!」
「他人の体だから加減わかんねー」
そういいながらマミはさっきより小さい動きで指の腹を上下させ擦った。慣れたような擦られる感触が快感にも届かず、和田は打診をしてみる。
「滑りが悪いっていうか、ローションみたいなのないの」
「あっそういえばローションで思い出したんだけどこの前女の子と新宿のホテル行った時にさ」
「ローションのエピソードトークいいよ!」
マミの止まらない喋りに何も集中できない。最悪和田は絶頂に達せずともマミが飽きさえすれば解放される。しかしながら勃たないと文句言われたりもする。なのにマミの話はあまりにも彼の生活過ぎて、盛り上がるセックスの雰囲気など和田には微塵も感じられない。
別にそれが二人の良きセックスライフを邪魔してしまう懸念点なのかと言われるとそんなこともない。二人のセックスは元々この形から始まり、より良い性交渉を求めているわけでもないのだから。

 しかし、元々は『付き合ってやってる』くらいの気抜けのつもりで体を貸していた和田だったが、最近、どうやったらマミが黙ってセックスするのか考えることがある。
別に黙らせてやりたいわけではない。でも喋ってない姿も見てみたいような気持ちになっていた。
喉元まで性器を咥えて息を漏らすこともできない圧迫に喜んでるマミが、舌を押し込められ上顎から歯列までねぶられることに堪らなくなってるマミが、物も言えないほど余裕がなくなる場面を嫌うとは思えない。
本気でマミに欲情をぶつけたいと沸き立つ想いが和田にあるわけではない。しかし、マミが好きそうなことをしてやることも、見たことない顔を見ることも、やっていい権利があるだろうとは思っていた。
 二人の間にあるセックスという行為は、身勝手で、お遊びで、手慰みの、会話と同じようなものだった。
投げた相手に許されるか許されないかなど関係なく、ただ自分の言いたいことを勝手に言っていいものだった。または、自分のしたいことを勝手にしていいもの。何かのついで。何も覚えていないけど。
和田は堅くもない決意でマミへの攻略を思案した。
何回も繰り返す無駄な対話に、一度真剣に向き合ってやろうじゃないかと。

 和田は床に座っていたマミの胴に腕を回し、同じベッドの上に持ち上げる。胡座をかいてなんのこっちゃと怪訝な目を向けるマミに、和田は膝を突き合わせた。