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2026-04-12 00:36:34
20349文字
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夜は名を持たず 宵の境に託す
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【夜は名を持たず 宵の境に託す】第九回
Ross Fons
【あなた方は、噂を聞いて、依頼を受けて、あるいは偶然
――
夜が明けないという村を訪れるようだ。】
【村の輪郭が見え始めた途端、ふと、空気が薄暗く感じられる。】
【見上げれば、星は傾かず、月は沈まず、夜明け前の色だけが空に留まっている。】
【時間が止まっている、というより──時間の手応えだけが、ここから抜け落ちているように感じる。】
【村の外れ。夜の中に、人影がひとつ立っている。】
【それは冒険者というより、巡礼者や聖職者に近い装いだ。佇まいは静かで、どこか厳かな気配を帯びている
――
】
【
―
夜は名を持たず 宵の境に託す
―
】
(Ross Fons) まったくもう、人使いが荒いのよねぇ!
(Ross Fons) タダで動く便屋じゃないってのよ!もう!
(Ross Fons) (/em はぶつくさ言いながらずんずん歩いている
(Ross Fons) この辺かな、この辺よね
……
こ、怖いことにならないといいけど
……
(Neige Orbis) (/em は長い杖を肩にひっかけながら、村を見渡している。
(Ross Fons)
……
あら?
(Ross Fons) 第一村人発見
……
?いや違うかな、なんだろ、冒険者
……
でもなさそうな
……
(Neige Orbis)
……
ん?
(Ross Fons) ぴ
(Neige Orbis) (/em は足音に僅かに耳を揺らし、振り返った。
(Ross Fons) こ、
…………
こんにちは!?
(Ross Fons) (/em は声が裏返っている
(Neige Orbis) あー
…
こんにちは。こんばんは、か
…
?どうしたの、こんなとこにひとりで
(Neige Orbis) (/em は驚いているのを察して、少し柔らかく笑った。
(Ross Fons) え?あ、いやー、あははは、いや、そのう、噂を聞きまして、ちょっと調査に
……
(Neige Orbis) 噂
…
ああ、そっか。じゃあオレと一緒だな
(Ross Fons) あら。
……
あのう、夜が明けない村があるっていう
……
?
(Neige Orbis) そうそう
…
気になって見に来てたとこ。
(Ross Fons) あ、では村人さんではないと
……
(Neige Orbis) うん、残念ながら。
…
聞いた話じゃ、昔は採掘の作業村だったらしいんだけど
…
事故があったらしくてさ。それから使われてないらしい。
(Ross Fons)
……
事故、ねぇ
……
いろいろ事前調査なさった上でいらしてらっしゃるのかしら
(Neige Orbis) いや
…
あんまり確かな話が聞けなくてさ。オレが知ってるのはそれくらい。
(Ross Fons) ふむ
……
なんだか見たところ、本当に夜で止まってるような気配がしますし
……
その事故ってのが関係するのかしら
……
(Neige Orbis)
…
関係があるのかどうかは
…
まだわからないけど。ずっと空が動いてないのは確かみたいだ
(Neige Orbis) (/em は空を見上げた。星も月も同じ位置に留まり続けている。
(Ross Fons) (/em はNeige Orbisの視線に釣られて空を見上げ、ちょっと怖そうに身体を縮こませた。
(Neige Orbis) (/em はRoss FonsZeromusの様子を見て、少しだけ笑った。
(Ross Fons)
……
不思議というより
……
奇妙なところですね
……
(Neige Orbis) 調査ってことなら、オレもついていってもいいかな?
(Ross Fons) え、あ、はい、もちろん。そちらは何か依頼をうけて
……
というのではないので?
Ross FonsZeromusはNeige Orbisに疑問を抱いてみせた。
(Neige Orbis) うん、ただ興味本位。だから仕事の邪魔はしないよ。
(Ross Fons) あ、なるほど。
……
ま、私も様子を見てこいって言われただけで、解決してこいって言われたわけじゃないし
……
(Neige Orbis) 原因がわかれば、怖くなくなるかもしれないしね。
(Ross Fons) 一緒に見学といきましょうか。ええ。同行者がいるのなら心強いです。決して怖いわけではなく。
Neige OrbisはRoss FonsZeromusに微笑んでみせた。
(Ross Fons)
………………
(Ross Fons) (/em は頬を膨らませている。
(Neige Orbis) ん?キミのこととは言ってないけど
(Ross Fons)
………………………
(Neige Orbis) あはは!ともかく、行こう。オレはネージュ、旅の巡礼師だ。よろしくな。
(Ross Fons) ええ、ええ!そうですとも!周辺の皆様のご心配を取り除くためにも、原因調査といきましょう!
Neige OrbisはRoss FonsZeromusに柔和に微笑んでみせた。
(Ross Fons) 私は幻術士のロス・フォンスです。ネージュさんですね、どうぞよろしく。
Ross FonsZeromusはNeige Orbisにお辞儀した。
Neige OrbisはRoss FonsZeromusにお辞儀した。
(Neige Orbis) さ、て。どこから調べたものかな。
≪村の周囲には、調べられそうな場所がいくつか見受けられる。≫
≪A:採掘用具と鉱石箱/B:崩落対応の資材置き場/C:救出作業の記録跡/D:洞窟の簡易見取り図≫
≪1:指揮者の持ち物跡/2:夜間待機・仮眠の跡/3:撤退準備の装備≫
≪※痕跡調査の順番は自由。分担しても、同行してもいい。≫
≪※今は、見つけたものを眺め、解釈する段階だ。判断は、もう少し先になる。≫
(Ross Fons) ふーーーーむ
Ross FonsZeromusは辺りを見わたした。
(Ross Fons) まずはとりあえず、一緒に近場から見てみましょうか
(Neige Orbis) ん、了解。
≪痕跡A: 採掘用具と鉱石箱≫
【使い込まれた採掘用具がまとめて置かれている。】
【刃こぼれしたツルハシ、摩耗した手袋、木箱に入れられた宝石状の鉱石。】
【箱の側面には、日付と数量を記した簡単な書き込みが残っているが、途中で途切れている。】
(Ross Fons) 採掘の作業村ってことは間違いなさそうですが
……
ううん、古くて記録が途切れてるのかなこれ
Ross FonsZeromusはひざまずいた。
(Neige Orbis) ふむ
…
確かに、何か書いてあるな。数字かな
…
?
(Ross Fons) 日付でもわかれば
……
少なくともその辺りまでは村が機能してたはず
……
【記録から月日までは判別できるが、何年前のものかまでは書かれていないようだ。】
(Ross Fons) んん~~~~、むう、年代はわかんないかぁ
……
(Neige Orbis) うーん
…
極端に昔ってワケでもないんだろうけど
…
(Ross Fons) ですよねぇ、ふむ、手当たり次第に調べてみるしかないか
……
(Neige Orbis) だね、他も見てみる?
(Ross Fons) 私がこの建物あたりを見て回りますので、ネージュさん、向こう側からこっちに向かって調べてみてくれませんか?
(Neige Orbis) 村の奥から?
(Ross Fons)
……
えへへ、はい、ええ、決して怖いから奥の方に行きたくないわけではないのですが、ええ
(Ross Fons) ぎ、逆でもいいですよう!
(Neige Orbis) あはは、いいよ。何かあったら大声出してくれたら、飛んで来るから
(Ross Fons) ええ、私こそ、何かありましたら走っていきますゆえ!
(Neige Orbis) ん、じゃあ見てくる。気を付けてね
(Ross Fons) はい、ネージュさんも
Neige OrbisはRoss FonsZeromusに微笑んでみせた。
【背を向けたとき、使われていたはずの重みだけが、手の感覚に残り続けるようだ。】
【あなたが調べた痕跡からは、この村は"洞窟内の鉱石を採掘するための作業村"であり、一定期間、人員が滞在して作業を行っていたことがわかる。】
(Ross Fons) さーて、ここの建物は
……
なんだろ?(3)
≪痕跡3:撤退準備の装備≫
【携行食やまとめられた荷が、そのまま残されている。】
【使われた形跡はなく、持ち出されなかったまま放置されている。】
【準備だけが整えられていた。】
(Ross Fons)
…………
こわくなーい、こわくなーい
(Ross Fons) (/em は自分に言い聞かせている
(Ross Fons) 使う必要がなくなった
……
から放置された
……
のかな?荷をまとめる前にどこかから応援が来てキャリッジとかで安全に逃げられたとか
……
?
(Ross Fons) それともトラブルに見舞われて使うことができなかったのか
……
とにかく何かしらの準備はされていたわけね
……
(Ross Fons) もしくは
……
(Ross Fons) (/em は振り返って空を見上げて次の場所に歩きだした。
【背を向けたとき、気配だけが追ってくるような気がした。】
【あなたが調べた痕跡から、装備は準備されたまま使われておらず、撤退を想定していた可能性が高いことがわかる。】
(Neige Orbis) (/em は広く見渡せる場所に立ち、村内をざっと眺めてみる
…
(Ross Fons) 時間が止まって、まだ、使われていない
……
とか、いや、まさかね
……
(Ross Fons) (/em は首をひねりひねり、Cの場所へ辿り着いた。
≪痕跡C: 救出作業の記録跡≫
【木板や布切れに、短い書き込みが残されている。】
【日付と簡単な状況報告だけが並び、文字は日を追うごとに荒れている。】
【行間には、"いくつかの名前"が、抜けなく並べられた形跡がある。】
【最後の行は、途中で書き止められている。】
(Ross Fons) 不穏になってきたわね
……
!?
(Ross Fons) (/em は割ったり破れないように気を付けながら木板と布切れを拾い上げている
【事故当時の救出の記録のようだ。内容からは、状況は芳しくないことが伺える。】
(Ross Fons) 何かの事故があって、日々状況は悪化
……
ってところだとして、
(Ross Fons) 行間のこれが村の方の名前だとしても、これだと行方不明か犠牲者か、それとも生存者かはわからないかな
……
?
(Ross Fons) ふーむ、
……
うーむ、怖くなってき
……
てない!だいじょうぶ!
(Ross Fons) (/em は自分に言い聞かせながら見つけた板と布切れを大事に抱えて、ネージュが歩いていった方向へ早歩き!
【文字を読み終えた途端、夜の音が一段、遠のいたように感じた。】
【あなたが調べた痕跡からは、事故後、"戻らなかった者の名をすべてまとめるための一覧"が用意されていたことがわかる。】
【その一覧が作られるまで、救出作業は複数日にわたって続けられ、日を追うごとに進行が困難になっていったようだ。】
≪痕跡1:指揮者の持ち物跡≫
【書類袋や携行用の鞄が残されている。】
【中身は抜き取られており、必要な物だけを持ち出した跡がある。】
【誰かが判断を担っていたことは明らかだ。】
【袋の内側に、折り畳まれて消えかけた文字の跡が残っている。まとめられた一覧のようにも見える。】
(Neige Orbis) ふむ、荷物かな。中身は
…
(Neige Orbis) (/em は残された袋を手に取り、よく調べてみる。書類袋らしきものは空だ。
(Neige Orbis)
……
?中身、入ってないな。誰かが抜き取ったのか
…
(Neige Orbis)
……
ん、
…
これ
…
何かのリストか?
(Neige Orbis) (/em はインク移りのような文字の跡に目を凝らし
…
あとで共有しよう、と折りたたんで懐にしまった。
【あなたが調べた痕跡からは、指揮を執っていた人物が、行方不明者を取りまとめる役割を担っており、何らかの記録を携えて移動していたことがわかる。】
【その記録には、名を扱うための下書きが含まれていた可能性が高い。】
(Neige Orbis)
…
あとは
…
あっちに何かあるな。
≪痕跡D: 洞窟の簡易見取り図≫
【洞窟内部を描いた手書きの図が残されている。】
【奥まった地点に印が付けられ、複数の書き込みが重ねられている。】
【何度も見返された跡があり、線は擦れている。】
【印のそばに、消しかけの短い文字が残っている。それは、位置と結びつけられた、人の名前のようにも見える。】
(Neige Orbis)
……
これ
…
地図か?洞窟
…
採掘現場かな
…
(Neige Orbis) (/em は地図に目を通し、書かれた文字を確認している。
(Neige Orbis)
……
うーん
…
人員配置のメモか
…
それとも
…
(Neige Orbis) (/em は考えるように首を傾げつつ、地図を折りたたんで懐に入れた。
【あなたが調べた痕跡から、落盤により複数名が同時に下敷きとなり、全員を一度に救出することは困難な状況だったことがわかる。】
(Neige Orbis)
…
あとは向こうか
…
。
…
ん
(Neige Orbis) そっち、どうだった?
(Ross Fons) 悲鳴を上げる状況にならなかったようで何より
……
(Ross Fons) ええと、まず、あっちに携行食とかがまとめられた荷物が、そのまま放置されていました。
(Ross Fons) それから
……
これ、何かの事故の救出記録と、関連した名簿だと思うんですけど
……
(Neige Orbis) そのまま
…
?
…
ふむ
(Ross Fons) (/em はNeige Orbisに持ってきた布切れなどを見せた
(Neige Orbis) (/em は記録に目を通し、目を瞬かせ
…
懐におさめた地図を取り出した。
(Ross Fons) なんですか?地図?
(Neige Orbis)
…
この記録の名前って
…
(Ross Fons) (/em は伸び上がってNeige Orbisの手元を覗き込んでいる
(Neige Orbis) (/em は地図を広げ、書かれている名前と名簿を照らし合わせた。
【双方に書かれている名前は、すべてが一致するようだ。】
(Ross Fons) あ、もしかして採掘現場の地図かな
……
あぁ、そこで何か事故が起こって、犠牲者の位置かな
……
(Neige Orbis)
…
そう考えられるな。あとは
…
こっちはよくわからなかったけど
(Neige Orbis) (/em は書類袋を取り出し、インク移りのような箇所を示してみせた。
(Neige Orbis) 肝心の中身はなかったけど
…
何かのリストが入ってたように見える
(Ross Fons) ぬぅ?
……
うーん、これ、書類袋かぁ、たぶんきちんとした紙が入ってたのかな
……
?
(Neige Orbis)
…
かも。
(Ross Fons) 確かに、いや、うん?でもこの名簿は木の板だのなんだの、その辺の余り素材で無理矢理作ったっぽいですよね
……
(Neige Orbis) 見たところ
…
そっちは事故当時の記録にも見えるし、紙じゃ都合が悪かった、とか。
(Neige Orbis) ほら、慌ててると破れたりするし。
(Ross Fons) あぁ
……
なるほど、確かに
……
(Ross Fons) (/em は覚えがある顔をしている。
(Ross Fons) ふむ、現状では「事故が起こって、おそらく犠牲者が出た」って感じですかね
……
残りの建物を調べてみましょうか。
(Neige Orbis) ん、そだね。
Ross FonsZeromusは辺りを見わたした。
(Neige Orbis) あとはあっちの一軒かな
Neige Orbisは指さした。
(Ross Fons) ですね!行きましょう!
Ross FonsZeromusは考えた。
≪痕跡2:夜間待機・仮眠の跡≫
【毛布や簡易寝具が、無造作にまとめられている。】
【長時間使われた形跡があり、人数ははっきりしない。】
【ここで夜を越えようとしていたことだけが伝わってくる。】
【毛布の端に、握りしめられた跡のような皺が残っている。】
(Ross Fons) 救出作業の仮眠の跡か
……
それとも
……
(Neige Orbis)
……
こっちもそのまま、か
(Ross Fons) なんだろ、さっきの荷物といい、ほんとに時間が止まってるみたい
……
(Neige Orbis)
…
うん。なんというか
…
進めてないような
(Ross Fons) 進めてない
(Ross Fons) (/em はNeige Orbisの言葉を繰り返した。
(Neige Orbis) まだ、はっきりとしたことは言えないけどね
(Ross Fons) そのう、進めてない、という印象は、あのう、
(Ross Fons) 進みたいけど進めていない、なのか、意図的に時間を進めさせていない、なのか
……
(Neige Orbis) うーん
…
そこまでは、なんとも
(Ross Fons) ですよねぇ
【一歩離れた瞬間、誰もいないはずの温もりが遅れて消えていった。】
【あなたが調べた痕跡から、事故後、夜間の捜索や待機のために、複数人がこの周辺で仮眠を取っていたことがわかる。】
≪痕跡B: 崩落対応の資材置き場≫
【支え棒や丸太が、使われた形跡のまま積まれている。】
【一部は折れ、表面には石粉が付着している。】
【急いで組まれた補強だったことが、一目で分かる状態だ。】
(Ross Fons) 鉱山で使ってた資材
……
ですよね、これは。
(Neige Orbis)
…
かな。でも壊れてる
(Ross Fons) 事故で壊れたものをここまで引き上げてきたのか
……
(Ross Fons)
……
あ。嫌な想像しちゃった。なしなし。
(Ross Fons) (/em は自分のほっぺを両方ぺちぺち叩いている。
(Neige Orbis) (/em は付着した石粉を軽く指で払った。
(Neige Orbis) 急ごしらえって感じもするな、これ
Ross FonsZeromusはひざまずいた。
(Ross Fons)
……
坑道の補強を急ごしらえにしちゃって、強度が足りなくて、崩落
……
とか?
(Neige Orbis) かな。それか
…
事故の時に慌てて組んだけど、持たなかった、とか
(Ross Fons) 崩落が一度ではなかったかも、ってことですかねぇ
……
(Ross Fons) こうなると洞窟の方も見に行きたいところだけど
……
ちょーっとさすがにそれは危険かしらねぇ
(Ross Fons) (/em は一人でぶつぶつ。
(Neige Orbis) 連鎖的に崩れたりするしなぁ
…
規模まではハッキリしないけど
Neige Orbisは考えた。
【視線を離すと、空気が張りつめ、動かない重さが残った。】
【あなたが調べた痕跡からは、洞窟内で落盤事故が発生し、応急的な補強や対応が試みられていたことがわかる。】
【痕跡を並べると、いくつかの事実は浮かび上がる。】
【事故が起き、救出が続き、名は集められていた。】
【その先に必要だった行為だけが、まだ行われていない。】
(Neige Orbis)
…
どう思う?この村、というか
…
この夜、というべきか。
(Ross Fons)
……
とにかく事故が起こって、対応して、救出しようという試みはあった
……
(Ross Fons) もしかして、まだ終わってない
……
のかしらね、これ
(Neige Orbis)
……
終わってない。
…
か
(Ross Fons) (/em は空を見上げた。
(Ross Fons) 荒唐無稽な話ですけれど。そもそもこの夜の村が荒唐無稽なわけですし。
(Neige Orbis)
…
いいや、有り得ない話じゃないと思う。
(Ross Fons) ですよね
……
撤退の荷物はそのまま。名簿の書き留めも途中。
(Neige Orbis)
……
人の願いは、時には世界を作り変えるから。
Ross FonsZeromusは熟考した。
(Neige Orbis)
…
ただ
…
それが誰の願いなのか
(Ross Fons) この、採掘現場の洞窟って、どこにあるのかしら。
(Neige Orbis) さっき、奥に道を見つけたんだけど
…
あるとしたら、向こうじゃないかな
Neige Orbisは指さした。
(Ross Fons) ふむ。
(Neige Orbis) 見に行ってみる?
(Ross Fons) 私は行きます。ネージュさんはどうされます?
(Ross Fons) 間違いなく崩落事故現場ですし、危ない場所でしょうけれど。
(Neige Orbis) ここまできたら、キミが納得するまで付き合うよ。
(Ross Fons) あら。頼もしい。
(Neige Orbis) あはは。女の子の前で、じゃあオレ危ないから帰るね、なんて言えないでしょ。
(Ross Fons) ふふふ、ならお互い、頭上に気を付けて、安全第一で参りましょう。命あってのモノドモと言いますしね。
(Neige Orbis) ん、お互いにね。
【村に残された痕跡をひと通り見終えた頃、夜の重さが、はっきりと形を持ち始める。】
【村の奥、ぽつりと離れた一軒の家。】
【そして、さらにその先
――
闇を抱え込む洞窟。】
【どちらも、この夜と無関係ではなさそうだ。】
【夜はまだ、決められていない。】
(Ross Fons) この状況、自然現象なのか、誰かの願いなのやら
……
(Neige Orbis)
…
魔法とか、呪いとか、祈りとか
…
色々、考えられるけど
【森の奥、夜のままの道を進む。足音は響くが、時間の手応えが伴わない。】
【火を灯しても、燃えているのか、留まっているのか、判然としない。】
【夜は続いているようにも、止まっているようにも見える。】
(Ross Fons) 少なくとも、人の願いなら、優しいものであってほしいなぁ
……
(Neige Orbis)
……
うん。それは
…
オレもそう思う。
(Ross Fons)
……
あっちにも建物がありますね
……
(Neige Orbis)
…
うん、洞窟はもう少し先か。
Ross FonsZeromusは辺りを見わたした。
(Neige Orbis) どっちも調べる意味はありそうだけど
…
どっちから見る?
(Ross Fons) あの建物も村関係なのかしら。だとしたら先に建物から調べてみましょうか?
(Neige Orbis) ん、了解。じゃあ向こうから行こう
(Ross Fons) あの書類袋の中身が見つかるかも。ええ、いきましょう
(Ross Fons) 洞窟はあっちと、よしよし。
【夜の重さが、はっきりとこの場所に集まっている。】
【調査で見た痕跡が、空気として思い出されるだろう。】
(Ross Fons)
……
結構歩いてきたけど、本当に変な感じですね
……
夜が進まないというか、なんというか
……
(Neige Orbis)
……
うん。それに
…
少しずつ、重さを増しているようにも感じる。
(Ross Fons)
……
こわくなーい!よし!調べてみましょう!誰かいるかもしれません!
(Neige Orbis) ん、そうだね。
Neige OrbisはRoss FonsZeromusに微笑んでみせた。
(Ross Fons) ごめんくださーーーい!
(Neige Orbis) お邪魔します、っと
…
(Ross Fons) (/em はハキハキと大声
【室内は、使われる準備だけが整えられたまま、静まり返っている。】
【白紙の名簿や道具は残されているが、誰かが触れた気配は途中で途切れている。】
【この場所には、終わらせきれなかった夜の名残だけが残っている。】
【ここは、名を"残す"ための場所だったのかもしれない。】
(Neige Orbis) (/em は机の上に視線を落とした。
(Neige Orbis)
……
書類、
…
もしかして、これかな
…
(Ross Fons) ありました!?
(Neige Orbis) (/em は白紙の名簿を手に取り、Ross FonsZeromusに見せた。
(Ross Fons) まっしろ!!
(Neige Orbis) 何も書いていないけど
…
(Ross Fons) うーむ、でも確かに、板や布よりは書類袋に入りそうなものですね
(Neige Orbis) 書かなかったのか、書けなかったのか
(Ross Fons) 白紙、白紙か
……
村より洞窟に近いし、ここで被害の確認でもしてたのか
……
(Ross Fons) それとも
……
これから書くのか、ですかね
……
(Neige Orbis)
…
だね。
(Ross Fons) さっきの名簿と洞窟の地図の名前、全部一致していました
……
よね?
(Neige Orbis) うん。
…
そう考えると、事故に遭った人のリスト
…
なのかな、あれは
(Ross Fons) あのですね、ネージュさん、さっき、「まだ終わってない」って私言ったじゃないですか
(Neige Orbis) うん
(Ross Fons) 荒唐無稽ですけれど、まあそうだとして、
(Ross Fons) 何が終わってないのか、まだいまいち自分で把握しきれていないのですよね
(Neige Orbis) ふむ。
(Ross Fons) 救出が終わっていないのか、撤退が終わっていないのか、埋葬が終わっていないのか
……
Ross FonsZeromusは考えた。
(Neige Orbis)
……
うん。確かに。
(Ross Fons) 白紙の名簿に犠牲者の名前を書き終わっていないのか。生存者の名前を書き終わっていないのか。
(Neige Orbis)
……
。
(Neige Orbis) (/em はふむ、と考えるように目を伏せた。
(Ross Fons) 地図に書かれているのが被害者の名前だとして、それを名簿に清書すれば解決!時間が進み始めます!みたいな単純な話でもなさそうな気はするんですよねぇ。
(Ross Fons) まだ終わっていないとして
……
人の痕跡はあるけれど、生存者の姿もなければ、落盤事故から引っ張り出せたならそのご遺体もない
……
(Ross Fons) (/em は「ここ、いったいどこで止まってるんだ?」と一人ごちた。
(Neige Orbis)
…
うん。それは、気になるところだ。村を見た感じじゃあ、墓も見当たらなかった
(Neige Orbis)
…
結局、この夜は
…
何に、何を思って、留まっているのか。
(Ross Fons)
……
洞窟に向かいましょうか。何か情報が残ってるかも。
(Neige Orbis) ん、わかった。
Neige OrbisはRoss FonsZeromusにうなずいてみせた。
【暗闇は沈黙している。岩は崩落し、世界が分断されている。】
【呼びかけを拒んでいるようにも、待っているようにも見える。】
【この奥にあるものは、まだ、誰の手も届いていない。】
【この場所には、"呼ばれるはずだった名"だけが、静かに残されている。】
(Neige Orbis)
……
。完全に、塞がってる。これじゃ、中には
…
Neige Orbisは考えた。
(Ross Fons) ネージュさん。
(Ross Fons) ちょっと耳をふさいでおいてもらえますかね。
(Neige Orbis)
…
ん?
(Neige Orbis)
…
ん、ああ
(Neige Orbis) (/em は耳を両手でぺそ
…
と折って塞いだ。
(Ross Fons) (カワイイ
(Ross Fons) (/em は深呼吸してから、大きく息を吸った。
(Neige Orbis) (ペソ
…
(Ross Fons) 誰かいませんかーーーーーーーー!!!!!!!!
(Ross Fons) (/em は腹の底から大声を出して洞窟の向こうに呼び掛け、おっかなびっくり入り口に近寄って耳をそばだてる
【暗闇は、沈黙している。風を切る大声に、僅かに空気だけが揺れた。】
(Ross Fons) ああ、そう、うん、わかってた、けど、うーん、そうか、癒し手が術でどうたらってのじゃないわよね、ええ、わかってますけど
(Ross Fons) ネージュさん、ご協力ありがとうございました。
(Neige Orbis) (/em は耳から手を離した。
(Neige Orbis)
…
反応は
…
なさそう?
(Ross Fons) 皆無ですね!!
(Neige Orbis) んん
…
そっか。
Neige Orbisは考えた。
(Neige Orbis) ふむ
…
改めて、整理してみると
……
【ここまで調べた痕跡を並べると、この村で起きたことは、事故と、その後の夜に集約される。】
【事故で洞窟奥に人が取り残され、助けようとしたが、助けきれなかった。】
【朝になれば撤退する必要があったが、その前に、戻らなかった者の名を確定させる必要があった。】
【そのための準備は整えられ、戻らなかった者の名は、すでに揃っている。】
【そして、その夜は
――
そこで止まっているようだ。】
(Ross Fons) あの奥に、まだ残っているのよね。あの地図にメモされた人達が。
(Neige Orbis)
…
うん。そしてこの様子じゃあ
…
(Ross Fons) 返事はなかったけど、ほら、この夜みたいに時間が止まってるだけで、まだ生きてるかもしれない。
(Neige Orbis)
……
うん。そうかもしれない
(Ross Fons) (/em ha
(Neige Orbis) これじゃあ、進めない。
…
でも、生死すらも確認できない。
(Ross Fons) (/em は崩落した洞窟の入り口を塞いでいる岩に爪を立て、しばらく奮闘してから杖で岩をぶん殴った。
(Ross Fons)
……
クソ喰らえだわ。まったく。
【岩は冷たく硬い音を立て、杖を弾く。砕けた小石だけが、ころころと転がり落ちた。】
(Neige Orbis)
………
。
(Ross Fons) こんな行き掛かりの小娘が腹立ってるんだもの。村の方々は察するに余りある。
(Neige Orbis) (/em は少し眉を顰めながら、洞窟の奥を見据えるように視線を上げた。
(Neige Orbis)
……
うん。
(Neige Orbis) 誰の悪意でもない。間違いもなかったはずだ。
…
ただ、世界のほうが、不条理だった
(Ross Fons) 不条理で、理不尽だわ
……
何のための癒しの術なんだか
……
まったく
……
(Ross Fons) とにかく、なるほど、ええ、わかりました
(Ross Fons) 夜はここで止まってるのね。向こうに残された人達を記録して、撤退する途中
……
(Neige Orbis)
……
そうみたいだ。
…
確定できないまま、終わらせられないままの夜。
(Neige Orbis)
……
してやれることは、ないわけじゃないと思う。
…
ただ
…
夜が言葉を返さない以上、こっちが何かするのは自己満足とも言えるかもしれない
(Ross Fons) もしくは、意図的に確定させないまま、終わらせずにいる夜
……
(Neige Orbis)
……
うん、そういう思いも
…
あるのかもしれないな
(Neige Orbis) 進まなければ、認めないままでいられるから
(Ross Fons)
……
ネージュさんはどう思います?
(Neige Orbis)
…
オレ?
(Ross Fons) ええ。何かすること、自己満足だと思います?
(Neige Orbis)
………
。どうかな。
…
どのみちさ、
(Neige Orbis) 死者はもう、選ばない存在だから。
(Neige Orbis) 何かを選択するのは、生者の領分だ。
…
それが自己満足であれなんであれ。
(Ross Fons) なら
……
この夜をもし望んでいる誰かがいるのなら、それは
……
(Ross Fons) はぁーーーー、私達が何かをできるとして、自己満足を満たすとして、たかが行き掛かりの余所者がやっていいことなのかどうか
……
(Neige Orbis)
……
。そうだな、正直なところ
…
キミが何かを背負う必要があるとは、思わない。
(Neige Orbis) 触れない、って選択肢もあると思う。
(Neige Orbis)
……
ただ
…
まあ。選ぶ人は、きっともう、どこにもいない。
(Ross Fons) 選ぶ人はここにいるのよ。もう。私とネージュさんが。
(Ross Fons) 村の人達は、取り残された人を知ってた。あの白紙の名簿にそれを書いて、きっと撤退しようとしていたところだったんでしょう?
(Neige Orbis)
…
うん、そうだろうな。
(Ross Fons) 名前を確定させて書き残せば、記憶だけじゃなく、記録として残すことができる。
(Neige Orbis) うん。
(Ross Fons) 棺の中身は空っぽでも、お墓を作って弔うこともできるし、ご遺族も、それを受け入れるかどうかは別として、事実に向き合うことはできるでしょう。
(Neige Orbis)
…
そうだね。
…
助けられなかったことを認めることにはなるけれど
…
(Neige Orbis) 進むための足場をかけてやることはできる。
(Ross Fons)
……
撤退を決めておいて、その準備をしておいて、助けられなかった事実に背を向けることは
……
(Ross Fons) 少なくとも私が指揮者なら許さないわ。
(Neige Orbis)
……
。そっか。
(Ross Fons) さて、でもそれは私の都合。私の考え方。あの村の指揮者はどうだったかわからないし
――
(Ross Fons) ネージュさんもどうだかわからないわね。
(Neige Orbis)
…
うん。当時の指揮者が、何を思ってそうしたのかは
…
今となっては、想像することしかできないけど。
(Neige Orbis) ただ
…
そうすると決めたんじゃなくて、決められなかった結果が、この夜なんだと、オレは思う
(Neige Orbis) これはきっと、選べなかった夜そのものなんだろう。生者も、死者も、その行先を
(Ross Fons)
……
私は幻術士よ。負傷者は癒して助ける。それが行きずりの誰かであっても。
(Ross Fons) そして、助けられないのなら、その死を看取って適切に対処をする。ご遺族に引き渡すなり、呪術師に弔いを頼んだりね。
Neige OrbisはRoss FonsZeromusに微笑んでみせた。
(Ross Fons) この私と縁が出来てしまったのなら、私は幻術士としての責務を果たしたい。
(Ross Fons) ここはもう癒せない。
……
なら、次に引き渡さないといけない。
(Neige Orbis)
……
偶然会ったのが、キミでよかったと思うよ。
(Ross Fons) へ?
(Neige Orbis) それじゃ、進むための足場、かけてやるか?
(Ross Fons)
……
ちなみに、私はそうしたいけど、ネージュさんは?
(Ross Fons) 意見が対立するならステゴロも辞さないけど、私は。
(Neige Orbis) 物騒なこと言わないでよ
…
対立する気もないしさ
…
(Neige Orbis)
…
まあ、オレはさ
(Ross Fons) ん。
(Neige Orbis) 職業柄
……
一緒に歩くことは得意でも、決めてやることはあまり向いてない
(Ross Fons)
……
なるほど。
(Neige Orbis) キミがそう決めたなら、オレはその後押しをするよ
(Ross Fons) ふふ、幻術士とは真逆ね。こっちは何かを決めてばっかりだから。
(Ross Fons) じゃあ、足場をかけましょうか。一緒に。
(Neige Orbis) ん。名前を記すなら、名簿のところに戻ろうか
(Ross Fons) ええ、そうしましょう。
Ross FonsZeromusは黙祷を捧げた。
(Neige Orbis) 癒すための職務なのは、似ていると思うんだけどね
(Ross Fons)
……
そうね、たぶん、似ているんでしょうね。
(Neige Orbis) 対象というか、時間軸というか。役割が少し違う
【机の上には、紙と筆がある。ここに、戻らなかった者の名を記すことができる。】
(Ross Fons) (/em は深呼吸している。
(Ross Fons)
……
私達幻術士は、もちろん人に寄り添うけれど、結局根本は肉体を治すか治せないかでしかない
……
そう感じることがよくあるわ。
(Neige Orbis)
…
うん。
(Ross Fons) 役割が違うってのは、たぶんその辺りでしょうね。
(Neige Orbis) キミたちは、きっとそこで終わらないように繋いでいくものだろう。
Ross FonsZeromusは熟考した。
(Ross Fons) そちらは?
(Neige Orbis) 終わってしまったものに、寄り添う役目。
(Ross Fons)
……
そっか。
(Ross Fons) それは確かに、役割が全然違うわねぇ。
(Neige Orbis) うん。だから、勝手に選べない。
(Ross Fons) だったら、ちょっと心苦しいわ。
(Neige Orbis)
…
そう?
(Ross Fons) なんだか次のお仕事を押し付けるみたいな感じ。
(Neige Orbis) あはは、押し付けるなんて。
(Neige Orbis) 必要なことを、必要な場所へ移すんだ。きっとね。
(Ross Fons)
……
そうね。
(Neige Orbis) そうしないと、回らないものもあるからさ。
(Ross Fons) ええ。
……
ええ、そうよ。時間は進むものだし
……
(Ross Fons) 夜は、終わるものだわ。
(Neige Orbis)
……
うん。
(Ross Fons) (/em は筆を手に取った。
(Ross Fons) き、緊張する
……
書き損じないようにしないと
……
(Ross Fons) ええと、名簿名簿
……
(Neige Orbis) 大丈夫、ゆっくりでいいよ。
(Ross Fons) (/em は要領悪く準備をしつつ、深呼吸を挟んで、白紙の名簿に丁寧に名前を書いていった。
【あなた方は、名簿に残されていた全ての名を、ひとつずつ、記していく。】
【名は、確かにそこに記された。】
【だが、夜は動かない。】
【帳簿は閉じられている。判断は下されたはずだ。】
【書かれた名は、留め置かれたまま
――
次を待っている。】
(Ross Fons)
……
あれえ!?
(Neige Orbis)
……
。
(Neige Orbis) (/em は窓の外の動かない空へと、視線を向けた。
(Ross Fons)
……
良い雰囲気じゃなかったかしら。演劇なら幕が下りるみたいな。ちょっと!
(Ross Fons)
……
書類袋に入れて、もとの場所に返さなきゃかしら。
(Neige Orbis)
……
あはは。多分
…
まだ受け止めきれてない、って感じかな
(Neige Orbis)
…
でも
……
目を逸らし続けるわけにも、いかないだろう。
(Ross Fons) (/em は、はぁーと溜め息をついてから自分の手帳を取り出した。
(Ross Fons) (/em は名簿の名前を手早く自分の手帳に書き付けていく。
(Neige Orbis)
…
夜が自分で終わらせられなくなってるんだ。
(Ross Fons) 手間の掛かる子ねぇ!
(Neige Orbis) あはは、まったくだ。
…
しょうがない。名簿、貸してくれる?
(Ross Fons) (/em は名前を写し終えると、名簿をNeige Orbisに手渡した。
Ross FonsZeromusはNeige Orbisに何かをわたした。
(Neige Orbis)
…
ありがと。
(Ross Fons) そもそも自分で終わらせられないから、こんな事態になってるのかもしれないわねぇ
(Neige Orbis)
…
ひとりで進めないなら、一緒に進んでやる。
……
さ、もう夜を終わらせよう。
(Neige Orbis) (/em は名簿に目を通すと、そっと机に置いた。
【Neige Orbisは、記された名から、静かに一歩下がる。】
【空気の重なり方が、ひとつ、変わる。】
【彼は、そこに立ち、ほんの一瞬、視線を巡らせた。】
【そして、星の環が描かれる位置へ、自然な動きで手を上げる。】
【夜と現実のあいだに立ち、言葉を選ぶように、静かに息を整えた。】
(Neige Orbis) "我らは夜を拒まず、"
(Neige Orbis) "されど、終わりなき夜を是とせず。"
(Neige Orbis) "星の環よ、閉じよ。"
(Neige Orbis) "線を引き、巡りを定め、"
(Neige Orbis) "未完了のまま在り続けるものに、終わりを許せ。"
(Neige Orbis) "名は記され、果たすべき行為は果たされた。"
(Neige Orbis) "我は巡礼の徒。"
(Neige Orbis) "判断を失った夜を預かり、"
(Neige Orbis) "──この夜を、終定とする。"
【星環が、静かに展開される。】
【この場所に重なっていた"判断されなかった夜"が、ひとつの線として、切り分けられていく。】
【異界と現世の接続が、上書きされるように、閉じていく──】
【記された名は、空へと送り届けられるように、静かに昇ってゆく。】
【境界は引かれ、夜はほどけ始めている──】
【この場にいるあなた方は、その変化を、確かに感じ取っているだろう。】
(Ross Fons) (/em は窓の外を見やって目を細めた。
(Neige Orbis)
………
。届いた、かな
(Ross Fons) 届いたんだわ。きっと。
(Neige Orbis)
……
うん。
(Ross Fons) こんなに美しく、優しく寄り添うのね。
(Neige Orbis)
…
事実を受け止めることは、痛いだろうけど
…
暗闇に留まり続けるのも、苦しいだろうから
(Ross Fons) どっちにしろ辛いこと、か
……
うん、でも、うーん、薄情かもしれないけど
(Ross Fons)
……
当たり前のことよね。
(Neige Orbis)
……
うん。夜があれば、朝がきて、また夜が来る。いつだって、繰り返しだ
(Neige Orbis) 行先を選ぶのは、いつだって自分自身だけどさ。
…
誰かが一緒にいてやれば、踏み出す勇気も出るかもしれないし。
…
一緒に休めば、寂しくないかもしれないしね。
(Ross Fons) ふふ。
……
ネージュさん、すごいお仕事をしているのねぇ。
(Neige Orbis) あはは、必要なことだよ。キミだって、そうでしょ
(Ross Fons) 私は今言った通り、薄情だもの。
(Neige Orbis) 薄情かな。
…
オレはそうは思わないけど
(Ross Fons) そう?
(Neige Orbis) だってさ、置き去りにしなかったでしょ。
(Ross Fons) 置き去り。
(Ross Fons)
……
この夜のこと?
(Neige Orbis) そ。
(Ross Fons) えぇ
……
?
(Neige Orbis) 関係ない村のことだし、そのまま帰っても、誰も文句は言わない。
(Ross Fons) えぇ
……
逆でしょ
……
(Neige Orbis)
…
そう?
(Ross Fons) 関係ない村のことに頭つっこんで、かき回して、朝よー!!ってたたき起こそうとしたんだもの。
(Ross Fons) 優しく導いた、あなたと違ってね?
Ross FonsZeromusはNeige Orbisに微笑んでみせた。
(Neige Orbis)
…
でもそれは、進む必要があると思ったから、そうしたんじゃない?
(Ross Fons) ああ、違う違う。そんな、こう
……
高尚なもんじゃないのよ。
(Neige Orbis)
……
うん?
(Ross Fons) 私と縁ができたのなら、私は治したいし、治せないのなら、その死を誰かに引き継ぐだけ。
(Ross Fons) ただの私のワガママよ。
(Neige Orbis) そんなものでしょ、内心なんて。言い方の違いでさ、結局はみんな、自分がそうしたいから、そうする。
(Ross Fons) (/em は名簿の名前をメモした手帳をゆらゆら振ってみせてから懐に仕舞った。
(Ross Fons) ふふ。あなたもそうしたのでしょうけれど
……
(Ross Fons)
……
よくあるの?こういうこと。
(Neige Orbis)
……
結果として、夜は拒まなかった。オレはキミの選択の後押しをしただけで、進む方向を示したのは、キミだよ。
Neige OrbisはRoss FonsZeromusに考えてみせた。
(Neige Orbis) まあ、そうだね。進めなくなってしまった人って、ほら。沢山いるから。夜ごとっていうのは、ちょっと珍しいけどね。
(Ross Fons) ん。そっか。なるほどね。
(Ross Fons) じゃあ、あなたは次の巡礼に?
(Neige Orbis) うん、また次の場所に。
(Neige Orbis) 色々ふらふらしてるから、もしかしたらまた会えるかもな。
(Ross Fons) ふふ、そうね。今回みたいな、ややこしいところじゃないといいけれど。
(Ross Fons) ま、ややこしいところでも、あなただと頼もしいから大丈夫そうかしらね?
(Neige Orbis) あはは、もう少しわかりやすいと、俺も助かるな。
(Neige Orbis) どうかな。代わりに決めてやれるほど、オレも優しくないし。
(Ross Fons)
……
まあ、うん。あなたが決めて、その人の背中を蹴っ飛ばすみたいなことはしなさそうよねぇ
……
(Ross Fons) ふふ、縁があって私がやる気なら、その時はまたこの私が決めてやろうじゃないの。
(Neige Orbis) 人によっては薄情とか、優柔不断に思われるかもなぁ。
(Neige Orbis) それは頼もしいや。次があったら、任せるよ。
(Ross Fons) うふふん!任せなさい任せなさい!このスー
(Ross Fons) (/em は自分の口を押さえた。
(Neige Orbis) す?
(Ross Fons) むう。
(Ross Fons) なんでもない。それは次回にしましょう。
(Neige Orbis) そう?
(Ross Fons) そう。
(Ross Fons) 私だって分別はつくのよ。うん。
(Neige Orbis)
…
んじゃ、まあ
…
帰ろうか。キミも調査の報告もしないとでしょ?
(Ross Fons)
…………………………
そうだった。
(Ross Fons) ネージュさんのおなまえ、調査報告書に書いていいわよね?
(Neige Orbis) ん、必要なら、勿論。
(Ross Fons) ありがと。イケメンの巡礼師だってきちんと強調しておくから。そこは心配しないで。
(Neige Orbis) あはは、助かるー。
【──空の色が、ゆっくりと変わり始める。】
【夜は押し返されず、張りつめていたものが、役目を終えてほどけていくように。】
【星は、ひとつずつ位置を取り戻し。月は、沈むべき軌道へ戻っていく。】
【この場所に重なっていた夜は、確かに、終わった。】
【朝は、確定された境界の、その向こうから始まる。】
―
夜は確定し、朝は始まった。
―
Ending A:終定
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