ひよこ
2026-04-11 20:10:48
2596文字
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【没ネタ】特別(サンルシ記憶喪失ネタ)

・ホンがフェルを復活させようとして自分の力を全部使った余波で記憶喪失になった
・天司についての描写に一部想像(捏造)あり
・解釈違いを起こしたので没にしました

「サンダルフォン、おはよう」

暗闇の中、微かに声が聞こえてきた。とても穏やかな声だ。段々とその声が鮮明になってくる。

「今日はとても良い天気なんだ。この空の中を君と飛べたらとても気持ちが良いだろうね」

ぼんやりとした意識の中で考える。この声の主は言う君とは俺のことだろうか?

「また君と話がしたいんだ。どうか起きてくれないか?」

チュッという音と共に何か暖かいものが唇に触れた感覚があった。今のは一体何だろうか。確かめるために目を開けると蒼く透き通った空が見えた。いや、これは……

「瞳……か?」
「サンダルフォン!起きてくれたか!」

蒼が急速に遠ざかり、その全貌を把握する。……なるほど、俺の前にいたのは天司長様だったのか。危うく美の化身と見間違うところだった。天司長様はこぼれんばかりの笑顔でこちらを見てくる。美し過ぎるそのお姿に全身が総毛立ってしまった。艇の窓から差し込む光が彼を包み込み神々しい雰囲気を作り出している。この御方の事をもっと知りたいという欲が湧いたため問うことにした。

「天司長様。貴方のお名前を教えて頂けますか?」
「えっ?」

それを聞いた天司長様は眉尻を下げる。何かに困惑しているようだった。何か粗相をしてしまっただろうか?

「サンダルフォン、すまないが君のコアに触れても良いだろうか?」
「コアですか?」
「ああ。君の体調を確認したい」

そう言って天司長様は俺の背に触れてくる。少しは落ち着いたと思った肌がまた粟立ってしまった。


俺の背に触れながら天司長様は自身の名がルシフェルであると伝えてきた。ルシフェル様……。何て素敵な響きなんだろう。ルシフェル様、ルシフェル様と頭の中で何度も反芻している内に、用が済んだらしい。ルシフェル様に向けていた背を再びベッドの縁に預けて、彼の言葉が紡がれるのを待った。

「数日前に確認した時と同様、コアに表立った異常は見られなかった。君が力を放出した際の余波が記憶機能に影響したのだろう」
「力の放出?」

何の話だろう。俺の役割に関係ある事だろうか。そういえば俺の役割は何だ。天司は普通誕生したその時から役割を把握しているものだ。俺にも天司長であるルシフェル様をサポートするための役割があるはずなのに思い出せない。胸がざわついた。

「ルシフェル様!」
「どうした?」
「俺の……俺の役割は何でしょうか?」

その問いを聞いてルシフェル様は目を見開く。その後一旦は俯いていたものの再び顔を上げた際には一点の曇りもなかった。

「サンダルフォン。もう、役割は気にしなくて良いんだ」
「え?」
「私も天司長という役割を放棄した。天司はもう役割に縛られなくて良いんだ。自由に生きて良いんだよ」

ルシフェル様はそう言って俺の両肩に手を置かれた。真剣な表情のルシフェル様に呆気を取られてしまう。役割を放棄?星晶獣にとって役割は存在意義と同義である。それを放棄したとは何事があったのだろう。しかも俺はただ自分の役割を聞いただけなのに明らかにはぐらかされた。そこで一つの可能性に辿り着く。俺は役割に関して何か重大なミスを犯したのではないか?記憶がないのもそのミスに由来するものに違いない。それで天司というシステムが不要と判断されたとか……

「サンダルフォン?大丈夫か?」
「申し訳ございません。少し考え事を……

不安そうにこちらを見つめるルシフェル様。俺よりも何倍も強いお力を有しているはずなのに、触れただけで壊れてしまいそうな儚げな印象を受けた。笑顔でいて欲しいのに過去の俺が不甲斐無かったせいでこの御方の気を病ませてしまっている。いたたまれなくなり、声を掛けた。

「ルシフェル様、昔の俺が貴方に多大なる迷惑をかけてしまったようで申し訳ありませんでした」
「サンダルフォン?」
「これからは貴方にご迷惑をお掛けしないよう気を付けます。だから、お側にいる事をお許し頂けますでしょうか?」
……ああ。もちろんだ。」

許すも何も君に迷惑をかけられた事など無いけれども、と言葉を続けられるのだった。


皆に挨拶をしようとの言葉を受けて室外に出る。外には沢山の空の民がいて、皆がこちらに注目している。そう言えばここがどこなのか聞くのを忘れていた。ルシフェル様は金髪の少女と話をしだした。今気付いたが彼女は特異点ではないか?蒼の少女や赤き竜もいる。重要人物として天司の初期知識に植え付けられている三名が一堂に揃っているとは……。彼らが揃っている理由も俺の役割に関係があったらどうしようと疑心暗鬼になった。

ルシフェル様と話し終えたのか、特異点がこちらに向かってきた。

「サンダルフォン!記憶喪失になっちゃったの?」
「はい。どうやらそうらしいです」
……

特異点が不気味そうにこちらを見る。何か返答がおかしかっただろうか。特異点の背中にいた赤き竜が俺の目の前に飛んでくる。

「うっひゃー。マジで記憶無くしちまったんだな。お前が俺達に敬語使うなんて少し気味悪りぃな」
「ビ、ビィさん!そういう事は思ってても言っちゃダメですよ!」

蒼の少女、それはフォローのつもりなのだろうか……。まぁ良い。過去の俺は態度に問題があったようだ。今からでも印象を回復できるだろうか。そう思い特異点に声を掛けた。

「ルシフェル様との会話を聞いていました。俺は元々ここの団に所属していたみたいですね。過去の俺は態度が悪かったようで本当に申し訳なかったです。今までお世話になりました」
「「え?」」

〜〜〜

書きたかったネタ
ルシフェル様はサンダルフォンを特別に思っていてるのだが、そのせいで普段は完璧なのにサンダルフォンに対してのみ上手く立ち回れなかった(中庭時代)。今回もサンダルフォンの過去の記憶を思い出させるという辛い思いをさせたくないという思いから、役割とか災厄について触れる事をしなかった。それが裏目に出て、災厄の被害者(ど空とかthe maydaysに出てきたハーヴィンの男性)から間接的に自分が災厄を起こした事を思い出し、取り乱すサンダルフォン。それを追うルシフェル様。なんやかんやあって大大円。

と思ってたんだけど、開示タイミングを遅らせるフェルに解釈違いを起こしたためボツにしました。