ortensia
2026-04-11 02:40:10
504文字
Public その他
 

虎宿(?)


 いつからか、両面宿儺の器は可笑しな感情を向けるようになった。
「お前のことすっげぇ嫌いだけど、その程度には好きだよ。」
 意味が分からない。
 だがそれもまた呪い。どうせ全ての感情は呪いになり得るのだ。
「はぁ。いつから?」
 両面宿儺は戯れに器に尋ねた。溜め息の出るような理解し難い感情だが、全て呪いだと思えば大したものではない。呪いならばごく身近なものだ。だから暇潰しにそうした問い掛けも生まれた。
「んー、初めて会った時。」
「はあ?するとここか、生得領域か。小僧は自分のツラが好みか。」
 疑問と罵倒、そしてケヒと嘲る声がおまけのように響く。
「いや違くて。」
 器は自分の手を上げて見せた。
「指。」
 そしてその指を悪戯にぱらぱらと動かす。
「は。」
「最初に、先ずお前の指に恋をした。」
 思わず顔を思い切り顰める。
「正気か。」
「まー皺々の指の木乃伊みたいなん食ったわけだし。」
 歯を見せる笑顔を作る器は、いったいどちらの意味で言っているというのか。
「食べちゃいたい程、ってやつ?」
 それは例えであり実行することではない筈。
 はて、呪いとは、正気の沙汰であったか。それとも。


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