その光景を、小さな犬は黒い鳥に抱かれて飛んでいた時に目にした。同じように青空を、力強く飛んでいた他の鳥が、白い翼の鷹が、突然空に背を向けて、物凄い速さで落っこちてゆく。
「エマ、大変!白鷹が落ちてしまったわ!治さないと……!」
犬は医師だった。怪我をした相手は放っておけない。空の上で慌てた声を上げる。最初、黒い怪鳥に空の散歩に連れられた時は、空を飛ぶのに恐怖を感じて、少し悲鳴を上げてしまった。怪鳥に宥められて、今ではすっかり、寧ろ定位置のようだ。しかし落ちる鷹を見て、犬の医師はあの時以来の悲鳴を上げた。
「大丈夫なの、エミリー。」
「え?」
しかし黒い鳥は、相変わらず穏やか声で、穏やかに翼を動かす。
「鳥は重力に抗って空を飛ぶ術を持っている。でも、そんな鳥でさえ、自ら抗う気のない力があるの。」
どういうことかと、犬は鳥に抱えられながらその顔を見上げる。話しながら、高度はゆっくりと下がっていった。丁度、あの鷹が落ちた場所だ。
そこには、鎧兜が伸ばした左腕を、文字通り止まり木にした鷹が、その白い羽を騎士に懐かせていた。
「エマもエミリーのいるところなら、落ちるようにすっ飛んでいくからね!」
犬の医師でも、恋の病は治せない。恋に身を投じる速さは、ただ重力のままに落ちるより、よっぽど速いことを知った。
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