冬暁
2026-04-11 00:49:19
2279文字
Public ホム主
 

とある変人の話

深響恋夢2展示作品。
ホム主前提で男夢主(友人関係)の独白です。『幸福をうたって』、『幸福を紡いで』の続きですが、これだけでも読めます。

「俺の大学時代の変わった友人の話なんだけどさ。まぁ、ちょっと聞いてくれよ」

 最初に顔を合わせたのはビロノの海岸だった。一人で蹲ってるやつがいて、具合でも悪いのかと思ったんだよ。大丈夫か、と声をかけても全く反応はなくてさ。近づいてみればそいつ、黙々と貝殻拾ってんだよ。そういえば朝に打ち上がってた貝殻がだいぶ少なくなってるなぁって。そん時の海の流れだったのか、朝方に今日は随分貝が多いなって思ってたっけ。
 ああ、それでそいつのそばには袋が二つ置いてあってさ。その中にたっぷり貝殻が詰まってんの。気になって声をかけてみたんだ。
「お前、何してんの」
「見てわからない?」
 チラリとも見ずにそんだけ。その間も点々と落ちてる貝殻拾ってるからさ。まぁ俺も暇だったし、近くの貝殻を拾い始めたんだよ。毎回持っていくのは面倒だったから、とりあえず近場のやつを集めて山作ってさ。
 そしてらそいつが貝殻の山じぃっと見たかと思ったら、その中から何個か取り出して離れていくんだよ。全部拾ってるんじゃないのかよって思って見てたら、選別して袋に入れてんの。
 やっぱり何してんだコイツ? って思ったよな。
「掃除してんじゃねぇの?」
「そんなこと言ったかな」
「パッと見そうだろ」
 そう返したら冷めた目でこっちを見てくるから、なんなんだコイツってまた思った。
 実はそいつが同じ大学にいたって知ったのはその翌日だったよ。
 昨日こんなことがあってさ、とか友達に話してたら女の子がほっぺた赤くして聞いてんの。
 えっ!? 俺にモテ期!? とか思ったら「それってホムラくんですか?」とか聞いてきてさぁ。
 一人で大量の貝拾ってたやつだぞ? なんでそんな顔すんの?? 確かに顔立ちは整ってたけど、イケメンはよくわからん行動にもファンがつくのか??
 いやぁ、ちょっと悔しかったよね。ちょっとだけな!
 改めて見たらそいつキャンパス同じで、割とちょこちょこ見かけんの。大体一人で絵を描いてるかなんかしてるけど。そんで、そういえばって思い出して話しかけに行ったんだ。
「あの貝結局どうしたんだよ」
「これ」
 相変わらず冷めた目をしてたけど、話しかけんなとか無視とかは別にされなくてさ。あの大量の貝殻がほんのちょっとの絵の具になってんの見ておもしろって思ったよ。自分で絵の具作ってたのか〜って。そういうの女の子は知っててキュンとしてたんかな。
 それからまぁ、特別仲がいいってわけでもないけど、全く関わらないってわけでもないって感じ?
 レポートの資料集めとか手伝ってもらったり、逆に絵の具の材料集めに駆り出されたり。
 虫の抜け殻集めさせられた時は流石に引いたけどな。単純に数集めんのもキツかったし。
 積極的に話すわけでもなかったけど、まぁ会えば話すし、助けて〜って言えばめんどくさそうな顔しながらも助けてくれたっけ。
 相変わらず心どっかにいったのか? ってくらい笑わなかったけど。
 卒業してからはまともに話すこともなくなったな。新年の挨拶くらい?
 正直どこで何やってんのかも知らなかったけど、まぁ何処にいようとどうにかしてんだろうなぁとは思ってた。
 絵画だけじゃなく、彫刻やら楽器やら芸術方面はなんでも出来るやつだったし、食うには困らないだろうなって。むしろ俺の方が食うに困ってたんじゃね?
 そしたらさ、急に連絡入ってビビったよね。アイツから連絡してくるとか絶対めんどくさい話だろ! って。
 住所聞いてくるし、コイツ来んのかなとか思ってたらまさかの招待状届いてさ。
 結婚? え? アイツが!?
 目玉飛び出るかと思ったよ。いや、ドッキリかコレって。天才画家として名を馳せてたのは知ってたからさ、なんかの番組にでも出んのかなって思ったね。そうじゃなきゃ信じられないだろ?
 東に西に気ままに生活して、年食ったら海岸の街で暮らすんじゃねって思ってぐらいだからさ。アイツ、前世は魚だろってくらい水の中好きじゃん? それがまさかの人生の伴侶見つけてんの。そう簡単には信じられなかったな……
 俺の頭の中に冷めた顔したアイツがポンと浮かんだけど、そいつが花嫁連れてる姿はやっぱり想像できなかったね。
 だから正直、会場に来るまではマジで疑ってた。式場じゃなくガーデンパーティーだからさ。やっぱり違ったか? なんの企画だ? とか思いながら入ったよな。
 ——でも、来てみたら納得したよ。
 ホムラはずっとあんたを探してたんだろうなぁって。
 あんな満ち足りた顔で笑うのなんて初めて見た。
 すごい穏やかで幸せそうな顔しててさぁ。本当に同一人物か? いやあんなヤツ二人もいたらびっくりだけど。
 まぁ、あんたの隣にいるホムラはずっと幸せそうだ。
 心どっかにいったのか? って思ってたけど、あんたのところにいたらしい。今のホムラの方がずっと仲良くなれそうだな。
 え? ホムラが招待状送ってる時点でかなり仲良いって?
 確かに〜!
 あ、すんごい顔して見てる。あははっ、あんたといるとアイツのいろんな顔見れそうだ! あんな揶揄い甲斐あるやつだったんだな?
 お、ホムラの昔の話もっと聞きたいって? たくさんあるぜ〜! あぁんな話とか、こぉんな話とか赤裸々に————って、ふ、ははっ!
 そんな恥ずかしがんなよ! 恥ずかしがってない? ほぉん? じゃあせっかくだからホムラ大先生にも同席してもらって昔話と洒落込むか。
 そんなヤツだと思わなかった? そりゃ俺のセリフだって。
 ま、ともかくさ。
「結婚おめでとう。末長く幸せにな」
……ありがとう」


Posted by 冬暁/薄明