カレット
2026-03-22 11:08:25
1832文字
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まなざしのデジャヴ

アメリコワンライ「似ている」+2hくらい/125話より後/パゴゴとジガルデ視点のリコとアメジオ/ギベ→ルシリス要素が少し

「アメジオみたい」
 ぽつりと、リコが呟いた。夕暮れの空を飛ぶ船の上、髪を風になびかせながら。パゴゴがリコの目の向く先を見れば、左側が欠けた月が海の上に浮いていた。
「半月って、片側が影の色になってるだけなんだって。それってアメジオの髪に似てるよね」
 リコの話に相槌を打ちつつ、アメジオの顔を思い返す。どうしてもそっくりなギベオンの顔が重なってしまうけど、いつかは確かに髪の色を見て別人だとパゴゴは気づいたのだ。
 確かに、ずっと後を追いかけてくるところは似ているのかもしれない。以前の話だけれど。
「夜が似合って、裏側がクレーターだらけなのは見せなくて……眩しくても優しくて、ずっと見ていたくなる」
 夕暮れの紫に照らされながらそんな風にひとりごちるリコを見て、パゴゴは思い出していた。リスタルがどこまでも広がる空の青と海の青を見て、ルシアスに似ていると語ってくれたときの顔を。瞳をその色に染めて、ずっと眺めていたものだ。
「こんなこと言ってたなんて、内緒だよ」
 その時リスタルは、今のリコと同じようにパゴゴに向かって口に指を当てていた。
 もしかして、リコのアメジオに向いた思いは、リスタルのルシアスへのそれと似ているということではないか。それなら、リコはゆくゆくはアメジオと……
「お腹空いちゃった? そろそろ晩ご飯だし、行こうか」
 そう、深く考えるにはお腹が空き過ぎている。リコの優しい声と腕に揺られつつぼんやりとパゴゴは思う。いつかの機会に、ルシアスとリスタルを知る友に、このことをどう思うか訊いてみよう、と。

   ◇

「これは……
 部下と手分けして洞窟を探索していた主――アメジオに従って進む最中。一〇%のすがたの白いジガルデは、洞窟の深部で溢れるほどの光る鉱石を見つけ、主が小さく呟くのを聞いた。
 アメジオは大きな結晶に近づいた。つややかな表面に顔が映り込む。ジガルデはその様子を見上げながら、かつての主ギベオンなら、と思う。彼なら結晶を嬉々として採取し、エネルギー量を測定し、研究材料にしただろう。面差しは似ているようで、性質は全く異なるニンゲンの子供。この石を欲するわけではないのか、じっと見つめるばかりだった。
 空を思わせる薄青い色のその石は、ギベオンの無二の仲間であったルシアスを想起させる。その子孫である娘、リコの瞳も、ちょうどこのような色であったか。満身創痍の相棒を励まし、果敢に挑みかかってきた強い視線をジガルデはよく覚えていた。
「リコを、思い出させる」
 同じことを、今の主も考えたのか。髪も目も青い光に染まりながら、目を細めている。 
「強い輝きから、目を離せなくなる」
 ジガルデはいにしえの旅の記憶を反芻する。黒いレックウザとは何度も手合わせをした。その戦いの最中や、勝敗が決したとき、相棒を労る間。たびたびルシアスを目映そうに見ていたギベオンの眼差しと、今の主はよく似ていた。手を伸ばし、触れようとするも、思い直して握りしめ、引っ込める。そんな動きすら。
 ギベオンがルシアスに抱いていた綯い交ぜの感情、それと似たものをアメジオもリコに抱いているのかと思わされる。
……忘れてくれ。先を急ごう」
 小さく頭を振り、アメジオはジガルデに声をかけ、爪先を洞窟のさらに奥へと向けた。そうは言われど、ジガルデは忘れはしないだろうと思う。三人のエクスプローラーズの旅を知る友たちに、いつかこの話をするために。
 今求めるのは我が細胞、さらなる高みへ至る力。颯爽と歩き出す主を、ジガルデも追いかけた。

   ◇

 ラクアの最終決戦を経てしばらく経ったあとも、リコとアメジオには交流があった。必然、パゴゴとジガルデにも。
 パゴゴはジガルデに、リコが半月を見て言っていたことを話したかったが、内緒と言われたことも思い出してしまい仕方なく口をつぐんでいた。なのに、ジガルデは似たような話を聞かせてくる。アメジオが光る青い鉱石を見つけたときの話を。
 そっちもそんなこと言っていたんだ、とパゴゴはつい笑った。そしてすっかり話してしまった。自分の感想も添えて。
 話を静かに聞いてくれてから頷いたジガルデは、そんなふたりもまた似ているのだろう、と言った。なるほど、そうかも。パゴゴは弾んだ気持ちのまま、ジガルデと並んで、バトルをする主たちを見守った。互いを見つめる目線の輝き、熱量は確かに、とてもよく似ていた。