望月 鏡翠
2026-04-10 10:25:07
977文字
Public 日課
 

#2045 THE MEME! その13

#毎日最低800文字のSSを書く

「救世主」「嘘」「貴方はきっと、間違えたのだ」
 俺はかつて理想の国を掲げて、人々の命運をこの身に預かりました。いえ正確には今この体に、ではありませんが。
 生前の俺が、そのようにいきたということです。
 救世主と持ち上げられたこともありました。
 それをし損じたため、結果としてそれは嘘となり、たくさんの家や家族が、巻き添えになって終わりました。
 ですが、そのことを後悔したことは、ありません。どこかで手を抜いたわけではなく、我々なりに全力でやったのですから。
 彼らは、彼ら自身の幸せを追い求めたのです。自分の手で叶えることをせず、託したのです。それは彼らの選択であり、責任です。
 彼らに託されたものを何に利用し何を役立てるのかは、俺が決める。嘘ではなかったものの、計画や目的の全てを伝えたわけではありません。
 それを騙して利用したのだと考える人もいるでしょうね。
 それでいいのです。
 追いかけたことは無意味ではない。今の時代を見て、その思いが強くなりました。同時にくだらないとも思いました。
 誰も本当を語ったりはしない。ただ必要に応じて、相手から受け取る言葉を変えて、その存在を解釈し直して、悪と正義は存在しているのです。
 たまたま俺は、俺の生きた時代において悪の側にいた。そうして死んだ。
 ですが、彼女はどうだったのでしょう。
 俺の伴侶に選ばれただけの彼女。ただ婚姻するべしと命じられた人を愛してくれた人。
 貴方はきっと、間違えたのでしょうね。
 愛する人を間違えたのです。お前のような野蛮人とは家族になどなれないと言って、この身を拒むべきだったのです。
 俺は本当に救世主だったのでしょうか。そうであるなら伴侶の一人くらい助けることができても良かったのではないでしょうか。
 世界を、国を、民を救うことを期待され、結局英雄になり得なかった俺は、ひどく愚かでした。
 大義を成し遂げられなかった上で、愛情を得てしまったことが、過ちの始まりだったのかもしれません。今となってはどちらでもいいことです。
 幻想だとわかっているのに、彼女の作り物に縋っている。一目見て幸せだと願っている。
 これだけ手にしていれば幸せになれたのであれば、俺の求めたことは間違いだったのか。そのようなことを考えない日が、ないわけではありません。