ラブホテルの一室で

◇初代DMC◇ダントリ
仕事帰り、休憩がてらに立ち寄ったホテル。
そこで過ごすダンテとトリッシュの穏やかなひととき。
ほんのり大人な雰囲気の短編⭐️

「あら。意外と広くてオシャレな部屋ね」
「そうだな。思ったより悪くねぇ」
 短く返しながら、ダンテは部屋の中を見回した。
 色とりどりのネオンと、やけに装飾の多い建物が並ぶ通り。
 仕事が長引いたダンテとトリッシュは、疲れた体を休ませようと、休憩がてらホテルに立ち寄ったのだった。
「そういえば、お前とホテルに入るのって、初めてだよな」
「そうね。しかも、ラブホテル」
 ここがどういう場所かわかっているのだろうか——あっさりとした様子のトリッシュに、ダンテは思わず苦笑いした。
「へぇ〜ルームサービスも色々あるのね? せっかくだし、なにか食べる?」
 ベッドサイドのテーブルからメニューを手に取り、楽しげにページをめくるトリッシュ。
 その様子を横目で見ながら、ダンテはソファに腰を下ろした。
「そうだなぁ。ピザとワインと……あとはお前が好きなの頼めばいい」
「じゃあ、遠慮なく」
 トリッシュは受話器に手を伸ばすと、フロントに電話をする。
 ほどなくして注文をし終えると、メニューを定位置に戻してテレビのリモコンを手に取った。
「料理が来るまで、テレビでも見てようかしら」
 そう呟き、トリッシュはリモコンのボタンを押した。
 次の瞬間——画面には裸の男女が映し出され、やけに甘ったるい声が部屋に響く。
……消せ」
「はいはい」
 低い声で眉をひそめるダンテを横目に、トリッシュは小さく息をつくとリモコンを操作して画面を暗転させた。
「ったく……疲れてるときにああいうのは勘弁してくれ……
「あら、結構面白そうだったのに」
 くすりと笑いながら、トリッシュはダンテの隣に腰を下ろした。
……今はそういう気分じゃねえ」
「でも、私とは……イヤじゃないでしょ?」
 そう言って、トリッシュは自慢のブロンドヘアをそっとかきあげる。
 ふわりと漂う甘い香り、試すような彼女の視線に、ダンテは一瞬だけ目を細めた。
……まあな」
 短く答えたその瞬間、トリッシュの体が動く。そして、ダンテの上にまたがるような形になった。
 二人は静かに瞼を閉じ、顔を近づけていく。
 あたたかな吐息を、互いの唇に感じた瞬間——

——ピンポーン。

 間の抜けたチャイムの音が、部屋の空気をあっさりと壊した。
……チッ」
「あら、残念」
 トリッシュはダンテから体を離し、何事もなかったかのように立ち上がる。
 玄関へ向かい、台に置かれた料理を抱えて戻ってくると、手際よくテーブルに並べていった。
「おっ、うまそうだな」
「そうね。いただきましょう?」
 並べられたピザとワイン、食後のデザートから、食欲をそそる香りが立ちのぼる。
 グラスにワインを注ぎ、トリッシュがそれを掲げると、ダンテも応じるようにグラスを手に取った。
「こうやってホテルで過ごす夜も、いいわね」
「だな」
 そう言葉を交わしたあと、グラスが小さく触れ合う音が部屋に響いた。
 自然と身を寄せ合い、二人は運ばれてきた晩餐を楽しむ。
 窓から差し込むネオンの光に照らされながら、二人の夜は穏やかに更けていった。