fromkonjacrgg
2026-04-10 03:11:31
7352文字
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ラブレスパロ。

名前のついたモブ→真の佐真。ラブレスパロ。モブ視点
真のミミがないことに気づいたモブが真にちょっかいを出そうとして、オーナーに盛大に仕返しされる話。

ギリ🔞じゃないと思いますが念の為べったーで。
カッとなって書きました。

※※※ ご注意ください ※※※
人間の耳とは別に頭に猫耳(ミミ)が生えており、ミミは性交渉をするとなくなる(落ちる)という世界線のみをお借りしたラブレスパロです。
(ほんとは尻尾も生えてるよ!)

⚠️モブ視点

 グランドは、この街で「一度は働いてみたい」と言われる店だ。ここで働くことがステータスだという女性も多く、見目もさることながらコミュニケーションも拍手喝采である。そうとなれば客も「ここに通う自分」に価値を見出し、足繁く通うようになる。そして常連になった頃、また別の魅力に気づく。
 それは名の通りこの場を支配している、支配人の存在である。この大箱のグランドをそつなく回し、トラブルが起きればパフォーマンスさながら場を収める。常連になった客は皆、彼に興味が湧くようにできている。フロアを颯爽と優雅に闊歩し、微笑みを浮かべている支配人を目で追うようになってしまうのだ。支配人は席に着くことは基本的にない——例外はありそうではあるが、詳細は客に知らされることはない——が、挨拶回りの一環で席に来てくれることがある。客の顔と名前を頭に叩き込んでいるのか、目を見て名前を呼んでくれるパフォーマンスに心を奪われる客は多いだろう。自分もそのひとりである。
 それに、支配人にはもうひとつ、皆の関心を惹く要素がある。それは、ミミの存在だ。夜の帝王と呼ばれているのにも関わらず、支配人にはミミがついている。黒猫のような、キリッと立ったミミ。『子供』の象徴であるそれは、キャバレーという場には異質に映る。トラブルがある時、店が盛り上がっている時、客に何かお願いする時、そのミミはひくりと感情を表す。スマートな表情とは裏腹に感情を表現しているミミが大変に愛らしく、それを純粋に愛でてる客も多い。支配人の年齢は明かされていないが、想像より若いのだろう。それも相まって、高嶺の花のように扱われているのを支配人は自覚しているのだろうか。本人は奥手で、貞操観念が高く、そういったことにも疎いはずだ。そう思うと少しだけ興奮する自分は、ただ『愛でている』客とは一線を介している自覚がある。近づきたい気持ちと、ミミがあることによって誰のものでもない支配人であって欲しいという気持ちがない混ぜになり、きっと自分が支配人に向ける目は欲に濡れているのだろう、とも思う。
 今日も今日とて、グランドに足を運んだ。指名はせず、フリータイムでできる限り楽しんでいる。可能な限り値段の高いシャンパンやフルーツ盛りなどを頼み、接客してくれる嬢と良好な関係を築きながら、グランドに長く通えるようにしている。今日は支配人はフロアに出てくるだろうか、挨拶しに来てくれるだろうか。そうやってチラチラあたりを見渡す癖がついているせいで、大体の嬢は自分が支配人目当てなことに気づいている。それを揶揄われず、逆に嬢が知っている支配人の情報をアテに席が盛り上がるのだから、良い店だなと思う。
 シャンパンを数本入れ、いつも通りフルーツ盛りを頼み、席が暖まってきたところで、嬢が「あ」と声を漏らした。自分もその声に釣られてそちらを見る。支配人が二階の階段を降りてきているところだった。
……?」
 その姿に違和感を覚える。普段と変わらず背筋の伸びた姿勢でフロアにやってきた支配人が席をまわり挨拶を始めた。「今日は挨拶してくれる日みたいやねぇ、よかったなあ」嬢が自分の肩を軽く叩いて笑う。「そうだね、また少し話せるといいな」そう返しながら、その姿を目を凝らしてよく見た。
「え、……
 支配人のミミがない。いや、存在はしている。黒猫のようなキリッとしたミミが支配人の頭に乗っかっている。ただ、ずっと支配人を見てきた自分にはわかってしまった。
 あれは『違う』。支配人の今まであったミミじゃない。
 普段なら挨拶回りの時には、小さくひくりと動いているはずなのだ。それがどうだ、今日はミミが一ミリも動いていない。支配人の身体の動きに合わせて振動で動いているだけだ。
 誰も気づいてないのか?
 辺りを見渡すと自分みたいに驚いている人は一人も見当たらない。嬢も「そろそろウチらのところに来そうやね」と暢気にしている。
 勘違いかと思って目を擦ってみる。チェイサーを飲んで体内のアルコールを薄める。それでも支配人のミミは変わらなかった。
「っ!」
 身体中の血液が沸騰したかのように、目の前が真っ赤に染まる。
 誰が支配人のミミを落としたんだ! 誰が、誰が!
 衝動的にテーブルをダン、と殴りつけてしまった。幸い、そこまで派手な音は鳴らず、横にいた嬢が小さく悲鳴を上げるだけに留まった。
 誰のものでもないはずの支配人だ。皆が手を伸ばしてはいけない存在だったはずだ。それなのに! 支配人のあられも無い姿を、誰が見たというのだ! 
 怒りは燃え上がり、勢いよく席を立ち上がった。そんな支配人を見てられなかった、挨拶できそうになかった。ツケが許されるのかはわからないが、ここに請求書を送ってくれと名刺を叩きつけてグランドを飛び出した。後ろで「茂原様!」と支配人が自分の名を呼ぶ声がする。いつもなら嬉々として返事するのにそれを振り切った。
 飛び出した勢いのままいくばくか走り、巌橋を抜けてキャバクラ店の近くまで来た。全力疾走のせいか、アルコールが身体中を一気に駆け巡り頭がクラクラする。ぜえぜえと肩で息をして、ふとここがどこかを思い出す。一度、帰宅途中の支配人を見かけ、後をつけてしまったことがある。マーキュリーというキャバクラ店の横の道を入ったところにある、蒼天堀川に面した安っぽいアパートに入っていく姿を見て、派手な仕事をしているのに慎ましい生活を送っているんだなと感心した。ここに支配人が住んでいることを、自分は知ってしまっている。
 誰かのものになったのなら、自分だってその資格があったはずだ——
 ふらふらとキャバクラ店の横道に入り、アパートの前までやってきてしまった。もうじき、グランドの営業が終わる頃だろう。「はは、はははは……」狂ったような乾いた笑いが自分の口から出ていく。支配人をこの手で暴いてやると決め、物陰に隠れじっと息を殺した。

 ◇ ◇ ◇

 カツカツと硬い靴底が鳴る音がして、ハッと顔を上げた。支配人だ。ボウタイが解かれ、二、三個開いているドレスシャツからは普段見れない喜平ネックレスが見えている。ミミは付いているが、やはりぴくりとも動いていない。あれは偽物だ。今までぴくぴく動いていたのを見ている。沸々とまた黒い感情が自分の気持ちを支配していく。
 支配人は階段を上り、扉の前でポケットをごそごそしている。鍵を探しているのだろう。今だ、と思った。支配人が鍵を差し込んだ音がする。その間に階段を駆け上がり、支配人が扉を開けたタイミングで背後に立った。
「っ!?」
 驚いた支配人を部屋の中に突き飛ばすように玄関へ押し入った。たたらを踏んだ支配人がよろけて尻餅をつく。そのまま家に上がり込んだ。見上げてくる支配人にごくり、と喉を鳴らした。
……茂原様?」
 支配人が怪訝そうな表情で自分の名前を読んだ。ミミは動かない。本来ならそのミミはふるふると震えたはずなのに。
「どうかされましたか。先ほど当店を慌てて出られたようでしたが、なにか私どもの粗相でもございましたでしょうか」
「ミミ、」
「ミミ?」
 支配人はわけがわからない、といった顔をしている。言葉は丁寧なのに、普段より表情が出来上がっていない。あの綺麗な微笑みが、自分のせいで崩れているのに心が満たされていく。もっと見たい。もっと支配人の、普段見せない顔がみたい。
 支配人は尻餅をついたままの格好を直そうと、手をついて起きあがろうとする。今、ここで覆い被されば力負けしないかもしれない。そう思って脚に力を入れた瞬間、背後の扉がガチャりと音を立てた。
「なに俺以外の男連れ込んでんの? 真島ちゃん」
 軽薄そうな声が後ろからぶつかる。振り返ると、枯れ草色のダブルスーツに身を包んだ男が立っていた。瞬間、鳩尾に鋭い衝撃が走り膝から崩れ落ちた。殴られたのだ、と気づいた時には板間に乗り上げて蹲っていた。
男は痛みで動けない自分を足先で転がし、ネクタイを抜き取ってきた。そのまま手際良く手を拘束される。
「ちょ、何しとるん! そいつ客やで!」
 支配人の砕けた口調が男に投げかけられる。返事もせず、自分のポケットを探り出した。名刺、ネックストラップがついた名札ケース、ハンカチを取り上げられ、ネックストラップで今度は足首を拘束してきた。
「なんでそんな焦ってんの? マジで男連れ込んだってわけ?」
「んなわけあるか!」
 床に転がされたままの自分は、その二人の会話を呆然と見ることしかできない。「知らんけどグランドのお客様や!」支配人の、少しだけイントネーションがおかしい関西弁。馴れ馴れしい距離感。連れ込むという言葉。もしかしてこいつが、誰のものにもならなかった支配人のことを。
「お前が、お前が支配人のミミを……!?」
 拘束されたままの身体を捩りながら叫んだ。目の前の男は、自分と同じ性で、年齢もそう大差なさそうに見える。仕立てのいいスーツから羽振りの良さが伺えるが、自分だってグランドに長期間金を落としてきた。なぜお前なんだ! こいつで良いなら、自分でも問題なかったはずだろう!
「なに、ミミ落ちたのバレてんの? なんで? 店ん中で外したの?」
 男は支配人に尋ねる。「いや、外しとらんが……」支配人は困惑気味に返事をした。その言葉にさらにカッとなる。
「俺にはすぐわかった! 支配人のミミはいつもひくひく動いてた! それが今日はまったく動いてない。いつもの艶やかさも、輝きも、そのミミからは感じられない! それは偽物だ!」
 そう叫んだ自分に、支配人は目を瞠る。驚きで満ちた表情の中に、少しだけ怯えが見えた気がした。もっと見たい、とさらに言い募ろうとすると、ぞわりと寒気がした。
「へえ?」
 男が冷ややかな目で自分を見てくる。殺気、というものはこういうものを言うんだろうか。ひっ、と喉が引き攣る。身体が自分の意思に反して硬直する。男は玄関横で倒れている自分を蹴飛ばした。壁を背に横たわるような状態になった自分に、先ほど取り上げられたハンカチで口を塞がれる。んん、とくぐもった声を漏らすと「うるせえ」と一蹴された。しかし、男は自分の目の前にかがみ込み、愉快そうに口を開いた。
「良いもん見せてやろうか」
 男は立ち上がり、今度は支配人のもとへ数歩移動し、座ったままの彼の背後へ回った。後ろから彼の顎を掴み、自分へ向けてくる。支配人は動揺したままなのか、片方しかない目をきょろきょろと動かしている。
「お察しの通り、支配人のミミはもうねぇよ」
 顎を支えている逆の手で支配人のミミの付け根に男は触れた。パチ、パチ、と音を立てて両ミミが外され、ぽとりと床に落ちた。
「どんな顔して落としたか知りてぇよな?」
「は!? ちょ、やめっ、佐川は、ん! んぅ……ふ、っ、……
 佐川、と呼ばれた男は支配人の顎をぐいっと斜め上へ持ち上げ、唇を重ねた。伸びた支配人の白い喉が眩しい。わざと彼の眼帯のない右目側を自分に見せつけてくる男に怒りが込み上げてくるが、ぎゅうと目を瞑った支配人の表情に心が奪われる。耐えるように伏せられていた彼のたったひとつの目がうっすらと開き、眉間の皺もどんどん薄くなっていく。最初はむずがるように身体を動かしていたが、そのうち縋るように男のスーツを握りしめた。それを合図に佐川が唇を離した。つう、と銀色の糸が細く紡がれるのを目撃し、自分の口にも唾液が溜まっていく。
「お客様は神様だもんな、真島ちゃん。サービスしてやろうぜ」
「こんなサービスあってたまるかっ……あ、ほんま、やめ、っ!」
 佐川は支配人を板間に押し倒した。なぜ男の場所に自分がいないのだろう、と思うが、これから見られるであろう支配人の姿に期待に胸が膨らんだ。こうなったら支配人の痴態を目に焼き付けるしかない。彼はきっと、初々しい反応をするはずだ。ついこの間までミミがあったのだから。
「こいつのミミ、前からすげえ敏感でさ。生え際なぞってやるとひんひん鳴いたんだぜ。それを見せてやれねぇのは残念だ」
 ——前から?
 佐川は支配人の髪紐をほどいた。ぱさり、とミミと同じ色の艶やかな髪が板間に広がった。生え際から手を差し入れ、ミミがあった場所を男がいやらしく触れた。そのままそこを何度か撫で、流れるように耳に触れる。つう、と指でなぞるようにすると、支配人がゆるりと腰を動かした。感じているような仕草に、こちらの身体が火照っていく。口が塞がれているせいでうまく呼吸ができないのに息が上がってきて、鼻が鳴ってしまう。
「いやや、なあ、ほんまあかんって、佐川はん……!」
 ちらりとこちらに視線を投げた支配人の頬が赤く染まり、弱々しく佐川の胸を押し返した。男はまともに相手にせず、ゆっくりと弄っていた耳から手を離し、彼のドレスシャツのボタンを外していく。ちらりと見えた胸には、鮮やかな刺青が入っていて驚愕に目を見開いてしまう。真っ白な肌に牙を向いた蛇が這っており、その中につんと立っている胸の飾りが扇情的だ。佐川はそれを容赦なくぐにぐにと潰していく。支配人が慌てて口を両手で塞ぎ、いやいやとかぶりを振った。声を漏らさないようにしているのか、身体が小刻みに震えている。その仕草が可愛いと思う反面、胸の飾りを触られて敏感に反応している支配人を疑問に思う。男はふっと笑みをこぼすと、そこから手を離し、胸に描かれている蛇に触れた。急に刺激が与えられなくなったのが物足りないのか、支配人がゆらゆらと腰を板間に擦り付けるように揺らした。男を見上げる彼の瞳が欲に濡れているのがわかる。
 いつしか自分のスラックスが窮屈になっていた。想像以上に乱れていく支配人から、視線がまったく離せない。佐川の指が胸の飾りをひと撫でするだけで、白い身体がびくりと跳ねる。その一挙一動に、自分の息まで浅くなっていく。
 支配人が、ふとこちらを見た。熱を含んだ片目が、たしかに自分のほうへ向いた気がして、心臓がどくりと脈打つ。なにか言いかけた唇から、小さく「いや、」と声が零れる。佐川がそれを鼻で笑った。
「でもやめられんの? 昨日だって我慢できなくて最後までしてくれって何度も言ってきたのはお前だろ」
「ひっ、……う、……
「ミミ落ちてもいいから抱いてくれって言ったの、真島ちゃんだったよね?」
「ちがっ、アッ……や、あかん……!」
「違くねぇだろ」
 支配人のゆるく兆している股座を、佐川の膝がぐりぐりと押し上げる。板間に背を仰け反らせる彼へ、追い討ちをかけるように再び胸の飾りを指で弾いた。必死に両手で口元を押さえているのに、その隙間から抑えきれない喘ぎが漏れ出す。
「んっ……んん、ぅ……!」
「もうこんなんにしてさ、昨日までミミがあったやつだとは思えねぇな?」
 支配人は首を振って否定するが、その姿はどう見ても佐川の言葉を否定していない。佐川のわざとらしい台詞が、こちらを煽るためのものだと頭ではわかっているのに、胸の奥を焼くような嫉妬が込み上げてくる。
「なあ、どうして欲しいか言ってみろよ。今ならなんでもしてやるぜ?」
 ごくり、と彼の喉仏が上下した。強請るような視線を佐川に投げた支配人は、自分の喘ぎを押さえ込んでいた両手を離して佐川の首の後ろに腕を回した。理性を手放した支配人は、自分が暴きたいと願い続けてきた『あられもない顔』を、最初からそれを知っている男にだけ見せている。
「もう奥、さわってほし……疼いてしゃあないねん、……な、はよぅ、して」
「はっ、やらしいねえ。素直なお前も嫌いじゃねぇよ? ご褒美やらないとな」
 そう囁き、再び唇を重ねる。くちゅ、くちゅと濡れた音が狭い部屋にいやらしく響いて、固唾を呑んだ。支配人は佐川の丸い後頭部を、大きな手のひらで押さえ込む。もっと、と言わんばかりに自分から舌を絡めにいく姿を見せつけられて、ぞっとするほど美しいと思ってしまう。
 ——ああ、やっぱり自分の手で、それを見たかった。
 そんな願いは、とうの昔に叶いようがなかったのだと、ようやく思い知らされる。
「あ、その前にやることあるんだった」
「んっ、……なに、っ、どこいくん……
 佐川が名残惜しそうに口付けを離し、縋りつく支配人を板間に残して立ち上がる。そして、部屋の隅に立てかけられていた金属バットをひょいと持ち上げ、そのままこちらへと歩み寄ってくる。
「もうサービスはおしまいだ。勝手に逆上して金も払わず店から出ていくストーカーの変態野郎なんて客じゃねぇからさ」
 金属バットが、ゆっくりと大きく振り上げられる。なぜそんな物騒なものがここにあるのか。お前は一体いつから自分に気づいていたんだ。訊きたいことは山ほどあるのに、口に詰め込まれたハンカチのせいで、くぐもった唸り声しか出てこない。
「次生まれ変わったら、良い子になれよ?」
 月明かりを背にした佐川の顔は逆光でよく見えない。視界の端で、まだ板間に横たわっている支配人が、ぼんやりとこちらを見ているのがわかる。助けを求めているわけでもなく、同情しているようにも見えない。ただ、突然転がり込んできた厄介ごとが、早く片付けばいいとでも言いたげな、遠い目だった。
 あの人は、一度もこちらを『特別』として見ていない。
 グランドでも、今も。ミミがあろうと、なかろうと。誰にでも微笑み、名前を呼び、都合よく愛でられる自分を演じているだけで——清廉潔白な「夜の帝王」だなんて、自分が勝手に祀り上げただけだった。
 誰のものでもないはずの支配人は、とっくに誰かのものだったし、その手の届く場所に最初から自分なんていなかったのだ。
 せめて最後に、と視線だけでも支配人を捉えようとする。目が合ったような気がした。けれど、そこに映っているのは自分ではない。
 鳴呼、と胸の奥でだけ呟いた瞬間、バットが振り下ろされる凄まじい衝撃と共に、世界から音が消えた。