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【注意事項】
本作品はシリーズものの二作目です。
サンプル中に前作の軽いネタバレを含みます。
一作目はboothにて通販中です。5月以降のイベントにも持ち込み予定です。
商品ページは
こちら
一作目未読の方で、ネタバレ問題ないので設定を知りたいという方は
こちらをご覧ください。
以下の要素を含みます
・現代パロディ
・特殊設定(近藤が沖田、藤堂を引き取っている)
・趣味の捏造(藤堂が可愛いもの好き)
以下本文のサンプルです。
「平助、俺近藤さんに挨拶したい」
原田さんの家で寛いでいると、彼はは手に持っていたコーヒーを飲み干して眉毛をキリリと上げた。
「はあ
……。挨拶ならいつもしてるじゃないですか」
「そうじゃねえって。その、平助とお付き合いしてますってちゃんと言っておきたい」
意味がわからず首を傾げていると、少し照れたように原田さんが目を伏せる。
「それ、は
……」
彼の言葉を聞いて意図を理解した途端、急に恥ずかしさがやってきてしまう。
「あんまり頻繁に泊まったりもできねえだろ。流石に怪しまれるし」
「毎回永倉さんにお願いするのも変ですしね
……」
先日原田さんの家に泊まった際は、永倉さんと三人でお泊まり会をするということで近藤さんに話を通したのだ。
「それに、ちゃんと近藤さんにも認めてほしいんだ。俺が平助の恋人として相応しいって」
「原田さん
……」
それだけ僕のことを思ってくれているのだと思うと心の中がぽかぽかと温かい気持ちになる。
けれど
……。
以前僕にデートの予定がある、と沖田くんが近藤さんに言ってしまった時のことを思い返した。
あの時の近藤さんは顔色を変えて固まってしまっていた。もともと沖田くんがデートすると勘違いしていたのがきっかけかもしれないが、それでもあの反応をするかもしれないと思うとかなり不安だ。
「その
……大丈夫でしょうか」
「駄目だって言われても、認めてもらえるまで絶対諦めねえから」
原田さんが僕の手をそっと握る。
僕は、彼の長い指の隙間に自分の指を差し込んで応えた。
「あの、近藤さん」
その日の晩、お酒を飲みながら寛いでいる近藤さんに話しかけた。
「どうした、平助」
「明日お休みですよね、何か予定ってありますか?」
僕の言葉に近藤さんが少し考えるような仕草をする。
「いや、特にないから家でゆっくりする予定だが」
「そうなんですね。その
……明日友人を家に連れてきてもいいですか?」
近藤さんは満面の笑みで頷く。
「もちろんだ。誰が来るんだ?」
「ええと、
……原田さんです」
名前を言うだけなのに手に力が入る。
「原田くんだな、わかった。平助の部屋で遊ぶのか?」
「近藤さんがいるならご挨拶もしたいと」
「そうか、原田くんは丁寧だな」
優しく目を細めた近藤さんが、急に僕の顔をじっと見つめる。
「
……平助、顔が赤いぞ。熱でもあるんじゃないか」
近藤さんの手のひらが僕の額に触れる。冷たくて気持ちがいい、大人の手だ。
「お風呂上がりだからだと思います! 念のため早く寝ますね、おやすみなさい!」
赤くなった理由を悟られないよう、急いで自室へ駆け込んだ。
原田さんが挨拶したいと言っていた。何も間違いではない。ないけれど
……。
明日、大丈夫かな。
僕は熱くなったままの頬を冷ますために窓を開けた。
星空がとても綺麗だ。部屋に入り込んでくる風が冷たくて、気持ちが良かった。
翌日、チャイムの音が鳴って僕は扉を開ける。
「おはよう、平助」
「おはようございます。近藤さん、待ってますよ」
「
……おう」
原田さんは真顔を保っているけれど、その中にわずかな緊張が見られた。もたもたと靴を脱ぐ姿がなんだか可愛らしい。器用な人だから、普段こんな姿を見ることはなかなかない。
……いや、僕とふたりきりのときはたまにある、かも。
「原田さん、大丈夫ですか?」
「
……たぶん」
原田さんが口元を引き締めて頷いた。広い肩にも力が入ってしまっている。彼は深く深呼吸をすると廊下を力強く踏みしめた。
「原田くん、いらっしゃい!」
そんな原田さんの内心に気付かないまま、近藤さんはリビングで嬉しそうに彼を出迎えた。
「こんにちは、これ手土産です」
「ああ、ありがとう。わざわざ俺に挨拶したいと言ってくれるなんて、本当に良い子に育ったなあ」
座りなさい、と近藤さんに言われて原田さんが食卓の椅子に腰を掛ける。僕もどこに座るか迷って、原田さんの隣に着席した。
ずっとニコニコと笑顔を絶やさない近藤さんに、原田さんが少し怯んだように見える。
原田さんは息を深く吸って吐いて、それから口を開く。
「今日近藤さんに挨拶したかったのは、どうしても伝えたいことがあったからなんです」
いつもより固い敬語だ。普段と違う様子の原田さんに、近藤さんもようやく落ち着いて不思議そうな顔をする。
「伝えたいこと
……?」
近藤さんが問いかけると、原田さんは膝の上に置いている拳を力強く握った。緊張しているのだろう。
「その
……俺、平助とお付き合いしているんです」
ゆっくりと、丁寧に紡ぎ出された言葉を聞くと、近藤さんは目を見開いた。
「近藤さんに認めてほしいんです、平助の恋人として」
「平助に、恋人
……?」
近藤さんはぼんやりと呟くと、僕に目を向けた。
「本当なのか、平助」
「えっと
……はい」
真剣な目で近藤さんが聞いてきたので、おずおずと返事をする。
「そうか
……、平助に、恋人。それが原田、くん
……」
近藤さんは下を向いて途切れ途切れに声を出した。
「もう平助は、そんな歳になったのか
………」
近藤さんがそのまま続けようとして、うまく言葉が出なかったようだ。代わりに、瞳に光るものが見えた。
「近藤さん、泣いて
……⁉︎」
驚きのあまり、つい大きな声が出てしまう。
「すまない、いつかそんな日が来るとわかっていた。だが、まだ高校一年生だし先のことだと思い込んでいたんだ」
馬鹿だな俺は、と近藤さんが自嘲する。
「近藤さん
……。俺、平助が初恋なんです」
近藤さんの寂しげな表情を見て、原田さんが語り出す。
「ずっと好きだった。でも叶うなんて思ってなかったから、夢みたいな
……本当に幸せです」
近藤さんは原田さんの言葉に聞き入っている。
「だから、平助も幸せにしたい。
……これまで大変な思いをたくさんしてきたから、俺が今感じている幸福よりも
……もっともっと幸せな気持ちになってほしい。そのためには、近藤さんに認めてもらわなくちゃいけないんです」
こんなに饒舌な原田さん、初めて見るかもしれない。そんな風に思ってくれていたんだな。
「だって、二人は家族で
……平助は近藤さんが大好きだし、近藤さんは平助を息子として愛しているから。だから、俺のせいで二人を引き裂いちゃいけない」
近藤さんは感極まったように目元を押さえた。
「原田くん、ありがとう。そう言ってもらえて、何と返したらいいか
……」
近藤さんは花でも咲いたような微笑みを浮かべて続けた。
「うん。
……挨拶に来てくれたこと、嬉しく思う」
その笑顔を見て、僕は安堵から息を吐いた。
「ところで二人は
……まだ学生だし、手をつなぐくらいだろうか?」
近藤さんが微笑んだまま問いかけてくる。
まさか息を吐いた途端、すぐに呼吸が止まる感覚を覚えるなんて思わなかった。これは
……どう答えたらいいのだろう。
「あ、の
……それは
……」
何も思いつかないまま声を出してしまい、言葉が出なくなってしまった。
「平助
……?」
近藤さんも眉をひそめている。もう全てを終えてしまっているなんて、どうやって伝えたらいいのだろう。血の気が引いてしまっているような、恥ずかしさと緊張のあまり顔が熱いような、なんとも言えない心地だ。
「僕、原田さんと、その
……」
うまく伝えることができなくて、拳を強く握った。
そんな僕の様子を見て、何かに気付いた近藤さんが震えた声を出した。
「もしかして、永倉くんも入れた三人で泊まり込むと言っていた日は
……」
近藤さんの言葉に初めて原田さんと一夜を共にしたことを思い出してしまい、思わず僕は目を逸らした。頬が熱くてたまらない。
「俺の可愛い平助が
……」
近藤さんは顔を真っ青に染め上げる。
困った僕は原田さんの顔を見上げた。彼もこちらへ目線を向けており、図らずも目が合ってしまう。原田さんは少し気まずそうに目尻を下げる。僕も彼の表情につられて口元を歪ませた。
「
……いや、きちんと伝えてくれてありがとう。平助、原田くん」
少し持ち直したようで近藤さんは僕と原田さんに笑いかける。しかし、その顔はまだ青白いままだ。
「いえ、こちらこそ急にすみません」
落ち着いて返す原田さんの顔色もあまり良くはない。
「
……今日は失礼しようと思います」
重たい空気の中、原田さんが口を開いた。笑っているように見えるけれど、きっと無理して表情を作っているのだろう。
「近藤さん、俺は確かに貴方に認めて欲しいと言いました。でも、それは貴方を苦しめてまで成し遂げたいことではないんです。だから、無理に認めないでください」
「原田くん
……」
呆けたように声を出す近藤さんに頭を下げて、原田さんは立ち上がる。
「近藤さん、僕原田さんを送ってきます!」
僕の言葉に近藤さんは静かに頷いた。
それを確認した僕は原田さんを連れて戸を開いた。
「原田さん、大丈夫ですか?」
玄関までやってくると、僕はそっと彼に問いかける。
彼からの返事はなく、代わりに強く抱きしめられた。
「原田さん
……?」
「平助
……。俺、ちゃんとできたよな」
その声が震えていて、僕はそっと両腕を彼の背中へと回した。
「あそこで言ったことは全部本当だ。認めて欲しいけど、でも近藤さんを苦しませたくない」
「はい」
身体は大きいけれど、今の彼はなんだか子供のように見える。彼の背中を優しくぽんぽんと叩いたけれど、背中が大きすぎるせいで背中の真ん中にまで手が届かなかった。
「認めてもらえないかもって覚悟はしてたつもりなのにな。
……先走ってあの日お前とするべきじゃなかった。別れろって言われたら、俺
……」
僕を抱きしめる腕に力がこもる。
「大丈夫ですよ、原田さん」
根拠はないが大丈夫だと、そんな確信があるのだ。
「大丈夫。それに
……僕だっていつまでも我慢はできなかったと思うんです」
僕の言葉に、彼がゆるりと力を抜いた。
「僕、改めて近藤さんと話してみます。待っててください」
僕は原田さんに笑いかけると、元気を貰おうと彼の胸板に額を押し付けた。
「近藤さん、戻りました」
家路についた原田さんを見送った僕はリビングへ戻り、近藤さんに声をかける。
「ああ、おかえり平助」
近藤さんがふわりと微笑む。
「ええと
……落ち着きました?」
「ああ、すまなかったな。平助」
近藤さんがわしゃりと僕の頭を撫でる。
「僕の方こそ、その
……すみません」
「大丈夫だ。平助、少し座って話そう」
僕は近藤さんの誘いに頷いた。
「お茶入れますね」
「ありがとう、平助」
近藤さんの返事を聞いて僕はキッチンへと向かった。お湯を沸かして茶葉を準備する。用意を進めながらカウンター越しに近藤さんの顔を見つめた。彼は机と見つめ合っており、表情はわからない。
「お待たせしました」
僕がお茶を近藤さんの目の前に置くと、彼は湯呑みを優しく握って笑みをこぼした。
「その
……」
自分の分の湯呑みとともに着席したもののうまく話せない僕に、近藤さんはお茶をゆっくりと飲んで口を開いた。
「平助、無理する必要はない」
近藤さんが僕の両手を握る。
「いいんだ、原田くんを選んだ平助は正しい。彼はとても素晴らしい青年だ。お前が彼としたいと思ったならば、いいんだ」
自分に言い聞かせるように話す近藤さんの言葉をただ聞くことしかできない。
「
……ただ、嘘をつかれたことが、少し寂しくてな」
少しの沈黙の後に紡がれた言葉に、僕ははっと息を呑んだ。
「近藤さん
……ごめんなさい」
僕は近藤さんの気持ちを考えられていなかった。恋人がいると伝えたら近藤さんが驚くんじゃないか、大変なことになるんじゃないかって、そればかり考えていた。
「落ち込まなくていい」
近藤さんが下を向いた僕の頭を撫でる。
「俺が驚くと思ったんだろう? お前は優しい子だ、俺を思ってくれたんだとわかっているさ。これは親のエゴだ。子供が大切で、傷ついてほしくないばかりに、まだそんな経験をするのは早いと思ってしまうんだ」
「近藤さん
……」
彼の瞳が僕を映し出す。その瞳は愛おしいものでも見るような優しい色をしている。
「時間をくれるか、平助。
……原田くんにもそう伝えておいてくれ」
近藤さんがとても美しく笑う。その瞳が少し潤んでいるように見えて、僕は声も出せずに頷いた。
近藤さんと原田さん、ギクシャクしないといいけれど
……。
「近藤さん、思っていた以上に落ち込んでいますね」
それから数日が経ったある日、僕の部屋に入り込んだ沖田くんが楽しそうに笑う。
「面白がってないか?」
「そんなことないですよ!」
つい怪訝な顔になってしまう僕に、沖田くんは頬を膨らませる。
「
……ほんとは私だって、藤堂さんが原田さんのものになってちょっと寂しいですし」
「沖田くん
……」
沖田くんは寂しげな表情を浮かべた。彼女のそんな表情を見ることなんて滅多にないので、僕は狼狽えてしまう。
「でも恋人よりは家族の方が上だと思うので、原
田さんに負けたつもりはありません!」
沖田くんは憂い顔をすぐに消して力拳を握る。
「ふふ、何だそれ」
「藤堂さんは、私か原田さんのどちらかを選べって言われたらどうしますか?」
沖田くんか原田さんかどちらかを選ぶ
……?
一体どんな状況なんだ、それは。
「ええ
……? どうだろうな、考えたこともなかった」
正直に答えると、沖田くんは不満そうな顔をする。
「ここははっきり言ってくださいよ、家族の方が大事だって!」
「そんなこと言われても
……どっちも大事だから、そう簡単には言えないな」
僕の言葉に彼女はむずむずと口元を緩ませた。
「もう、そういうところですからね
……って、そんな話をしに来たんじゃなかった。見てください、藤堂さん!」
沖田くんがスマホをこちらに向けてくる。
「テディベア作り
……ワークショップか」
「良くないですか、これ!」
彼女はキラキラと目を輝かせている。
「行きたいのか?」
「そうじゃないです! もちろん私も興味ありますけど
……原田さんとのデートにってことですよ」
「沖田くん、原田さんとのことになるとやけにワクワクし出すよな」
そのおかげで助かることもあったけれど、こう楽しそうにされると少し恥ずかしい。
「こういう相談役みたいなポジション憧れだったんです。漫画の登場人物みたいじゃないですか? 藤堂さんのおかげで夢がひとつ叶っちゃいました!」
彼女が本当に嬉しそうに笑うので、なんだか毒気が抜けてしまう。
「まあ、沖田くんが楽しいならいいけどさ」
説明を見たところ、このワークショップではカットされた生地を選んで縫うところから挑戦するようだ。原田さんが大きな身体でちまちまと針と糸を使う姿を思い浮かべて笑いが込み上げてくる。
……そうだ。
一つ、案を思いついた。
「これ、どこから申し込める?」
「ここのサイトから行けるみたいですよ!」
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