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雨鶴
2026-04-08 23:07:15
2452文字
Public
小話
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長次のボーロと六年生
有難う。こんなに供給が凄いジャンル。浮かれ上がって出来た小話。
元ネタは原作
学園祭で各委員会、なにをするか。その話し合いをしていた時の事だ。
「教養のある図書委員会らしく、本の読み聞かせなど良いんではないでしょうか」
二年い組の能勢久作が提案する。優等生の『い組』らしい提案だと、長次は思う。
「いいですね。でも僕、うまく出来るかなぁ
…
」
久作の意見に是を倣えたのは、一年ろ組の二ノ坪怪士丸だ。
だが。
「先輩たち、なんか違うんですよ~。それこそ図書委員会ならではの付加価値がないと!」
「
…
きり丸」
一年は組摂津のきり丸。忍術学園イチ金儲けに詳しい。利益が絡むと頭の回転は誰よりも早いだろう。
「何だよ、付加価値って」
「いいですか?図書委員会には中在家長次図書委員長が居るじゃないっすか!中在家先輩と云えばボーロ!先輩が作る特製のボーロとお茶のセット!絶対儲かります!」
きり丸が力説すると、久作も怪士丸も確かに美味しいです、とか読み聞かせも付けたらどうだろうとか盛り上がっている。
「それに、料理の上手い委員長は何処も居ないから、絶対勝ち確です!」
「
……
」
料理の上手い──と云うか、特化型ではあるが、火薬委員会委員長代理の久々知兵助がいる。
久々知の事だ。多分いや、きっと、絶対に。
「自分達は豆腐を売ります!試食即売会です!」
とか、言い出して土井先生を困らせそうだな
…
と長次は考えていた。
ふと、久々知と同級生の雷蔵を見ると同じ思考に思い当たったらしい。何やら顔色が悪いが大丈夫だろうか?
ちなみに、この二人の考えはバッチリ当たるのだが、それはまた別の話で今は割愛する。
じゃあそうしよう、と話が纏まり掛けた時。
「学園祭だけの特別製にしましょう!そうすれば尚更大儲け間違いなしです!」
……
商魂逞しい後輩の提案に、長次は頷いた。
ともあれ、長次は作る事自体は楽しいし、皆が喜ぶのも嬉しい事には変わりはなかった。
「
…
試作品を作ってみよう」
普段の物を何個か作り、四分割にする。それを後輩達が好き好きにトッピングしたり、間に挟んだりと試作品を作り上げていった。
「小豆と生クリーム、どっち挟もう
…
悩む~」
件の悩み癖を発揮している雷蔵にきり丸が「両方挟んでみては?意外に旨いかもしれませんよ?」とアドバイスしていた。
中に入れて焼き上げるボーロは、長次の好みでお任せ。
柿のジャム、梅のジャム、蜜柑の皮まで入れたジャム。少し値のはる南蛮由来の生クリーム。中に入れて焼いた胡桃入り、小豆や干した果物入り。他にも色々。どれも好評だった。
「どれも甲乙つけがたいですね」
「お腹いっぱいになってきました」
雷蔵も久作も苦笑しながら言う。
「
…
もそ」
確かに作りすぎたかもしれない。
「
…
残った物はクラスの皆で食べると良い」
「えっ!?売りに行きませんか!」
「きり丸!」
これだけでも儲けがでます!ときり丸が言えば、久作が嗜めてきた。
「
…
売る程もないだろう。おやつに食べても良いし、好きなようにしなさい」
後輩にそう言うと、長次も幾つかのボーロを手に六年生長屋へ向かった。
(
…
うん?)
長屋へ向かう途中、何やら騒がしい声がした。そちらへ足を向ければ文次郎を囲むように他の六年生が摘め寄っている。
「
…
何をしているんだ、お前達」
声を掛ければ、文次郎が辟易とした顔で言ってきた。
「長次
…
!お前まで予算とか言わんだろうな!?」
「予算?」
どうやら皆、学園祭用の予算増額を文次郎へ願い出ていたようだ。
「私は違う。実は
…
」
簡単に今までの経緯を長次は五人へ話すと、持っていたボーロを差し出した。
蜜柑の皮のジャムをサンドしたもの、生クリームと小豆をサンドしたもの、胡桃や木の実を入れて焼いたボーロ。
「うわぁ。色々あるんだね」
「見た目もキレイだな」
「
…
食べて感想を聞かせて欲しい」
「良いのか!?」
長次の言葉に、五人は破顔すると銘々ボーロを手に取って口に運んだ。
「蜜柑のヤツ、さっぱりして旨いな!」
「ふむ。苦味と酸味が丁度良い」
小平太と仙蔵が言うと、文次郎と留三郎、伊作も好みを長次へ伝えてくる。
「胡桃が入っているのも旨いぞ」
「ああ。味が良く分かるな」
「僕は小豆と生クリームの好きだな」
「そうか
…
」
「うん」
褒めてくれるが何だか皆、微妙な反応で長次は首を傾げる。
「
…
何だ。余り口に合わないか?」
「いや、そうじゃないぞ、長次!」
長次の問い掛けに小平太が慌てて否定する。
「このボーロは旨いんだ。でも何も入っていない、普段から作ってくれる長次のボーロが一番旨いと私は思う」
「そうだな。小平太の言う通りかもな」
小平太の言葉に文次郎や皆も頷いたので、長次は「どういう意味だ」と聞き返した。
「何だかんだいって一年の頃から一番慣れ親しんでいる味だし、それだけ長次が作ってくれている」
「長次が初めて作ってくれたのを皆で食べた時、本当に美味しいかったよね~」
「ああ。それに何かあったら作ってくれたもんな」
「祝い事然り、落ち込んでいた時もまた然り」
「喧嘩して、仲直りしないと食わせてもらえなかったりしたよな」
五人は昔日の思い出に花を咲かせ始めた。
「
……
」
五人にとって【
自分
長次
のボーロ】と云う物は何やら特別な意味があるみたいらしい。
なんだか、恥ずかしいやら嬉しいやらで長次は顔が熱くなってきた。
すると仙蔵が。
「しかし、長次。こんなに試作を試して大丈夫なのか?」
──そう聞いてきた。
「
…
ん?」
「本番の学園祭で作る材料費とか」
「
……
」
すっかり忘れていた。
スッと掌を文次郎の前に長次は差し出す。
「
……
潮江くん、予算」
「結局、お前もかよ!」
「案外おっちょこちょいだよねぇ、長次」
「そこも長次は可愛いからな!」
…………………………………………
祝!長次のボーロ放送で書き上げました。
六年生の五人は一番、長次のボーロを食べていると思うし、それだけ思い出がたくさんあると思うんですよね。
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