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ゆべし
2026-04-08 11:05:22
2722文字
Public
銀色の夢
Customize name
2118391
Customize name
あなたの隣で
gntk夢
夢主の大まか設定→
https://privatter.me/page/69da14fcf373d
さくら
さくら
私は刀を持てないし
私は人を傷つけることはできない
それでも、あなたの隣にいることが許されるなら
盾にだって、なんだってなる
「
さくら
!」
庇う必要なんてなかった。後になって思ったけど、体が勝手に動いたんだから仕方ない。包丁で指を切った時も痛かった。それが服を割いて、素肌を切り裂いたのだから、傷は熱いし痛い。なのに、体温は全身から引いていくみたいで冷や汗がじわりと滲む。怖い、頭の中が暗闇に包まれる。
「ぎ、さん
……
」
「喋んなッ! ちょっとコレ被って待ってろ。オイ! 新八! こっち来い!」
「ぎん、さ
……
ッ!」
「動くなって」
頬に傷ができてる。伸ばした手は触れたいところまで届かず、代わりに分厚くて硬い大好きな手に掴まれた。どんどん遠くなっていく声、瞑りたくないのに閉じていく瞼。その温もりが離れていく瞬間、私が発した言葉は届いたのかな。
「ぜってェ戻ってくっから、いい子で待ってろよ」
そこで、私の意識は途切れた。次に目が覚めたのは見慣れた天井と消毒液の匂いが鼻を掠める。燃えるように体が熱いのは切られた傷があるから。その痛みを感じているということは生きている証だ。
体自体は一ミリも動かせない。力が入らないと言ったほうが正しい。唯一動かせるのは視線と頭を左右に傾けられるくらい。左側には天井と同じく見覚えのある襖がある。右側には壁かと思いきや、ふわふわと揺れる銀色が見えた。
「
……
ぎん、さん?」
「んん〜〜〜 ア?
さくら
?」
「銀さん」
「
……
オメーはよォ」
「?」
上げてくれた顔をまた伏せるから、見えなくなってしまって不安になる。どこか動かせるところがないかと熱い体に神経を巡らせて、辛うじて腕が動きそうだった。ふわふわの銀髪にポンッと手を置いて、優しく撫でる。傷はあるけれど五体満足、命があるだけ儲けものなのだ。
「銀さん?」
「俺ァ、肝が冷えたよ。オメーが勇敢にも刀から庇ってくれるなんて、考えてもいなかった」
「あの時は
……
体が勝手に」
「そういう奴だって分かってたのに、護れなかった」
悪ィ、痛ェよな。苦しそうな声で言うから、まるで自分が切られたみたい。見たところ怪我はあるようだけど、起き上がれる程度のものってことだ。本当に私が出る幕なんてなかったのかもしれない。
「ごめんね、銀さん。余計なことして、心配させちゃった」
「
……
んな言い方すんな」
「だって
……
」
「助かったよ、ホント」
「なら、良かった」
よくねェよ、嫁入り前の女がこんなデカイ傷拵えて
……
何してんだ。消え入りそうな声で言う。私は少し考えてから、思いついた言葉を口にする。いつもなら恥ずかしくって言えないことも、今はどうでもよくなってしまう。生きてるからできること、生きてる時にしかできないこと。
「銀さんが傷モノでも良ければ、問題ないでしょう?」
「
……
」
「ダメなら私、ずっとひとりね」
「ひとりになんかさせねェよ? 絶対に、な」
この手を握っていれば、どんなに暗い闇の中へ落ちても帰ってこられる。だから、ずっと離さないでいて。それが例え血の降る戦場でも構わない。私はただ、
「あなたの隣で生きていけたら、それでいい」
「スゲェ殺し文句だな」
「本当のことだもん」
「
……
でも、あまり無茶すんなよ」
「そうね。もう、斬られるのはゴメンだわ」
「次はねェよ」
「ねぇ、銀さん」
「あ?」
「ちょっとだけ、少しだけ寒いの」
「
……
しゃーねェな」
同じ布団に入って、溶けていく体温に安堵の息を吐いた。気を抜くと途端に痛みが駆け上がってくる。額にじわりと滲んだ汗、そこに触れた唇はカサついていて、少し冷たい。でも、私には一番効くみたい。
「次に目ェ冷めたときは、新八と神楽にも会ってやってくれ」
「二人にも怖い思い、させちゃったよね」
「初手は怒られるだろうが
……
許してやって」
「私が怒られるのに?」
「もう、寝ろ」
「ん
……
おやすみ、銀さん」
熱い、ベタベタする、痛い、苦しい。ハッと息を吐いて、追いかけるように瞼が開く。隣に銀さんの姿がなくて、吸っても、吸っても苦しい呼吸に身の置き所がない。置けなくても動かせないから、なおさら苦しい。
「お姉、大丈夫アルか?」
「かぐ、らちゃん
……
大丈夫だよ」
「全然大丈夫そうじゃないアル!」
「そ、だね」
おでこに乗せたタオルが温い。何かしてほしいことないアルか?って心配そうに聞いてくれる。近くに水の入った桶があるか尋ねると、タオル濡らす?と聞いてくれた。コクリと頷いたあと、水滴が垂れない程度に絞ってほしいと伝えたら、任せろヨ!と慎重にタオルを絞ってくれる。
「どう?」
「きもちぃ
……
ありがとう、神楽ちゃん」
「痛いアルよな。でも、ワタシちょっと嬉しかったアル」
「嬉しい?」
「お姉が守ってくれてなかったら、銀ちゃんがもっと怪我してたヨ。もちろん、誰も傷ついてほしくないアルよ? けど、危ないって分かってくれて、飛び込んでくれたから、銀ちゃんは今ここにいるアル」
だから痛いだろうけど、ありがとうヨ。少し目尻に涙を浮かべながら教えてくれた。戦うってことになると、私にできることは少ない。それでも一番周りを見ることができるから、体が動いたんだと思う。力になれただろうか、万事屋銀ちゃんとして、家族として。
神楽ちゃんと話をしていた時間なんて数分くらいなのに、見上げる天井がぐるぐると回り始めた。うぅ、と唸れば、神楽ちゃんが慌てて新八くんの名前を叫んだ。あぁ、今、銀さんがいないんだ。思った瞬間、私の心は脆く崩れていく。大丈夫だよ、すぐに良くなるから、頭の中に浮かぶ言葉は口から出てはくれない。
新八くんが薬を持って来てくれて、気持ち悪さは込み上げるけど、なんとか飲み下した。フラフラと移ろう手は神楽ちゃんが握ってくれる。こんな風に甲斐甲斐しくお世話される立場でもないのに、みんなの優しさが心に沁みた。
「
……
」
「起きたか?」
「ぎんさん
…
」
「無理して喋って具合悪くしてたら元も子もねェだろ」
「ごめん、ね」
「
……
まっ、アイツらで対処できたから、回復したら甘やかしてやって」
「うん
……
神楽ちゃんが、さ
……
教えてくれたの」
「神楽が?」
「怪我はしてほしくないけど、銀ちゃんを守ってくれて嬉しかったって」
「
……
」
「私、少しは
……
肩を、並べられたかな?」
「少しどころじゃねェし
……
元々並んでるよ、俺たちは」
「ふふ、ありがとう」
「また気分悪くなるぞ。さァ、寝た寝た」
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