カエデ
2026-04-05 14:59:35
983文字
Public
 

コーヒーはいかが?

Xのパムのアカウントに投稿されたイラストの勝手な妄想

場所は列車のラウンジ。
姫子と丹恒、なのかがテーブルクロスが引かれた1つのテーブルに集まって、写真の整理や開拓日誌の整理をしていた。
……そろそろ休憩にしましょう」
姫子はそう言うと上機嫌で、ラウンジの扉を開けてどこかに行ってしまった。
残された2人は顔を合わせる。この後何が起こるのかは容易に予想が出来た。
「ウ、ウチ、ちょっと用事を思い出しちゃった! ちょっとしたらまた戻ってくるから、丹恒はここに居てね!」
「おい、待て!三月──!」
カメラやフィルムの片付けもそこそこに客室車両に去っていくなのか。すれ違いで、姫子がケーキとコーヒーを載せたトレーを抱えてこちらに来た。
「三月ちゃん、慌てて部屋に戻ってったけど……急ぎの用事でもあったのかしら?」
……そうだと思います」
姫子がケーキとコーヒーを机の上に並べていく。
机に置かれたコーヒーからはこの世のものではない香りと、他の人が入れたコーヒーでは見たことの無い色の湯気が立ち昇っている。
「丹恒、甘いものは苦手だったわよね?コーヒーだけでもどう?」
……いただきます」
ここでNOと言えるほどの勇気は丹恒に無かった。
いつの間にか集まってきたゴミケーキ達や掃除を中断して心配そうにするパム、コーヒーを嗜みながらこちらの様子を伺う姫子に見守られ、カップのハンドルに指をかけたものの丹恒はどうしたものか、と途方に暮れる。
緊張で表情が強張り、丹恒の顔から一滴の汗が流れ落ちる。それを誤魔化すように咳払いをした。
……顔色が少し悪いようだけど、体調は大丈夫?」
「いえ、体調は何ともありません。 大丈夫です」
コーヒを入れてくれた人の前で不味いという反応をするのは如何なものか。かと言って表情1つ変えずに飲み干すのも難しい。
やはりこのままこのコーヒーを飲むしかないのか。
丹恒が恐る恐るカップを口に運ぼうとした、その時──。
「みんなで何やってるの?」
パーティ車両へ続く扉の方から鈴を転がすような声が聞こえた。
声のする方へ顔を向けると、星が階段上のスペースからこちらの様子を伺っていた。そしてゆっくりと階段を降りてこちらに向かってくる。
「あら、アンタも来たのね。 今ちょうどコーヒーブレイク中なのだけれど、1杯どう?」
姫子の思わぬ誘いに星は、丹恒と顔を合わせて苦笑いするしかなかった──。