はらす
2026-04-05 14:45:11
833文字
Public 忘バ
 

20260331夏彦 誕生日

2026/03/31 夏彦 夏彦誕生日2026 誕生日とは全く関係がない、ある夏の日のネタなのですが、夏彦の誕生日に合わせて書きかけを引っ張り出してきました。 830字

予選の準決と決勝は温存する、つまりお前は投げさせない、と監督に言われ、腹立ち紛れに寮を出た。走り出す瞬間に凪がポケットに何かを捩じ込んできたので怖かった。なんやアイツ。スリなんか。闇バイトか。走りながら中身を確認すると現金やった。金はなんぼあってもええ。アイツけっこうええやつやな、次もまたなんか貰ったろ、と考えながら新幹線に乗った。むしゃくしゃするから、カスが負けるところを見たったろうと思いついたから。あいつどんなふうに投げて負けるんやろう、いや、意外に勝つかもな、てか登板するんかな、流石にそこはするやろ、ほなどんなふうに投げるんかな、最後勝つかもしれんしそしたら速攻帰ったろ。ぼんやり窓の外を眺めているうちに俺は品川に着いた。一人で東京に来るのは初めてだ。乗り換えが全然わからんかったけど、その辺の人に聞きながら歩けばどうにかなった。地下鉄は絶対に乗るなと百回は言われた。うるせえけど、正直分かる。何が書いてあるかそもそもの漢字が分からんもん。そうして俺は球場に着いた。神宮だ。
神宮に着いたはいいが、その日は帝徳の試合だった。なんや。カスは投げとらんのか。つまらないので帰ろうとしたが、SNSを覗くとカスはカスで偵察しとるらしい。最初から見とくべきやったんかもしれんけど、勢いで来てもうたからしらんがな。まあいい。手ぶらで大阪に帰るんは嫌や。せめてあいつを弄りたおしてから帰ろうと思い直した。
「どうせ負けるんやから、こんなところにおらんと練習した方がええんちゃうか?」
声をかけてもカスは振り向かんかった。帝徳のツンツン頭が球を投げるのを見つめながら、半笑いで切り返す。
「ほな、東京におるお前はなんやねん。余裕やな」
「余裕に決まってるやろ」
席に腰を下ろすとバン!と椅子が軋む音がした。球場の椅子ってなんでこんなちゃちいねん。狭いし。
「球ほおるだけが練習ちゃうやろ」
お前は知らんか、と呟いてカスは視線を球場に戻した。ムカつくな。