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ぽふむん
2026-04-04 22:00:00
1041文字
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ワンドロ
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華の言霊
#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「言霊」「花吹雪」
幻影としてカナエさんがいます。
春の穏やかな陽射しが暖かく縁側を照らす。
風もなく麗らかな花見日和だ。
しのぶは、蝶屋敷の庭先に植えられた一本の桜の樹を、一人縁側に座して見上げていた。
何代か前の花柱が植えたと伝わる桜。
必勝
それは陽光を受けて薄紅色に空を彩っていた。
突如辻風が吹き上がる。
その旋風に花びらが散らされる。
その花吹雪の中に、今は亡き花柱の幻影が見えた気がした。
「ねえさ
……
」
しのぶは手を伸ばしかけたが、幻影の姉は厳しくも悲しい表情で消えた。
しのぶは微笑んだ。
何も嬉しくもおかしくもないけれど
笑った。
それは、生前の姉の言葉を覚えているから。
───しのぶ。感情は伝染病みたいなものなのよ。悲しみは伝染するの。
だから、いつまでもめそめそしていてはダメよ。
あなたが泣いていたら、妹たちにもそれが
感染
うつ
るから───
(わかっています。姉さん)
しのぶはこめかみに青筋を浮かべながら笑顔を作る。
───姉さん、しのぶの笑った顔好きだなぁ───
カナエの声が去来する。
つむじ風は消え、花びらは地面に落ちる。
今は何事も無かったように穏やかだ。
悲しみは伝染するから。
血の繋がらない妹達に伝染させない為。
しのぶは嘘の笑顔を張り付けた。
何にも楽しくもない。
幸せでもないのに。
姉の遺言が本当かどうか分からないけれど。
それでも、姉の遺言を守った。
もうひとつの遺言。
───好きな人と結婚して、子どもを産んで、おばあちゃんになって───
姉の遺言はこの言葉と一組だったのに。
姉の遺した言霊の真意を、しのぶは理解できていなかった。
感情を誰かと分かち合いたいなんて、生前のしのぶは思っていなかった。
姉のいない世界に幸せなんて存在しない。
感情は伝染する。
それが真実だと本当に理解できたのは、しのぶの死後だった。
黄泉の狭間で、あの男を出迎えた時のことだった。
全てをやり遂げ、感無量の会心の笑みを浮かべた時の事。
後のことは遺していった妹たちが、好きなように上手くやる。
もう自分は居なくても問題ない。
そんな満足の笑顔を浮かべた時のことだった。
悲しみと言う感情だけが感染するのではない。
本当に嬉しければ、喜びや幸福感も感染する。
それは、目の前の掌の上の宝珠が証明してくれている。
生前にしのぶが命をかけて欲した宝珠。
それが手に入った喜びが
感染した。
自分の感情を分け与えてしまった。
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