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悠環 彰
2026-04-04 00:30:43
2992文字
Public
MCU:サム関連
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Throwback
スコットとサムと思い出の品の話。
CW当時にメモしてそのままになってたネタの焼き直しです。
EG後FAWS前の謎時空という感じで…ふんわり読んでください。
この二人のやり取り、もっと見たいなぁ…。
※ミニイベント【#月いち36の日】掲載作
「やぁサム、お招きどうも」
サンフランシスコから直行便でひとっ飛び。もらった住所を頼りにD.C.の街中を彷徨い、辿り着いた家のドアベルを鳴らすとブラインドが開いて家主が顔を出す。
「悪いなアリさん、はるばる来てもらって」
「いいっていいって。あ、こっちは俺の友達」
後ろに控えていたルイスとデイブ、カートがスコットの一言をキッカケに一人ずつ名乗りを上げる。サムは律儀によろしくと一人ひとりと握手をして、自宅に四人を招き入れてくれた。
「色々あって実家に帰ることにしたんだが、流石に全部持って帰るにはモノが多くて」
程よくキレイで程よく生活感のある明るいメゾネットタイプの室内をぐるりと見回す。確かに、山積みになったCDや棚一杯のレコード、セラーに入れられたワインなどひと目見るだけで物が多く、正に単身男の城という感じだ。
「それで、仕分けと梱包を手伝ってほしいと」
「そういうこと。今日一日で出来る分でいい。明日は観光に行くんだろ?」
今回四人でD.C.に来たのは、慰安旅行も兼ねていた。そこでサムにも会えないかと連絡を取ったのだが、どこからしくなく歯切れの悪い調子にスコットが色々ヒアリングをし、お節介にもこうしてなんでも屋をやりに来たということだ。
「おい! これ、デビュー初期のレア盤だぜ!」
「このワイン、オークションでソコソコの値がついてる」
早速片付け
……
というか、家探しと言うか、あちこち見て回り始めた三人はそれぞれに私物を手に取ってはワイワイと声を上げる。
「ファルコン、これ、なぁ、俺もこのCD好き! かけていい?」
「お、ナイスチョイス。いいぞ」
ルイスがぶんぶんと振り回すアルバムをサムが受け取って、コンポに入れる。すぐにノリの良いテンポの曲が流れ始め、鼻歌を歌ったりリズムに乗ったりし始める。自宅に乗り込んで随分勝手をしてないかとスコットは思わずサムの表情を覗き見たが、案外気にしていないというか楽しそうなのでホッとした。
それから、五人で棚やら何やらから物を出しては段ボール箱にしまっていく。先述のレコードやCD、映画のDVD、専門書から小説、雑誌までバラエティ豊かな本、ワインやグラス、食器、服や靴、エトセトラエトセトラ。サムが実家に持って帰るごく一部以外のものは処分してしまうという。だがルイスたちがその中のいくつかを譲ってくれないかと申し出ると、格安でいいぞと気前よく振る舞った。
買い置きの食材なんかも処分が必要だと言うので、おやつにパンケーキを焼き、夕食もルイスとサムが作って食卓に並べてみんなで食べた。はたから見れば真面目にやってるとは到底言えない様子だったとは思うが、案外と部屋の中のものはどんどんと段ボール箱の中に仕舞われていった。
「サム、上がっていい?」
日付が変わって少しすると、一人、また一人と脱落しラグの上で雑魚寝を始めてしまった。スコットは流れ続けていたCDを止め、キッチンで淹れたコーヒーを適当なマグに注ぎ、そして明かりのついた上の階にいるはずの男に声をかける。
「ああ、どうした」
「ひと休憩どうかなって思って」
許可を得てプライベートスペースである寝室に上がると、サムはベッドの上に物を広げていた。ありがとう、と答える彼にマグを渡しながらちらりと視線をやる。それはどうやら写真や書類、手紙などのようだった。その内の一つに、今より少し若そうなサムが写っている。
「騒がしかったと思うけど、呼ばなきゃよかったって思ってない?」
勧められてベッドに腰掛けながら、スコットはそう問いかけた。サムは一度きょとんと目を丸めてから、ハハと笑う。
「いや。むしろ雑用させて悪いと思ってるぐらいだ」
「お宝発掘みたいな感じで楽しかったさ」
「なら結構。来てもらって助かったよ、ホント」
「騒がしいぐらいが、気が紛れるから?」
つい口から言葉が零れ出て、しまったと思った。余計な一言だった。
「
……
アンタ、結構鋭いよな」
ぴたり、と動きを止めて、気まずいような、困ったような、諦めたような、少し失敗したような笑みを浮かべる。ごめん、とスコットが言うと、ふるりと首を振る。
「アンタみたいのに来てもらえて良かったよ、アリさん」
サイドボードにマグを置いて、サムはベッドに広げたものに視線を落とす。その横顔を眺め、そして置かれたマグと、自分が今持っているマグを見る。一人暮らしには少し多い食器。どこかその中から浮いたような、それぞれ少し趣味の違うマグカップ。
「
……
そのマグカップ、誰の?」
ふ、と顔を上げてマグカップを見て、懐かしむように笑う。
「これは、スティーブのだな」
「そっか。じゃあ
……
俺が今使ってる、これは?」
「俺の、元相棒の」
もう一度、スコットは自分の手の中のマグカップに意識を戻す。サムの「元相棒」の話を詳細には知らないが、確か彼がアベンジャーズとして表に出始めた際にどこだか少し質の悪いゴシップ誌にそれっぽい話が載っていた気がした。
一人暮らしのサムの城。それでも、片付ける中で端々にサム以外の誰かの気配があった。彼が読まなそうな本。見なさそうな映画のDVD。クローゼットの奥に仕舞われた、他の家具からは少し浮くクッション。
「別に、全部は捨てなくて良いんじゃないの?」
これは多分お節介だ。なのだけど、どうにも言わずにはいられなかった。
「あー、そりゃそうなんだけど
……
マグは一つでいいし、自分の物だけでも結構な数があるからなぁ」
広げていた書類や写真を集め、トントンと揃えて箱に仕舞う。その中には額に入った写真やトロフィーなどが詰まっている。
「じゃあ、俺がもらってもいい?」
一拍ズレて、サムが驚いたように顔を上げた。
「このマグ。俺がもらってっていい?」
「まぁ
……
いいけど」
「やった! あの伝説のキャプテン・アメリカの私物のマグゲット!」
ちょっと大げさに喜んで見せると、やっと彼は気の抜けたようにふはっと笑った。
「次は、サムがウチに来てよ」
「いいな、それ」
「そしたら、このマグにコーヒー淹れて出すからさ」
「
……
そりゃあ、楽しみだ」
しみじみと噛みしめるような声。いつになるかはわからないけど、本当にそんな日が来たら良いなとスコットは心の底から思った。
「片付けだけじゃなく不用品回収や相談所までしてもらったなら、チップ払うべき? いや、追加料金か?」
懐かしの映画のDVDを見つけて、片付けたベッドの上に並んで座って鑑賞会をする。徹夜はそろそろキツいお年頃だが、まぁ今日ぐらいはいいだろう。
「そうだなぁ
……
じゃあ、かつてキャプテンにも振る舞ったという朝食を、俺にも出してよ」
「あー
……
あの時何出したっけな
……
」
やがて映画が始まったが、不思議なことにクライマックスがどんな話だったかをスコットもサムも覚えていない。朝食はというと、二人仲良く朝寝坊をしてほぼ昼食になった。
「じゃあまた。次はサンフランシスコにおいでよ」
いくつか貰い受けることになった荷物は四人分まとめて配送してもらうことにして、翌日の昼過ぎにスコットたちはサムの家を出た。
「ああ、ぜひ。その日が楽しみだよ、スコット」
見送るサムの顔は、幾分かスッキリした様子だった。
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