ortensia
2026-04-02 02:40:36
2052文字
Public 傭リ
 

謎時空よーり。ウォ…パロ(???)リに妹が居る、妹が傭と喋る。

ウォルターには妹がいたので。結婚式知識は皆無です。

 傭兵は文字通り雇われ兵士だ。とはいえ依頼内容によっては兵士ではなくなんでも屋と言っても良いだろう。それにしても。
 それにしても、だ。依頼内容が「結婚式に出てくれ。」とは、これ如何に。なんともこき使ってくれると言うか、安全な仕事を回してくれたものだと言うべきか。何せ平和な話題である、何と言っても政治絡み家柄絡みとは関係のない話なのだから。
 つまり、無茶ではないが不思議な依頼である、ということだ。というか、そもそも傭兵に依頼する話ではない。それこそなんでも屋に頼めば良い話である、勿論傭兵以外の。
 ただ、依頼主は傭兵の知り合いだった。それどころか惚れた弱みがある。
 だからこそ無茶だろうが不思議な内容だろうが受けたわけだが、なんでも屋であろうとも不思議だろうよ。結婚式に出てくれ、だなんて。
 サクラをやれということでもないらしい。何故なら結婚式を挙げる新婦は、依頼主の実妹だ。
 ならば本来普通に出席の立場だろう、ああその都合が付かないのか、それにしてもただ欠席を伝えれば良いだけなのでは。傭兵が探偵でなくてもそう疑問に思う。
「わたしは親族に嫌がられていますので。」
 新婦の兄はそう、何処を見るともなしに、あるいは何処か遠くを見るように、そう言った。それでも妹との仲は悪くないらしく、だからこそここには招待状が届いたのだが。
 それで傭兵は、好いた相手の妹の結婚式に出席しているというわけだ。
 新郎新婦の知り合いじゃないのに、そんなところに行って良いのかと訊ねれば「招待状さえあれば身分を保証されますので。」とのことで、詳しい属柄や関係を詮索されることはないらしい。
 先ず傭兵は、結婚式に来賓するための衣装を用意された。受付で招待状を見せ祝電を渡すこと、引き出物を受け取ること、係の者の案内に従うこと、食事は周りに合わせること。後はタイムテーブル通りに進むらしい。引き出物とやらも食べ物だったら自分もご相伴に預かりたいな、などと考えた。
 式は厳かなシーンもあれば、口笛が吹かれるシーンもあった。傭兵は全て、黙って見守った。場違い感は充分に身に沁みていたが、れっきとした仕事であることと、新婦の兄の顔が頭にちらつき、その思いでなんとか場を凌いでいた。
 新郎新婦が寄り添って歩くライスシャワーは、勿体なく感じたが、それが平和を表しているのだと納得した。
 そんな中、何事にもアクシデントは付きものとは言えど、ブーケトスが中止になったらしい。結婚式なのだから、そのどのタイムスケジュールも一大イベントだろうが、中でもブーケトスはそれに当たるのではないだろうか。それが中止らしい。
 代わりに繰り上がった歓談と軽い立食の時間が広まり、新郎新婦両名からの注目が薄れた。食事をしても良いのかと落ち着かない気持ちになったところで、そっと新婦が一人で近寄って来た。
 霧のように軽い足取り、一筋縄ではいかない、兄に良く似ていると思った。
「兄さんは元気にしているでしょうか。」
 話し方も似ている。
「あんたの結婚式に出られない点で言えば、元気がなかったな。」
「貴方は面白い人ですね。」
 面白いことを言ったつもりはなかったが、返す言葉も、らしい言葉遣いだった。
「これを兄に。」
 差し出されたのはブーケだった。このためにブーケトスを中止にしたらしい。
「承った。」
 ブーケを預かっても、新婦はまだそこにいた。こちらをじっと見ている。
「その青いハンカチは兄が?」
 胸ポケットに畳まれて入れられたもののことだ。奴が選んだのはそれどころか祝電に至る迄全てだが、問いに頷いて返す。
「絶対に使うなと言われたがな。」
 新婦はうっそりと微笑んだ。
「くださいな。」
 この場の主役に、ひいては奴の妹に言われ、断る理由もなかった。
 ブーケの代わりに差し出した青いハンカチは、花柄の刺繍だ。
「兄さんをいつまでも退屈させないであげてくださいね。」
……努力はする。」
 新婦は短く声を上げて笑った。
「花束を持っていると、以後は目立ってしまうでしょうから、もうあちらからお帰りください。」
「え。」
「兄さんはそれでは怒りませんよ。」
 それに、と続ける新婦には、食事に未練を向ける傭兵の滑稽な姿が見えていた。
「引き出物はお菓子ですから、そちらをどうぞ。」
 そう言って新婦は去って行った。仕方なく、傭兵も式場から去る。引き出物が食べ物だと明かされて帰され、それはありがたく受け取るとするが、式の料理も食べたかった。
「ご苦労様でした。お腹空いているでしょう。」
 しかし一仕事終えて依頼主のもとへ戻って傭兵は、さもお見通しとでも言うような、依頼主の手による料理でもって迎えられたので、式場なんかよりよっぽど親しみのある場所と相手と共に食事を楽しんだ。
 食卓には新婦のブーケが飾られ、兄はそれを見て微笑んだ。傭兵の依頼はこれにて完遂された。料理の後には、引き出物のお菓子も待っている。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。