ortensia
2026-04-02 00:50:55
1850文字
Public カトマク
 

カトマク(?)

サイボーグのこととか世界観とか全て胡乱です。ふわっと読んでください。モブが出ます(?)。よろしくお願いします。

 カートは昨年のマックスの誕生日のことを覚えていた。否、マックスとの思い出なら、カートは誕生日でなくても覚えている。マックスのような宇宙軍フレームのスペックがなくても、カートが個人的に、人として、マックスとのそれらを忘れない。
「ピニャータやってみたいんだよね。」
「なんそれ美味いの?」
「食べ物じゃないよカートくん。」
 マックスがカートの返答にくすくすと笑う。ちょっと何言ってるの、あなたいつも食べ物のこと考えてるの、やだカートくんってば食いしん坊。マックスの説明でカートが理解出来たのは、ピニャータとは誕生日に割る馬型のくす玉らしいということ。
「お馬さんじゃなくても形はなんでも良いらしいよ?」
 兎に角マックスは誕生日プレゼントにピニャータが欲しいらしかった。正しくはピニャータは誕生日祝いの催しの一部に過ぎず、誕生日プレゼントではないのだが、マックスは敢えてカートには告げなかった。
 ピニャータは色んな星のものを輸入して寄せ集めたみたいな大型の店にあった。あったというか、正確にいうとなかったので、カートが店員に話すと取り寄せられるとのことだったのでそうした。ゴツい無愛想なサイボーグが「ピニャータないんすか。」と店員に向かってきいてくるので、最初はビビり上がっていたはずの店員は「アンタんなもん欲しいのか!」と笑いながら請け負ってくれた。
 そしてカートは取り寄せてもらった馬型のピニャータと受け取ると、いそいそと持ち帰った。割れたら二人で写真でも撮ろう。マックスなら器用に割るかもしれない。
 ピニャータは、壊す、否、割ることを前提として作られたものだけあって、カートが運んでいてなんだか頼りない感じのブツだった。もっと厳重な梱包にした方が良いんじゃないか、ジェラルミンケースとか、こんな大きなサイズがあるのかは知れないが、というかそれだと梱包材の方が金がかかりそうだ、そもそも発想が職業病すぎだ。
 あぶない。マックスの誕生日は仕事のことも忘れて祝おうと、二人で休暇を取ってあるのだ。そんなせっかくの日に物騒なアイテムのことを考えては台無しだ。
 ところがそれ以上に台無しなことが起こった。
 マックスの誕生日当日、部屋の天井の照明に、なんとかピニャータを引っ掛けたところだった。その際に勢い余ってカートはピニャータを押し潰した。カートの手で台無しにしてしまった。
 ひしゃげた馬の中から紙吹雪がはらはらと溢れて、カート、そして本日の主役としてピニャータをその手で割る筈だったマックスへと降り注ぐ。
 壊れそうだ壊れそうだとカートも分かっていたのに、マックスの誕生日プレゼントだった、のに。
 うわどうしよう、カートは思ったが、ピニャータは完全に変形しており、不恰好と注釈があったとしても、とてももう馬には見えない形になれ果てていた。
「ごめん。……あー、ごめん。うわーごめんごめんごめん。」
 カートは思わず無惨な姿となった、というかカートがそうした、ピニャータを見ていられなくて目を眇めていたが、惨状を確認しないわけにもいかず、どうにか挽回出来ないかと思ったところで、見れば見るほど手遅れで、そのどうにもならない事実を認識する度に謝罪を重ねた。
 だけど一部始終見ていたマックスは笑い出した。スピーカーがノイズ混じりにガビガビ言うまでの、大笑い。
 狼狽えていたカートも、マックスの笑い声で、ひらひら舞い落ちる紙吹雪と共に、段々落ち着きを取り戻して行った。
「マックス、ごめん。プレゼント。今直ぐ用意出来る何か、教えて?」
「良いって、良いって!俺言ったじゃん?」
 ピニャータの形はなんでも良い。
「既製品じゃなくて、カートが手を加えてくれたこの形が俺は良いよ。」
 マックスはそう言って、自身が落書きしたマックスの上着を軽く叩いた。
 それが昨年のこと。カートは今年も店でピニャータを注文する。
 以前の店員の姿は見られなかったが、カートは既にこの店でピニャータを取り寄せられることを知っている。積み重ねが大事なのは仕事だけではない。おっと、また職業病を発症してしまうところだ。
 あぶない。今年も二人で休暇をとっているのだ。
 そして今年のカートはピニャータの強度を充分理解している。正確な力加減で持ち帰り、天井からぶら下げられる筈だ。
 今年もマックスが笑ってくれる、大切な日々になってくれれば良い。そうやってカートは、紙吹雪の中のマックスを何度でも思い出す。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。