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2222(にし)
2026-04-01 21:27:41
1102文字
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はじめては、何度でも
#nkzik_drawwriting【第65回】はじめて の投稿作品です。
はじめてその武器を見た時から、私はそれの虜になっていたのかもしれない。
様々な暗器を学ぶという授業で、私の目を奪ったのが縄鏢だった。どの先生が扱っていたのかは忘れたくせに、まるで生き物の如く動く縄と、陽光に翻る鏢の煌めきだけは頭の中に強く焼き付いている。
授業が終わるなり、見様見真似で手製の縄鏢を作った。ありあわせの縄、木片を削っただけの急拵えの鏢。あまりにお粗末な出来だったと記憶しているが、はじめて手にした縄鏢は私の心をこの上なく高揚させた。
⋯⋯なめしていない縄を使うと、手指が傷だらけになることを知れたのもいい経験だった。
本物の鏢に近いものを作りたくて、用具委員会⋯⋯特に留三郎には世話になった。
しかし木も鋭く削りすぎれば肌を裂く。深い傷を作ると高熱が出ることをはじめて知った。
適性のある武器は他にもあったかもしれない。では何故私は縄鏢を手放さなかったのか。
──はじめて、本当に初めての一投目が、的に当たってしまったから。
できるようになったことは数あれど、あれに勝る手応えを、私は未だに感じられていない。
あの嬉しさをもう一度得たくて、私は縄鏢を操っているのかもしれないな。
「⋯⋯もそ」
「へえ〜、中在家先輩が縄鏢を使い始めたのはそんなきっかけがあったんすねぇ」
「ところで、その縄鏢でどうして潮江先輩と七松先輩をぐるぐる巻きにしておられるのですか⋯⋯?」
「もそ⋯⋯!」
「確かに、図書延滞の常習犯なら容赦不要です!」
「あはは、でしたら今日の委員会は延滞図書の取り立てからですかね。じゃあ行こうか、三郎!」
「待て待て待て。みんな普通に委員会活動をはじめようとしているが、僕には『もそもそ』しか聞こえなくて全然わからなかったぞ⋯⋯?」
「えっ? それはまあ僕たちも、中在家先輩がなんでいきなり『はじめて』の話をし始めたのかわからないけど⋯⋯」
「いや雷蔵、そこじゃなくて」
「もそ」
長次は少しだけ視線を逸らし、縄の端を指でつまんだ。
「はじめて、だ」
「はい?」
「はじめて、一度で二人まとめて捕まえられた」
一瞬、図書室に沈黙が満ちた。
「えっ」
「そこなんですか⋯⋯?」
「いやいやいや、さっきのいい話はどこ行ったんですか!」
「というか俺たち実験台か!」
「なー長次、私そろそろ塹壕掘りに行ってもいいか?」
「もそ」
ぎゅ、と縄がわずかに締まる。
「やめろって! 締めるな!」
「もそ」
「おっ、長次嬉しそうだな!」
──あの時の一投目には、まだ及ばないが。
それでも、胸が少しだけ高鳴った気がした。
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