ortensia
2026-03-29 23:51:11
1211文字
Public 傭リ
 

謎時空オカルトファンタジー?傭リ+庭と納。死ネタ(庭)。騎士とお姫様の話。

庭←リ描写あり※殺意
切り裂きジャック事件の被害者のうち、別件だろうと言われている人物に、エマという人が居たとか。

 騎士は姫を守っていた。何から。毒の実、いいえ。悪い継母、いいえ。怖い魔女、いいえ。大きな竜、いいえ。醜い蛙、いいえ。身勝手な王子、いいえ。姿の見えない殺人鬼、さあて。
 それはともかく、プリンセスをその鎧の背に庇う騎士に対峙する小男は、鉄の肘当てくらいしかその身以外に頑強な部分はなさそうだった。だからと言って騎士は相手に容赦しない。そもそも騎士が情けをかけたことなどあっただろうか。
 騎士に比べて大した体躯もしていない小男は、その上騎士ほどの鎧を一揃えも纏っていなかった。強いて言えば、腕に鉄の肘当てを付けている程度の、ほぼ生身だ。
 しかし男にはそれで良かった。相手に合わせて使い勝手の悪いものを一々身に付けるのは、性に合わない。
 騎士は男が思っていたよりも、鎧を身軽に着こなしていた。更にはトリッキーな動きで型破り。もはや騎士道を忘れたのか、元からだと言うのか、あるいは庇ったプリンセスのために騎士道を捨てたとでも言うのだろうか。そのどれであろうと、そのどれでもなかろうと、男には知れないし興味もない。
 ただ男は騎士に言うべきことがある。ただそれを伝えにこんなひとけのない林まで踏み入って来た。
「姫はもう死んでいる。亡霊をおまえがいくら背に庇ったとて、もうその娘はおまえと木枝で遊んではくれないぞ。」
 騎士ははっとした様子で、自分の背に庇っていたはずの娘を振り返った。
 そこには変わり果ててただ青白いだけの姫君の姿があった。彼女は既に幽霊。ゴーストプリンセスであったのだ。
 騎士は呆然としたまま、その場に根を張ってしまったかのように動かなくなった。そうして物言わずじっとしていると、まるで敗戦者の武具を木に引っ掛けたトロパイオンのようだ。
 男はゴーストプリンセスを、彼女の家に連れ帰った。彼女の家、彼女の王国では、彼女の葬儀が、姫自身をずっと待っていた。
「硝子の棺か。」
「彼女の家族の希望で。」
 姫を待っていた棺を整えた納棺師は、男と共に葬儀の始まりを見守った。
 鉄の肘当ての持ち主は傭兵だ。空っぽの棺の、主を連れ戻すのが仕事だった。
「あの騎士はお姫様を失ってどうなったの?」
「どう?どうって?」
 納棺師の、さして興味もないであろう問い掛けに、傭兵も気のない返事で応える。わざとらしく肩を竦めるさまは、はぐらかしている様子だ。
 物語の結末に関心のない納棺師は、そのまま会話を終わらせた。唯一納棺師が関心を向ける葬儀の始まりへと、彼は視線を戻す。一つの命の終わり、それを受け入れる生者の儀式、その始まりだ。
 その横にはもう傭兵の姿はなかったが、納棺師はそれすらも、興味がない。もう、解決したことだ。
「トロフィーは勝者のものだろう?」
 傭兵は物語を終わらせるため、あるいは続けるために、騎士の佇む林へと戻った。
 騎士と傭兵は、林の中でいつまでもいつまでも暮らしましたとさ。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。