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tachi_aoi_0615
2026-03-29 22:39:05
1054文字
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御手
かしへいワンドロ第二回参加作品
「どうか、僕を断罪してはいただけませんか」
俯いて肩を縮こませる姿は、なんとも憐憫を誘うものだ。
もう子供ではないはずなのに
――
伊東は胸の中でそう呟いて、目の前にいる愛弟子にかけるべき言葉を思案した。
「貴方の手が僕に触れるとき、本当に幸せで、いつだって涙が零れそうになるんです。ですが、そんなことは許されません。だって、僕は
……
」
「藤堂くん、僕は神様ではないよ」
伊東は人差し指でそっと藤堂の口を塞ぐ。
柔らかな感触が、指先にかすかに触れた。
「んむ
……
わかっています。それでも、僕にとっては
――
」
藤堂は自身の唇を閉じている伊東の指を両手で包みこんで、口からそっと離した。
「ほかでもない君にそう思われるのは、なんだか寂しいな」
伊東は目を伏せて呟く。
――
僕が悲しそうな顔を見せれば、この子は苦しむとわかっている。
「伊東先生
……
」
藤堂はただでさえ大きな目を更に見開き、それから眉尻を頼りなく下げた。
「申し訳ありません。伊東先生にそのような顔をさせてしまうなんて
……
」
伊東は、藤堂が自分の言動ひとつひとつに一喜一憂する姿に、何度も優越感を覚えてきた。
そんな人間らしい利己の塊の、一体どこが神様だというのであろう。
「僕は神様ではない。だから、懺悔する必要なんてないんだよ」
伊東は優しく藤堂に語りかける。藤堂がそれに頷くのを見て、心からの微笑みを見せた。
――
この声も、笑顔も、君のためのものだ。
裁くだなんてとんでもない。むしろ、まだ恋も愛もわからぬ子供を籠絡しようとしているこの身こそ、断罪されるべきなのかもしれない。
先程、もう子供ではないと思ったばかりなのにな。
大人と呼ぶにはこの子はあまりにも無防備で、子供と呼ぶにはあまりにも多くを背負いすぎた。
思考が、酷く鈍って仕方がない。
いくら学びを深めようと、人間なんて恋着の前にはこんなものだ。
「僕はね、君がここにいなければここへ呼ばれてやるつもりなんて
……
ひとつもなかったんだ」
伊東は藤堂に真実を告げた。ゆっくりと、言葉を重ねていく。
「そう
……
なのですか?」
「うん、そうなんだ」
驚く様子を見せる藤堂に、伊東は大げさに頷いて見せた。
――
本当に、僕が神様だなんてとんでもない。だけど、もし君がそう思うのならば
……
君をこちらまで手招きしてあげよう。
「そうだ。知っているかい、藤堂くん。僕は君を
――
ひとりの男として好いているんだよ」
だから
――
こちらまで、手を伸ばしてごらん。
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