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【dcst夢】Voyage

dcstスタンリー夢。夢主視点・スタンリー視点。夢主と龍水の関係について
夢主名と愛称変換可。変換しないとデフォルト名になります。メインキャラには愛称で呼ばれます。

エレンエレオノーラエレオノーラエレンエレンエレオノーラエレンエレオノーラエレオノーラエレンエレンエレンエレンエレンフリーデルエレオノーラエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレオノーラエレンエレンエレオノーラエレンエレオノーラエレンエレンエレンエレンエレンエレオノーラエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレン 彼に話せる内に話した方がいい。そう思っていてもなかなか踏み出せないものだ。
「恐れ入ります、エレン様。以前に七海財閥主催のパーティに出席されていましたか?」
 切欠があればと思った矢先に彼の執事にそう声をかけられて、エレオノーラは彼……七海龍水を真っ直ぐに見据えたのだった。

・・・

 エレオノーラは宇宙飛行士として決まった三人である千空、コハク、スタンリーとその補欠要員の龍水と水中訓練の補佐をし、今はその休憩中であった。
 訓練場所から小型船で離れ、陸に戻った時には龍水君の執事であるフランソワさんが温かい飲み物を用意してくれていた。
 私が作った葛根湯も準備して貰えたのでありがたく頂いた。
 地面に敷かれた大きめのシートの上で、各々が飲み物を手に座る。
 自然と、右隣にスタンが座ってきた。私と同じ葛根湯を選んだようだ。身体を温めるには丁度いいよね、葛根湯。
 凄い顔して飲んでるけど。変わらずストイックだね。
 そう思って私の向かいに座っている龍水君を見る。彼が選んだのはブランデーのお湯割りだ。強いのかな。
 その左隣に、千空君とコハクちゃんと並ぶ。彼らはホットレモンジンジャーを選んでいた。
 そうしてほっと一息ついた時。
 私はフランソワさんから冒頭の台詞を掛けられたのだった。
「フゥン?貴様が?」
「まあね」
 自分の家の話を出された龍水君がちゃんと食いついてきた。スタンも興味有りげにこちらを見てきた。
 ちなみに今までの会話は英語だ。コハクちゃんは部分的に理解しているようで、聞き取れなかった部分は千空君に確認していた。
「仕事でか?」
「そう」
 この面子で私の仕事が民間軍事会社経営かつ司令官だと知っているのはスタンだけだ。ガンスミスはその一環である。
 また傭兵と言われるのも何なのでここはさっさと切り上げることにする。
「仕事のお礼で主催の誕生パーティに呼ばれた、それだけだよ」
……それだけのはずがなかろう」
 そう。龍水君の言う通りそれだけではない。とはいえ七海財閥側の意図は知らない。
「うん。その前に一つお話してもいいかな。少し長くなるよ」
 私にとっては龍水君を自分の目で一目見られたらそれで良かったのだ。私の大事な人の心残りである彼を。
「私のお祖父ちゃんの話」

・・・

 お祖父ちゃんには妹さんがいたんだ。
 身体が弱くてね……結婚して娘さんを産んだけれど産後の肥立ちが悪くて、そのまま儚くなってしまったんだ。
 その妹さんの旦那さんはお祖父ちゃんの友人で同じ軍、当時だと海兵隊員で、戦場から帰って来なかった。
 お祖父ちゃんはお祖母ちゃんと相談して、妹さんの娘さんを引き取った。
 私のお母さんと変わらず自分たちの娘として育てたの。
 お母さんは本当は従姉妹だけど、姉妹同然だと言ってた。私にとっても叔母さんだよ。
 その叔母さんは貿易会社に勤務してて、世界を回っていたの。
 その中に日本もあった。
 日本の仕事で海運会社の七海財閥と関わるようになって、そこの御曹司に見初められた。それだけなら良かった。
 御曹司は既婚者だった。勿論、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは二人の仲を反対した。
 私が三歳くらいの時だったかな。叔母さんがお母さんとお話していたのをなんとなく覚えてる。
 子どもが出来たって聞いたそれが姉妹の最期になるなんて思ってなかった。
 叔母さんはアメリカを離れて日本の神奈川で子どもを産んだ。お祖父ちゃんの妹さんに似たのか、産後の肥立ちが悪くてそのまま……ね。
 子どもは御曹司の弟さんが引き取ったところまでは知ってる。
 その人からお祖父ちゃん宛に連絡があったんだ。お祖父ちゃんは反対した手前、それ以上何も聞けなかったって。
 叔母さんの遺灰を送ってくれたのが、七海財閥と関わった最後だったと。

・・・

……
 私の話を聞いた龍水君はその目を見張る。彼にとって初耳のことばかりだったに違いない。
「つまり、龍水とエレンは血縁関係にあると言うことか?」
「ちゃんと英会話理解してんな。そういうこった」
 英語で長めの話だったからか、コハクちゃんは千空君にところどころ確認しながらきちんと理解してくれていた。
「あのジジイの血縁……道理でな」
 どうやらスタンの中でお祖父ちゃんと龍水君との関係に納得できる何かがあったらしい。何だろう、聞いてみたい。
 フランソワさんは龍水君を優しく見守っている。
「名乗り出るのが遅くなってごめんね」
 世界石化後、私が復活し龍水君と出会ってからもう二年近く経過している。
 本当はお祖父ちゃんから話すべきだと思う。
 けれど、未だ石化した私の家族は誰一人として見つかっていない。そして現状、また世界の石化が起こる可能性も孕んでいる。
 石化した人間は風化してしまったら復活させることが出来ない。
 私の家族がそうなってしまっている可能性もある。生きていると信じているが不安も勿論ある。そして、これからの私達もそうならないとは言えないのだ。
 だから、今しかないと思った。
 話すにあたり気掛かりだったのは龍水君の心情だ。彼から見て産みの母である叔母さんのことをどう思っているのか分からなかったから。
 問題ないと背中を押してくれた陰の立役者であるフランソワさんには後でお礼を言おう。
 今の龍水君からは驚きと困惑の匂いがする。ここまで口を挟まず聞いてくれたが、どう来るだろう。
「謝るな。貴様も俺にどう言おうか悩んだだろう」
……ん。ありがとう」
 気を遣われてしまった。
「聞きたいことは山程あるが、まずは主催の誕生パーティに呼ばれたと言ったな」
「うん」
 主催は言わずもがな龍水君のお父さん。呼ばれたイベントが誕生パーティだったのは単に直近で呼べるのがそのタイミングだったのだろう。
 時が経ち過ぎると呼びにくくなる。
 誰の意図かは知らないが、七海財閥側としては私より龍水君を引っ張り出すのに苦労したんじゃないかと思う。
 彼は本家の人間ではないのだから。
 まあそれも有能な執事さんなら朝飯前か。
 龍水君は思い返していたようで、数秒考え込んだ後に指を鳴らした。
……あの時か!すまん、貴様に気付かなかった」
 彼の知らないことだ。仕方がない。
「私としては龍水君を一目見られればよかった。気にしないで」
……
 私がそう言うとスタンがちょっと機嫌悪くなった。何で?
「お祖父ちゃんにも、龍水君が元気にしてるって伝えられた。本当はお祖父ちゃんから話せたらよかったけど」
 ……話せる機会があるか分からないから。
 その言葉は飲み込んだが周りには伝わった。少し沈黙が走る。
……なら、その為にもホワイマンと決着つけねえとな」
「そうだな!」
 沈黙を破ったのは千空君とコハクちゃんだ。
「ジジイの小言が懐かしくなってきたぜ」
 いつの間にか煙草を吸い始めたスタンは憎まれ口を叩いた。お祖父ちゃんと仲が良いのか悪いのか。
エレンの祖父はスタンリーとも知り合いなのか?」
 疑問を口に出したのはコハクちゃんだ。
「軍関係でね。お祖父ちゃんは軍医だから」
「あー、だからお前やたら医療知識豊富なのか」
 それが適当なのでそう告げたが、納得した千空君と違い龍水君は納得出来なかったらしい。
「どうもそれだけのように見えんぞ」
「色々あったんよ」
 スタンが簡素に返事をする。話すと長くなるので切り上げてくれた、が。
「俺にとっても祖父にあたる人だ。ジジイ呼ばわりは解せん」
 嬉しい言葉だ。お祖父ちゃんに聞かせてあげたい。
「ありがとう、龍水君。スタンの呼び方はデフォみたいなものだから気にしなくていいよ。お祖父ちゃんも気にしてないから」
 何せお祖父ちゃんもスタンにジジイって呼ばれて怒るでもなく普通に返事をしている。
 私が軍に入る時に揉めた際、スタンがお祖父ちゃんを説得したと聞いているが、何を話してこうなったんだろう、この二人。
 二人とも男同士の話だって言って教えてくれなかったんだよね。
「随分あっさりと受け入れたな、龍水」
 スタンの感想は私の感想でもある。龍水君の器の大きさが窺い知れた。
「驚きはしたがな。俺にとって信頼出来る家族が増えたのは僥倖だ」
「へぇ?」
 何だろう、スタンが龍水君に突っかかってくる。引っかかるものあったかな?
 家族、か。
「血筋上では私と龍水君は再従兄弟だけど、気分的には従兄弟だよ。私も信頼出来る家族が増えたのは嬉しい」
「はっはー、そうか!」
 龍水君が満面の笑みで答えてくれた。その後ろに佇むフランソワさんも笑顔だ。
「フランソワさん、ありがとう」
「恐れ入ります」
 フランソワさんは会話に参加してはいなかったが、ずっとこちらを見守ってくれていた。その間にさり気なくカップを片付けられたあたり手際が良すぎる。
「本当に……ありがとう」
 今話す機会を与えてくれたこと。パーティの際お膳立てをしてくれたこと。
 何よりも、龍水君の側にいて支えてくれたこと。
「過分なお言葉でございます」
 フランソワさんはこの一言で込めた想いをちゃんと受け取ってくれた。
「恐れながら、一つだけお願いが」
「?」
「私のことはフランソワと。敬称は不要です、エレオノーラ様」
 主である龍水君の血縁者を愛称で呼ぶ訳には行かないと言うことだろうか。
 そう言えば科学王国のみんなにフルネームで名乗った覚えがない。ゼノが最初に私のことを愛称で告げていたようで、初めからみんなエレンと呼んでいた。
「それが貴様の本来の名か」
「うん。家族はみんな名前で呼ぶけどね、長いから愛称で問題ないよ」
「フゥン?」
 龍水君は顎に手をあて、ニヤリと笑う。
「なら俺は現在、貴様をエレオノーラと呼べる唯一の男ということだな!」
「あ?」
 右隣からドスの利いた声が飛んできた。ああ、口元の煙草がひしゃげている。何でそんなに機嫌が悪いのか。
エレオノーラ
 そんなスタンの様子を気にせず龍水君が私を呼んだ。
「俺にも敬称はいらん」
……分かった。龍水、フランソワ。改めてよろしく」
 慣れなくて辿々しい呼び方だったが、二人は快く受け入れてくれた。
「ああ」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
 二人の笑みに私が笑い返せないのが申し訳ないが、きちんと伝わったみたいだ。
 心残り一つ、減らせた。
「叔母さんにも良い報告出来そうだよ」
 私がそう言うと、コハクちゃんが首を傾げた。
……?墓でもあるのか?」
 その疑問は最もだ。かつての旧世界から三千年以上も経過したこの石の世界ではお墓も自然に還ってしまっている。
「叔母さんの遺灰は七つに分けて海に散骨したんだ」
 難しい英語部分があったようで、コハクちゃんは千空君に聞いていた。
 スタンは私が海上での任務の際、海に遺灰を撒いていたのを知っているので、あん時か、と納得していた。
「どうして七つなんだ?」
「旧世界では海は七つに分類されていたんだよ」
 コハクちゃんに簡単に説明する。
「北太平洋、南太平洋、北大西洋、南大西洋、インド洋、北極海、南極海だな」
 私の説明に千空君が追加してくれたので、頷いておいた。
「海が好きな人だったから」
 海に散骨を提案したのはお祖父ちゃんだ。アメリカの大地で眠るより、好きな場所にいた方が良いだろう、と。
 北太平洋と北大西洋はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが。二人が行けそうになかった他の海は世界を回ることが多い私が散骨した。
 五大洋ではなく、七つの海としたのは。
……そうか……
 龍水の声が震えている。俯きながら瞳を閉じ、その拳はぎゅっと強く握られていた。
……
 恐る恐る、手を伸ばし龍水の固い拳に触れる。きっとお祖父ちゃんならこうしただろうと思ったから。
 少しでも、伝えられたかな。お祖父ちゃんと叔母さんの想い。
「もしお祖父ちゃんに逢えたら。龍水の船に乗せてあげて」
「無論だ」
 触れた手は拒絶されることはなく、逆に龍水の固い拳は開かれて私の手を握ってくれた。

・・・

 スタンリーはひしゃげて吸い終わった煙草を携帯灰皿に入れて、追加の煙草にマッチで火を点け吸い始めた。
 訓練では火に弱い素材もあるので煙草の頻度は抑えていたが、今は吸わなきゃやってらんねぇ。
 龍水にジジイとの関係を話し終わったエレンは、自身の訓練道具の整理をしてから、宝島の通信を持ってきた向こうのソナーマン羽京に呼ばれて石神村へと戻って行った。
 そしてこちらも残った全員で手分けし訓練道具の片付けを終えたところだ。
 千空はゼノと共に月面ロケットのクラフト、コハクは戦闘訓練のためそれぞれこの場を離れて行った。
 俺は先程の話を噛み砕きながら一服。
 まさか、エレンと龍水が血縁とは。世の中狭いもんよ。
 驚いていないと言えば嘘になるが、同時に納得もした。二人とも、エレンの祖父、あのジジイに似てやがる。
 見た目で共通しているのは三人揃って金髪で……ジジイは現在白髪だが……瞳の色が赤みを帯びていることだ。金髪の中で色素が一番薄くかつ瞳も一番赤みが強いのはエレンだ。
 そして感覚。ジジイは五感が強く、エレンは触覚と嗅覚に特化しているが他も通常の人間より鋭い。龍水も船乗りとしての感覚に優れている。
 顔は全員似ていないが、血筋だなとは思えた。
「フランソワ」
「はい」
 龍水がやり手執事に声をかけ、執事がそれに応える。
「誰の差し金だった?」
「龍水様の叔父様でございます」
「フゥン、どんな意図かは分からんが……悪くはないな」
 フリーデル家側の事情を知っているのは龍水の親父か、龍水を引き取ったという叔父だろうから想像に難くねぇ。
「私は、エレオノーラ様の民間軍事会社を叔父様の命令で調べておりました」
 フランソワのその発言にはよく無事でいられたモンだなって感想だ。何故かと言うと。
「ですが、上から圧力がかかりました」
「何?」
 やっぱりな。そして二人揃ってこっち見んな。聞かれるんは知ってたぜ、でないとイチイチ英語で話さねぇだろ。
「政府だろ」
 エレンの民間軍事会社は民間を謳っているのにCIAの息がかかっている。エレン自身から聞いたことはないが、政府からするとどうもエレンの存在は公にしたくないらしい。過去にもそう思える事がいくつかあった。
 旧世界で、自身の理想を否定し自由研究することすら阻む権力者を疎んだ親友。世界の不平等を嘆き権力に自由を縛られ世界が平らになればいいのにと言った愛しい存在。
 俺にとって大事な二人の願いは共通していた。旧世界のことはどうでもいい。もう過ぎた話であり時効だ。
「たかが民間軍事会社を調べるためだけに政府が横槍を入れてくるものか?何がある?」
「そこまでは知らねぇよ」
 苛々する。何も知らず血の繋がりだけでズカズカ入り込むコイツに、俺が知り得なかったエレンの事情があることに。
 それだけじゃ、ねェ。
 一目逢えれば良かっただの、信頼出来る家族が増えただの。現在エレンの本来の名前を呼べる唯一の男だの。
 人に触れることを苦手とするエレンが龍水には手を差し出したのも。
 俺が欲しいと願うエレンの家族という立ち位置をあっさりとかっさらった龍水に嫉妬している自分に苛立つ。
 ニコチンが足りねぇ。一本あたりの燃焼時間が少なすぎる。携帯灰皿に吸い終わった煙草を普段より強く潰し入れてから、新しく煙草を準備した。
 肺に煙を多量に送り込む。頭が冷えてきた。
「そうでございますか。ですので、私は家名からエレオノーラ様を辿りました」
 七海財閥は海運、エレンが海運に関わることが出来る仕事は海賊もしくはそれらに扮した人身売買カルテルの壊滅あたりだと考えると、海軍あたりから探ればエレンの祖父であるジジイに辿り着くのは容易かっただろう。CIAもそこは見過ごしたのか、見逃したのだ。
「パーティの際、御祖父様も一緒であれば良かったのですが」
「何、エレオノーラから話は行っているのだから構わん。ところでスタンリー」
「何だよ」
「祖父はどのような人物なのだ?」
 どのような、か。俺に聞くなよ。
「何で俺に聞くんよ。エレンに聞け」
「それは後で聞くがな。貴様も聞いていただろう?先程の祖父の話でエレオノーラが祖父を慕っているのがよく分かった。客観的な為人を聞いておきたい」
 確かにその通りだ。エレンのジジイへの慕い方は半端ねぇ。人によっちゃジジイの人格や行った事は盛ってるように聞こえるだろうが、全部事実なのが恐ろしい。
「あー、まず元ネイビーシールズ将軍、現在軍医と異例の経歴持ち。特殊部隊総合にも関わってたから軍全体での顔が広い」
 関心した様子の龍水とは逆に、フランソワは表情が動かなかった。すでに知ってただろうしな。
「常に冷静でストイック、有言実行。エレンが言うには、エレンを守ると言ってそれをこなせる完璧ジジイ。けっこうキツめの葉巻吸ってんな」
 あと知っている限りのジジイの情報はないかと頭を絞るが出て来そうにない。代わりに思い出したのは。
エレンの好きなタイプはジジイみたいなヤツだとよ」
 エレンから初めてそう聞いた時は人として軍人として俺はまだまだ足りねぇとしか思わなかったが、ジジイの為人を知ってからは完璧超人すぎてどんだけ理想高ェんだよハードル上げんな、と思ったもんだ。
 俺も軍所属だった時に部下や周りに完璧超人と言われていたもんだが、ヤツらに言ってやりてぇ。
 あのジジイ見てから言えよと。
 何だよ。主従揃ってぽかんと口を開けてんよ。こそこそと日本語で何話してんだ?この二人。
 主従は何かを話し合った後、龍水は満面の笑みでこう答えた。
「はっはー、ならばエレオノーラの将来は安泰だな!」
 何をどうしたらそんな返答になんだよ。ジジイは将来エレンより先にくたばるだろうが。
「俺は貴様を応援しているぞ!」
 ぱん、と軽快な音を立てて両肩を龍水に叩かれた。
「は?」
 話が見えねぇ。何でジジイの為人からエレンの将来安泰と俺の応援になんよ?
「何が言いてぇんかさっぱりだが、あのジジイ船に乗せんならしっかり操縦しろよ」
「当然だ!貴様も楽しみにしておけ」
 また両肩を叩かれた。俺も乗る前提かよこいつは気遣われたな。
 ま、エレンと乗る船旅は悪くねぇ。エレンがトラブルメーカーなので何かしら起きるだろうが。
 まずはエレンと家族にならねぇとな。
 さてどうエレンに分からせてやろうか。はじめにまた外堀から埋めて行くか、ゼノにも意見を聞こう。
「スタンリー、悪い笑みになっているぞ」
「失礼だぜ、元からだ」
 吸い終わった煙草を携帯灰皿に入れる。新しく取り出すがこいつが箱内ラスト一本か、けっこう吸っちまったな。
 次はストレス解消ではなく景気よく一服。
 吸っていると、龍水から拳が突き出された。お前なら出来ると言いたげな顔だ。
 龍水なりに応援してくれると言うならこちらもそれに応えるまで。
「やれるか?」
「できるね」
 突き出された拳を拳で叩く。
 望みの船旅、叶えてやろうじゃん。
 エレンのためにも俺のためにもなり、俺らの関係を一番に気に掛けていた親友が喜ぶ。これ以上ない結果だ。
 なら後は突き進むのみ。
 懸念事項は沢山あるが、何が来ようがやってやんよ。
 煙をゆっくりと口腔内へ吸い込み味わい、肺へと送り込んでから少しずつ煙を吐き出した。
 ラスト一本、エレンとのこれからを想った一服は、今日吸った中で一番味わい深いものとなった。