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紫輝
2026-03-29 12:20:09
6571文字
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リオヌヴィ
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シールド強化∞%
共闘するセスリ殿と先生が見たいっていう欲に本能的なお餅を焼くヌ様を添えました。セスリ殿と先生洋画みたいな粋なやり取り絶対似合うよなっていう夢を見ています。ずっと。格好いいと格好いいが合わさったらそれはもう洋画みたいな格好いいになるんですよ…
あとね…リオヌヴィを見守る帝君が…好きすぎて…いっぱい浴びたい…
※弊ワットの先生はリオヌヴィを年下の親戚(年下の同族とその婿)扱いしています
岩でできた拳が壁を殴る重い音が、不規則なリズムで辺りに響く。微動だにしない壁
――
煌めく玉障の反対側で、リオセスリと鍾離は顔を突き合わせていた。
「予想以上に厄介だったな」
「ああ。『場』と『時』が上手く噛み合ってしまった結果だろう」
揃って見やった先では複雑な紋様が輝いている。鍾離曰く、「
璃月の術と稲妻の術
見慣れた術と見覚えのある術
をスメールの技術で繋ぎ合わせているように見える」。ついでにその術を動かしているのは多少古いがフォンテーヌの機構のようにリオセスリには見えるので、
…
要するに数カ国の叡智を結集した訳の分からない何か、というのが二人の出した結論だった。
元がなんのための装置だったのかは見当もつかないが、どうやら元素が豊富らしいこの場所で長らくそれを溜め込んだ謎の機構が、一行が足を踏み入れたことで再稼働したらしい。奇妙な紋様の彫り込まれた壁に、床に、白い光が走ったかと思うと、床の一部が崩落したのだ。まるで組み上げられていたパズルが崩れるように。
飛び退る間もなく奈落に呑まれ、リオセスリのナックルによる風圧と鍾離の玉障で互いに命を拾ったのが少し前、岩人形の軍団に襲い掛かられてこの場所に籠城して今に至る。機構の心臓部と思われる「訳のわからない何か」のところに真っ直ぐ辿り着けたことだけは幸いだったかもしれない。
テイワットに数ある遺跡の先行調査。それが今回旅人の受けた依頼だった。深部の元素濃度が尋常ではない、これは並大抵の冒険者では調査すらままならないし発掘隊が足を踏み入れるのはもっと不可能だ、というのが冒険者協会の見解で、キャサリンから名指しで依頼されたのだという。調査対象が『遺跡』であること、高い元素濃度へ対応可能であることの二点を満たすという理由で鍾離とヌヴィレットが、入り口がマシナリー仕掛けの門で封鎖されていた事からその方面に明るいからという理由でリオセスリがそれぞれ協力の打診を受け、当該遺跡へとやってきて現在に至る。
床が抜けた事で吹き抜け状になった上階はとてもではないが登って上がれる高さにはなく、地上へ戻るには別の
――
正式な、のほうが表現は近いだろうか
――
ルートを探す必要がありそうだった。
「
…
で、ここまで来たからにはアレは停止させるべきだと思うんだが。鍾離さんとしてはどうだい?」
まあ確実に壊すことになるだろうが
――
ちらと機構に目をやりながら首を傾げれば、鍾離も倣うようにそれへ視線を流す。
「俺も同感だ。技術的・歴史的な研究資料として有用で貴重な遺構ではあるだろうが、放置しておけば秘境の周囲に危険が及ぶだろう」
「この状況で現場を保全しながら初見の仕掛けを壊さず止めるってのは流石にな」
「せめて丁寧に壊すとしよう」
決まりだな、と首肯しあって、リオセスリは自分達を囲む玉璋を見回す。
「方針が決まったところで次だ。あのよく分からん何かを丁寧に壊すにあたって、いい考えはあるかい? 俺に考えつくのは正面突破なんだが」
狭くはないが極端に広いとも言えない空間だ。こちらは二人。例えば一人が岩人形達を攪乱して機構から引き離している間に
――
という作戦はあまり効果がないように思えた。ならば戦力を集中し、迅速に発生源を叩く方が良いのでは。考えを述べたリオセスリに、鍾離の首肯が返る。
「そうだな。陽動そのものは難しくないだろうが、場が狭すぎる。引き離したところで奴らの防衛エリアから機構周囲が外れるとは思えない。幸いコアが露出した造りになっているようだから、そこを突けば制圧は容易いだろう。機構からの補充速度にもよるが不可能ではないと思う」
狙いやすい場所だしな、と鍾離が示したのはその胸元だ。確かに岩人形達の胸元には山吹色の石が填まっている。岩元素力が濃い部分なのだろう。
「元素視覚やらセンサーが必要ないなら俺にもなんとかできそうだ。あとは何発殴れば砕けるかだが」
生憎ピッケルの持ち合わせはないからコレでなんとかするしかないんだよな。ガシャンと鋼鉄の拳を鳴らせば、岩人形へ向いた鍾離の黄玉が煌めく。
「俺の見立てでは」
「ああ」
「石珀程度だな」
「おっと、そいつは骨があるなぁ
…
」
今すぐあと一個だけ石珀が欲しくって
――
いつだったか探索の最中に旅人たる少年に両手を合わせられ、まあ岩石だしなと軽い気持ちで挑んだ、璃月の鉱石の目を見張る堅さを思い出す。何度か試して、あの時は結局岩元素には岩元素をぶつけるのが効果的なんじゃないか、と、少年本人の岩元素力で採取したのだった。そんなモノが相手となるとどう考えても「制圧は容易」いとは思えないのだが、目の前にいるのは鍾離だ。何か彼にしかない特殊能力があるのだろう。
「石珀が相手なら、ますますピッケルもダイナマイトもない俺は戦力にはなれなさそうだ。俺が脚を破壊して、鍾離さんがコアを叩く、でいいかい?」
「うむ
…
いや
…
君の戦闘力を足払いに使うのは惜しい」
「鍾離さんにそこまで買ってもらえて嬉しいね。ナックルにドリルでも仕込んでおけば良かったな」
見たところコア以外の部分は一般的な石材だ。脚を砕きその動きを止めるくらいならできるだろう。提示した作戦に予想外に思わしくない反応を返してきた鍾離は、柳眉を寄せて何やら思案している。
「ドリルが不要になる方法があるにはあるが
…
君に使ってよいものか」
「あんたがそんなに躊躇するようなヤバい方法なのか?」
やがて顔を上げた鍾離が口にした思案の種に首を傾げた。手が二倍になるなら使わない手はなさそうなものだし、リオセスリとしてもきちんとした戦力になれるならばそれに越したことはないので。
「ヤバい」ものではないのだが
――
小さく唸る鍾離の歯切れは、彼らしくなくいまいち良くない。
「簡易的な眷属契約を行い俺の権能を一部貸与する。効果は長続きせず、切れれば痕跡は残らないし、体質にも影響はない」
俺の力は元素に対する高い防御力と岩元素への干渉を可能にする。これと君の戦闘力を利用すればコアを砕くのは容易だろう。
『方法』の中身を聞いて、なるほどなぁ、とうなずく。確かに鍾離の指先ひとつで石珀の表層は砕け散っていた。その力を借りられるのなら、ピッケルもドリルも不要だろう。しれっととんでもないことを言われているがそこは気にしない。何せ人の身で水龍サマのつがいなんてものをやっているのだ。トンデモ能力にいちいち驚いていては身が持たない。
「良いことづくめに聞こえるが、
…
ああ
…
」
ところで鍾離の中で何が引っかかっているのだろうか。聞いた限り何も問題点は見当たらないけれども
――
一瞬悩んで、彼が『リオセスリに対する』力の行使を躊躇っていた事に気づいて腑に落ちた。鍾離が気づいたかと言わんばかりに遠くを見つめて、目を伏せる。
「うむ
…
龍種にとってつがいやそれに準ずるものに対するこの手の業は禁忌だ。確実に、あの子が、怒り狂う」
「だろうなぁ
……
」
しっかりはっきりと文節を区切って言い切る鍾離に、思わず笑みを漏らしてしまった。最愛の龍は犬や猫や仙霊相手にも可愛らしく妬いてくれる。作法を心得ているはずの同種に、理解の上で禁忌を破られたと知れば間違いなくご機嫌を損ねてしまうだろう。
「この点に関して俺が何を言ったところで濁流に岩を投げ込む結果にしかならないだろう。あの子が万が一君にその力を振るうことがあれば障壁くらいは作れるが」
「余計怒るだろうな」
「うむ
……
」
その職務と性格上、話はきちんと最後まで聞いてくれるひとではあるけれど、龍種の禁忌に触れた場合のヌヴィレットの反応や対応に関してリオセスリには経験が不足している(その方がいいのだろうけれども)。浮気相手に「この人を傷つけないで」と言われるのと同義だろうから、どんな聖人君子でもキレるか引くか冷めるかはしそうだな、と人間の基準で想像するくらいしかできない。
「ちなみに俺が殺される可能性は?」
「殺されるとすれば俺の方だろうな。龍がつがいを手に掛けることはない」
「
…
まああのひとに限って命まで取りに来ることはないだろうが」
「そうだな。あの子は優しい子だ。少々不安になるほどな」
だから君の存在はあの子にとってとても得がたく重要なんだ、と、親戚の顔を滲ませ始めた鍾離の言葉を咳払いで遮ってうなずく。
「分かった。それで行こう」
「いいのか? 合流まで籠城する策もなくはないが」
黄玉を見開いた鍾離が窺うように首を傾げる。この障壁が破られる可能性は万に一つもない。恐らくこちらを目指しているはずの旅人やヌヴィレットが合流してくれば戦力も跳ね上がり、より効率的かつ確実に機構を止めることができるだろう。確かに籠城も有効な策ではある。が。
「姫君の如く引きこもってるだけってのは格好悪い。お互いそんな柄じゃないだろ?」
なあ、岩王帝君サマ。
ここに落ちて二人とはぐれてからそこそこ時間が経っている。きっと心配させてしまっているだろう。早く無事だと伝えたいし、貴金の龍と水龍のつがいが揃って壁の内側で身を寄せ合っているなどあまりにも格好がつかなさすぎる。最悪愛しのつがいに幻滅されてしまうかもしれない。それだけは避けたい。
にっ、と口角を上げてみせれば、鍾離は楽しげに喉を揺らした。
「それはそうだ。
…
やはりあの子が選んだ男だな。もっと早く会いたかった」
「おっと、浮気の教唆はやめてくれ」
それからゆるりと瞳を細められるのには小首を傾げ肩を竦めて応じる。
「純粋に得難い友人を得たことに対する喜びを表しただけだ。
…
手を出してくれ、リオセスリ殿」
今度こそ声を上げて笑った鍾離の手のひらで岩元素が編み上がっていく。まるで玉障を飾る見知らぬ文字達が何か文章を作っているようだった。それがくしゃりと集まって、見慣れた岩元素の文様が浮かび上がる。
「それを聞いて安心した。あんたとあのひとの喧嘩なんて誰も止められないだろうからな」
促されるまま差し出された手を文様ごと握手の容量で握ると、身体の中を何かが巡っていくような不思議な心地がした。
「
…
これで終わりかい?」
「ああ」
ぐっぐっと拳を握り直して首を傾げる。例えば濃いめの紅茶や強壮剤を飲んだときのように何かが強化されたような感覚はないが、身体の周りには岩元素を示す雄黄色の光が浮かんでは消え、浮かんでは消えしていた。使い方は氷元素を使うときと同じらしい。乱暴な言い方をすると効果が発現した瞬間に岩元素に干渉するから、殴る瞬間に力を出せばいい、そうだ。わかりやすくていい。
玉障がするすると解けていく。
視線を交わし、お互い得物を手にして。
「それじゃ、しばらくの間よろしく頼むよ、我が主」
「君こそやめてくれ、あの子に怒られてしまう」
くつくつと笑い合って、岩人形の群れに向かって地を蹴った。
◇
甚だ失礼な話ではあるが、岩人形達を掻い潜り機構を“丁寧に壊し”て合流を果たしたヌヴィレットの反応は身構えていた二人に反して静かなものだった。
ぶわりと噴き上がった怒気がヌヴィレットの周囲を揺蕩い、空気に溶けるように消える。それからそのかんばせに浮かんだのはひどく寂しげな、今にも泣き出しそうな表情で、思わず伸ばしかけた腕はすんでのところで押し留めた。指の先を黄玉の欠片が掠めたからだった。
効果が切れるにはもう少し時間がかかるのかもしれない。この状態でヌヴィレットに触れるのはあまり、というか結構よくない、気がしたので。
「鍾離殿」
「ああ」
「
…
貴殿の判断に感謝を」
「
…
いや。俺は取れうる最善の策を提示したまでだ」
目礼を受け止めた鍾離はゆるく首を振り、互いに怪我がなくて何よりだった、と穏やかに紡ぐ。そうだな、と呟くように答えたヌヴィレットは旅人へ目を向けた。
「すまないが、二人にして欲しい」
目的語は省略されていたけれども、察しの良い少年はわかったとうなずき鍾離と連れ立ってその場を離れていった。
二人になった空間で、さて、と思案する。
ひどく落ち込んだ様子の彼をすぐにでも抱きしめたいが、相変わらず己の周囲には黄玉の欠片が飛んでいる。効果時間を確認しておくんだったな、と今さら後悔した。例えばこの時点であと三十分後、なんて言われても頭を抱えただろうけれども。
そもそも悲しげなヌヴィレットを前に三十分どころか一分一秒だって、何もせずにいるなんてリオセスリにはできないのだ。
「ヌヴィレットさん」
「
……
うん」
「あんたのしたいようにしてくれていい」
人智を超えた業をなんとかできるのは人智を超えた存在だけだ。であればリオセスリが気を揉むよりも、ヌヴィレットの良きに計らってもらう方が早くて確実だろう。
彼に限って、とは思いつつ“物理”が来ることを警戒して心持ち腹に力を込めさせてもらったところで、すまない、と小さな声が聞こえて。
ざっ、と水が降った。バケツをひっくり返したような雨、というか、前触れなく頭上に滝が出現したような。大量の水が持つはずの圧を感じなかったのは流石の御業と言うべきか。
圧はないとは言え思わず瞑っていた瞼を上げると、視界の端で煌めいていた岩元素の光が消えていた。ついでに汗や土埃なんかも洗い流されたのか妙にさっぱりとしていて、便利なもんだなと呑気に思う。ついつい両手を見下ろしておおと呟いた辺りで、腕の中にヌヴィレットが飛び込んできた。ぎゅ、と細腕に抱き締められる感覚。同時に肌に張り付いていた服がさらりとした感触を取り戻して、どうやら水分を飛ばされたらしいことに気づく。
肩口で深く呼吸するそのひとの背中に手を添えてもお咎めは飛んでこなかった。効果持続時間の早回しには成功したようだ。
「
…
無事でよかった」
「心配してくれてありがとう。この通り無事だ」
くぐもった声が聞こえて、額を擦り付けられた。猫みたいだな、などと思った事はもちろん胸に秘しておく。一頻り「すりすり」してひとまず気が済んだのか上がった白皙は、なんとも説明の難しい表情を浮かべていた。
「鍾離殿の事だ。その業がどういったものなのか、君に説明はしたのだろう。荒事に対する君の諸々の判断を、私は信頼している。結果として君はこうして無事でいるわけだし、この件に関して私が
抱
いだ
くこの
…
怒りや悋気とも言える感情を君や鍾離殿に向けるのは間違っているとわかっている」
わかってはいるが、やはり面白くないし些か悲しい気持ちはある。
君は私のつがいなのに。
むすりと不満を紡がれるのに、ゆるんでしまう表情を誤魔化すべく白い頬に己のそれを擦り寄せる。公平の写し身のような彼が、自分に関する事柄にだけ見せる悋気が可愛らしくて嬉しい。
「ごめんな。次は自力でなんとかできるように鍛え直すよ。あんたのつがいの名に恥じないように」
勿論只人の身に限界はあるが、只人っぽくない只人くらいなら目指せるのではないだろうか。すべすべとした頬の感触を楽しみつつ鍛錬プランを練っていると、ぱっと顔を上げたヌヴィレットが次、と呟いた。眉を寄せ、思案顔で黙していた美貌から「うむ」の二文字がこぼれる。彼の中で何かが決まったらしい。
「次がないのが最善ではあるのだが、」
ぐ、と肩に力がかかり、耳元に吐息が落ちた。耳たぶが瞬間ひんやりと冷える。
「次は、私の力が君を護る」
「龍王様の加護か。心強い」
どうやらピアスに口付けたらしいヌヴィレットの決意の籠もった囁きに嬉しいよと返せば、何故か彼ははっとして、それから困ったように眉を下げ。
「その
…
先ほどの術の構成要素の大半は君を護りたいと望む私の
願い
ひとりよがり
だ。君が望むなら正式な加護を、」
おろおろと、大真面目に、あまりにも可愛いことを口にするので。
取り繕うこともせず吹き出して、痩身を思いきり抱き寄せた。
「ヌヴィレットさん、知ってるかい?」
愛の力ってのは最強の盾って言われてるんだぞ。
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