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2026-03-28 23:07:13
3734文字
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燭鶴「マッサージは健全、たぶん」
燭鶴版深夜の創作60分一本勝負 お題「ツボ/たたかう」
煩悩と闘ってる光忠くんが見たくて誘惑したい鶴さんと、格好つかないのでそれに抵抗したい光忠くんが足つぼマッサージでわちゃわちゃしてる話。
奔放な鶴さんと、鶴さんには結局敵わないな〜となってる光忠くんのいつもの感じです。
「光坊、」
入浴を終えて部屋で二人で過ごしている時に、鶴丸が出し抜けに希望を口にした。
「きみにマッサージをされたい!」
あまりに脈絡のない発言だったので光忠は一瞬混乱した。マッサージか、と分からないまま内心で頷く。何か理由があるのかな、と考えてみる。
「鶴さん、どこか痛いの?それとも、疲れてる?」
「いやいや、俺は至って健康健全。だが、きみにマッサージをされてみたい。正確に言えば、俺をマッサージする光坊を見たいんだ」
「
……
?」
にこやかに言う鶴丸に光忠は首をひねった。疲れや痛みはないけれど、マッサージをされたい、というのは分からなくもない。リラックス効果もあるし、そうやって甘やかされたいということもあるだろう。
けれど、マッサージをする光忠を見たいというのはどういうことなのか。
「いや、もっと正確に言えば、だ。きみが煩悩と闘っているところを見たいのさ。よくあるだろう?恋人をマッサージしてやったらその恋人が悩ましげに声を漏らすから、だんだんムラムラしてくるというお決まりの展開が」
「よくあるって、鶴さんはどこでそういう知識を仕入れてきてるのかな」
「苦情はすけべ審神者に言ったほうがいいぞ。ま、それはともかく、だ。俺はそういうわけできみにマッサージをされたい。光坊の手に触られるのは好きだしな」
鶴丸の言い分は突拍子もないし、当然のようにこちらが煩悩と闘うことになると想定されているのにはかなり異論がある。けれど、この手に触られるのが好きだと言われるとつい嬉しくなって、あっさり彼のお願いに応じる気分になってしまうのは我ながらちょろいかもしれない、と光忠は思った。
「まぁ、
……
うん、えっちな展開とかそういう、ね?そういう鶴さんの動機はともかく
……
、鶴さんがマッサージされたいなら、しようか。実際、最近の鶴さんは出陣してばっかりだから疲れもたまってるかもしれないし」
「おっ、そうこなくちゃな。光坊は話が分かる良い子だ。よろしく頼むぜ。ただし!俺がされたいのはひとまずマッサージだけだからな」
「あはは
……
、僕が煩悩と闘う前提なのやめてほしいかも」
「おいおい、俺が悩ましげに声を漏らしているのを聞いてきみは平気でいられるのかい?」
「
……
」
得意げな調子で鶴丸に問われて、光忠は黙った。そう言われてしまうと確かにあんまり平気でいられる自信はないかもしれない
……
。
「ま、できるだけ我慢するんだな。光坊の煩悩との闘いを俺に見せてくれ。どこをマッサージするかは任せる」
そう言われた光忠は少し考えて、足つぼマッサージをすると返事をした。というのは、肉感が薄めな足裏だったら煩悩をあまりくすぐられることなく、闘いに勝てそうな気がしたからだ。
鶴丸に敵わないのはいつものことだが、煩悩と闘うところが見たいと楽しそうにあけすけに言われてしまっては少々格好がつかない。誘惑に負けない格好のついた自分を見せたいのだ。
だいたい、別にいつも鶴さんの誘惑に負けてるわけじゃないから!と光忠は心の中で誰かに大声で言い訳した。今日は絶対に健全にマッサージだけで触れあいを終えてみせたい。
「足つぼか!いいな、横になったほうがいいかい?」
「うん、そうだね、そのほうが鶴さんの体勢が楽かも」
布団を部屋の一角に敷いて、鶴丸はそこへ仰向けに寝転んだ。光忠はその足元に正座して、膝の上に彼の片足を乗せる。手袋を外して色の白い足先に触れた。やわらかで皮膚の薄い足裏。
「きみの手はあたたかいなぁ」
「鶴さんの足が冷えてるんだよ」
しばらく足の指を握ったり揉んだりしてやってあたためる。血行がよくなってきたようで、はじめより鶴丸の足はあたたかくなった。
「じゃあ、マッサージしていくよ」
光忠が足裏のつぼを押した。身体のケアとしてマッサージは少し興味があり、書籍をいくらか読んだことがあるのでつぼについて光忠は多少の知識があった。
ぐ、と親指がやわらかい鶴丸の足裏に沈む。
「ぎゃ、ぁ、?!」
鶴丸が潰れた悲鳴を上げたので光忠は手を止めた。
「大丈夫?」
「待て待て、さすがに力加減おかしいだろう、足に穴が空くぞ」
「そんなに力入れてないよ?効いてるのかもね?」
効いているならいいことだ、と微笑んだ光忠はまたずらしてつぼを押した。
「んぎゃ、っ、!」
鶴丸がまた悶えているけれど、気にせずぐいぐいと足裏を押していく。
「痛、?!ちょ、っ、ストップ!
――
っ?!」
「ここは背中だね。凝ってる?」
「待っ、ァア゜ーー!?」
「ここは胃かな?今日のご飯、重かったからちょっともたれてるのかな」
光忠が遠慮なくつぼを押していくので鶴丸は何度ももがいていたけれど、仰向けの状態で足を持ち上げられているという体勢が抵抗に不利なのか、光忠への制止にはなっていなかった。
「ちょっ、
――
っ、タイム!待ってくれ、あいたっ!痛いっぎゃア、?、!」
「ここはなんだったっけ
……
、忘れちゃったけど、きっと鶴さんの身体はすごく疲れてるみたい」
「痛い痛い痛い!?!」
光忠のマッサージに身をよじりながら耐えている
――
耐えさせられている
――
鶴丸の漏らす声は悩ましげというよりは半分悲鳴で、しかしそれはそうと光忠は少し得意げな気持ちになっていた。
鶴丸が自分の手技でヒィヒィ言っているのは、彼が誘惑したがっていたことへの意趣返しになっているように感じて、したり顔をしてしまう。主導権を握っているようで楽しい。悶えている鶴丸はかわいいし、そういう様子を見ているとなんだかこう
……
、どきどきと何かが高揚するような感覚がした。
「っ悪かった!マッサージとか言った俺が悪かったから、光坊!」
「はい、反対の足もするよ」
「ぎゃぁ?!待っ
――
っ、!!?」
そうやってたっぷりと時間をかけて両足の足つぼマッサージを終えたら、悶え疲れた鶴丸はくったりとしていた。身をよじっていたせいで寝間着の浴衣がはだけている。
それを整えてやろうと光忠が身を乗り出したら、脱力してほてった表情の彼を目が合った。かわいいが九割、かわいそうが一割。
「ちょっとやりすぎちゃったかな」
「本当にな
……
。今も足の裏が変だ
……
、俺はきみに優しくされるほうがいい
……
」
「あはは、ごめんね」
大袈裟にしょんぼりして見せる鶴丸に光忠は苦笑した。つい、主導権を握っているのが楽しくてやりすぎてしまった自覚はある。よしよし、と頭を撫でてやったら、彼はそれを大人しく受け入れて一呼吸置くと、撫でられながら続けた。
「まぁ、だから
――
、このあと優しくしてくれるかい?光坊」
「
……
?
……
あっ、えっ、でも、今日はマッサージだけって鶴さんが」
鶴丸の言葉は明らかにこれより先の触れあいを指している。けれど自分は煩悩に負けてはいない、平気、と光忠が首を振ったら、鶴丸は起き上がって目を細めた。
「おい光坊、いくらきみが堅物だったとしてもこんなに俺をしどけなくしておいて、これで終わりってことはないよな。据え膳を食え、据え膳を」
こちらをじっと見る鶴丸の瞳は、悶えた余韻なのか威勢のいい言葉に反して普段より淡く潤んでいて、光忠はどきりとした。据え膳は、それは確かに、いつでも頂きたいけれども。
「えぇっと、それは
……
、その
――
、うん、
……
えっと鶴さんは、さっきの痛いマッサージの何が良くて、そんな感じなのかな?」
「俺が泣きわめいても容赦しないきみに興奮した。そういう光坊にそうやってひどくされたあと、優しくされたい」
なぁ、いいだろう?と、するりと鶴丸の手が光忠の頬を撫でる。その手つきにはすでにいつもの彼の余裕が戻っていた。しかし、その余裕があることで、先ほどまで光忠の手によってこの人がひどく乱れて
――
健全なマッサージなのだけれど
――
いたことが際立つような気がした。
そう、確かに先ほど光忠はこの手で鶴丸を身悶えさせていた。そうやって彼を乱している時、確かに自分も興奮していたように思う。マッサージに喘ぐ鶴丸を見ていた時の高揚感は、たぶん興奮だったはずだ。
そのことを思い返して、彼をまた乱してやりたい、と思う。今度はつぼ押しの痛みではなくて、優しい甘さで、触れ方で。自分の手で乱れているこの人を見るときだけに満たされる欲があるから。
「な、光坊、」
頬に触れられたまま囁くように名を呼ばれる。その声音は誘惑に満ちていて、光忠は脳内で白旗を上げた。今夜は健全な触れあいだけと決めたけれど、それは撤回。降参。敵いません。
「分かった、鶴さん、痛くした分、たくさん優しくさせてくれる?ううん、優しくさせて」
「そうこなくちゃな、俺の誘いに乗ってこそきみだ。おいで、かわいい光坊」
鶴丸の誘惑という煩悩との闘いは、今晩も光忠の負けである。
しかし、光忠はそれで構わなかった。なぜなら、鶴丸を悶えさせることができるのは、それが許される関係にあるのは自分だけで、その事実だけでたぶんあらゆることに対して勝っているから!
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