ぽふむん
2026-03-28 22:30:00
2045文字
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天獄の白蓮

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

ちび鬼飼育if
「桃源郷」「夜桜」
エロくはありませんが、ちょっと配慮が必要な表現(童磨の宗教➕幼い時にグルーミングをされていたのでは?と仄めかしてます)があると思いますのでご注意ください。

極楽教って、大人達の築いた勝手な理想郷、桃源郷なんだろうな……と思ってます。
そして、大人の童磨もどこか明らかに子供っぽい。
上弦会議時……あれ、チビ童磨が「ねぇ〜」と絡んでいる……と変換してみてもなんの違和感も感じないよなぁ……と思いまして。

ちなみに、即身仏というのは、平たく言えば餓死でミイラ化した遺体の中でも御本尊として祀られたものの事です。



月明かりに照らされ、必勝と名付けられた桜が妖しく薄紅色に浮かび上がる。
必勝は、自分を見上げる幼い少年を睨みつける。

何故お前がここにいる

そう言うように。

でも、その体には不釣り合いに重そうな唐風の墨染の法衣を着た少年……いや、まだ少年とも言えない年頃の幼児は、桜からの拒絶を一切気にしていない。

ただ手酌で盃に、水のように澄んだ液体を手酌で注ぎ唇を湿らせていた。
盃の中の液体が月を映す。

まだあどけない年頃なのに、にこりともしない。
不気味なほど、人形のように硬質な表情で、その水面の月を見つめた。
幼児の肩越しに少女の顔が映った。
不動明王か羅刹女か。
怒髪天をついている。

幼児がやっと頬を緩め、本当に心からの笑顔で振り返ったその時

ごち~ん☆

幼児の頭頂部にゲンコツが落ちた。

「こらぁ!貴方まだ五歳のくせにお酒なんか飲むんじゃありません」

そう叫び、少女は幼子の両頬をつねりあげた。

「いひゃい。いひゃいよ。ひほぶひゃん」
幼児は抗議の声をあげた。

「あら、あなた鬼だから大して痛くないんでしょ」
しのぶはそういいながら手を離すと、酒を幼児から取り上げた。

「鬼にしてもらって百年以上。見た目は五歳でもうちの宗教上は二十歳。子供じゃないもん」
幼子はつねられた両頬をさすりながら言った。
「それに、人だった時もよくこうしてほろ酔いにさせられていたって言ったでしょ」

そういいながらその場で、軽いステップを踏むようにしながら幼児はくるくると回転し始めた。
舞っている。

ほろ酔いになった状態で、クルクル回転すれば目が回る。
そうして、ある種のトランス状態にさせて託宣をする。
まだ人だった時。まだ本当の子どもだった時、親からやらせられていたこと。

その託宣の内容は、事前に親から仕込まれていたという。

「天から米が降ってくるぞよ……金が降ってくるぞよ……愚民が天に、貴種が地下に落ちるぞよ……まーえ舞えかたつーむーりー」

歌うように幼児はクルクルと回転する

幼い頃に強制されていたことを再現しているのだ。
本音では、ここの大人達は馬鹿じゃなかろうかと思っていたくせに

見るに堪えない。しのぶはその体を抑え止めた。
幼い童磨はコロンと頭をしのぶのひざに乗せた。

「イイコイイコしてくれるの?いいよぉ♡……これで信者からお金貰えるとね、父上がねぇ『 よく出来ました』ってなでなでしてくれたなぁ。全身」

童磨の父親は、幼い童磨に対して反吐が出るような行為をしていたらしい。
そうして手懐けていたらしい。

それは、鬼を使役する前。事前の聴取で散々聞いた事。

「知ってます。もういいです」
しのぶは吐き気を堪え幼い童磨の口を塞ぐ。
そうしなければ、生きていけなかったことを無邪気に語ることに虫唾が走る。
それは、幼い身を守るための生存本能みたいなものだった。
親の言うことだから素直に聞く。
そうすれば両親は機嫌良かったから。
皆機嫌良かったから。

この幼子の家は、何らかの宗教を背景にした、藩政に不満を抱く者たちの桃源郷だったらしい。
土着の宗教に、潜伏キリシタンの教えやら色々。自分たちの都合の良いように解釈した教えだ。

そんなとき、とんでもないレベルの飢饉がやってきたそうだ。
童磨の両親は錯乱状態で死に至ったそうな。
大正の御代に生きるしのぶにはわかる。
それは極度の低栄養状態から発生した惨事だということを。
周りの大人も、自分達が生き残る事に必死だったそうだ。
自分たちの理想の桃源郷の長だったはずなのに、その遺児に一切の配慮がなかったらしい。
それはそうだ。

元々の村落の規範を守ることができず、反発し理想論だけかかげ集まって来たものたちばかりだったから。

まともな理性のある大人などいなかったのだろう。

その後、その幼子だけが餓死。即身仏化した。
そしたら、大人たちは他の宗派の真似事で、それを御神体化した。

幼児は永遠の瞑想に入ったとされた。

大人たちの中では「寝ているだけ」と扱われた。

十五年後、藩の役人が乗り込んできたと言う。
そうして大人たちは全員引っ捉えられた。
不穏分子の集まりとして。
でも、童磨の即身仏だけはその場に打ち捨てられた。

特殊な信仰心を持たない者たちにとっては、ただの幼児の即身仏。
即身仏とすら分からない代物だったから。


「黙りなさい」
しのぶはほろ酔いの童磨の口中に蜂蜜をひとさじ垂らした。

ボンッ

破裂音と共に、二十歳くらいの青年の姿に幼児は変化した。

ほろ酔いなのは変わらない。

「しのぶちゃん♡しのぶちゃんもいい子いい子して~ん♡父上みたいに」
「一緒にするな!今はしません。とりあえず寝なさい」
しのぶは、童磨のその癖の強い髪を撫でてやる。

「にゃははははぁ……気持ち……いいね……すぅ……すぅ」

酩酊していた鬼の青年はそのまま眠りについた。