kgsg_hirg
2026-03-28 10:37:37
1504文字
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さらば(行方・小さな)

ワンドロワンライ3/21分

三月は別れの季節。学校では卒業というイベントがあり、ここから卒業生は学校から巣立ってしまう。
つまりは親しくしていた人間との別れ、その現実にどんな行動を起こすのか。
……
直接聞いたわけではない。話題なんてじっとしていてても転がり込んでくるものなのだ。
知っている、俺がこんな感情を持ったところで文句が言えない立場だと。むしろ今誰もが文句を言えない立場だということを喜ぶべきである。
「じゃあお前も告白すれば? 少なくとも告白してる人と比べたら負けてるよ」
辛辣な意見。
わかっている。そう思っていても普通は踏み込めないだろう。ましてや俺は同性で世間的にもまだまだ理解されない。
……同じ好きのはずなのに、なんて言い訳してこの感情の結末を後回しにしているのはらしくないけどれも。
「いいの? もうあとはないよ」
「わかっとるわ」
四月にはもう彼は居ない。OBとして学校に来たりするかもしれないけれど、それも結局俺の願望だ。来ないかもしれない。
恋とは人をこうも苦しめるものなのか。恋煩いなど迷信だと思っていた。
そうしてチームメイトの喝に震える心を殴り飛ばして一歩踏み出み……だそうとしたのが数日前。まさか俺も告白が増えるなんて思いもしなかった。
状況は同じなんだからそうなるでしょ、と呆れた様子でため息を吐いたチームメイトも可愛らしく自身を磨いたであろう三年生の女子に呼び出され、昼飯を食べたタイミングでチームメイトは気怠げに教室を出ていった。
俺もこのままだと呼び出されそうだなと重たい腰を上げて教室をそろりと抜け出して人気が少ない場所を目指す。何も悪いことはしていないのに人を避け隠れるように歩く俺はきっと周りから見たら滑稽だろう。
さてどこで時間を潰そうか、なんて思っていると無意識に一階の三年のフロアまで来ていた。今更上の学年に対して恐怖はないが今日はどうしても心臓がバクバクしてしまう。おおよそ彼のせいだ。
今の自分は少女漫画のヒロインもびっくりなほどに乙女だろう。読んだことないけど。
「治?」
こんなベタな展開があってたまるか。そう思っていてもこのフロアには当然彼が居てもおかしくなくて。
「誰か用か?」
昼休憩なのに他の音が聞こえない。いや、俺が彼の声だけを拾っているのか。
俺の顔を不思議そうに覗き込んでいる彼は自然体だ。……意識しているのは俺だけ。
「北さん」
用。そう、俺は北さんに用があったのだ。
彼の右手を掴んでキュッと握る。きょろりと周りを軽く見渡して人の気配を避けるように彼を引っ張った。
「ここじゃない場所がええです」
目指す場所はそうだな、告白によく使われている場所なんてどうだろうか。
グイグイと彼を引っ張ると手を払うような仕草をされた。ぎゅっと握ることでそれを回避するも鋭い声が飛んでくる。
「先用件言い」
ちょっと怒るような声色だかこれは躾するような声だ。申し訳ないけれども今は反抗させてもらう。
「大事な話です」
離されそうになる手をぎゅっと握り締めて彼と目を合わせる。少し驚いたような仕草で俺を見返すがその瞳は揺れていた。ようやく意識されたらしい。
足早に廊下の端の階段へ辿り着き、人目がないことを確認してから階段裏に引っ張り込む。ぐるんと身体の向きが変わって彼は身体をふらつかせたがすぐに体勢を整える。そして俺の身体がすぐ近くまで寄っていることに気がついて肩をびくりと震わせた。
もう名も知らぬ女子に嫉妬するのも嫌だ。だったらもう仕掛けてやる。卒業しても追いかけてやるからな。
「俺は、北さんのことが――……
さらば、小さな嫉妬心。こんにちは恋心。