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榎本奏江
2026-03-28 09:28:03
1392文字
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ふたさに
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【ふたさに】重ねて待つ
小説未満の小話。今後、漫画or小説になる予定のモノです。
Twitterに上がっていたものを最低限の加筆修正のみです。
突然始まって、途中ではしょったり、突然終わります。
桔梗が同行不可の長期不在で本丸にいないとき、桔梗がいつもいる書斎室に足を運ぶ二筋樋。
いつも座る、日当たりの良い席に向かうように座り、テーブルに突っ伏す。
ここからいつもメガネをかけて静かに読書をする桔梗が目の前にいる。面影を重ねるけれど、本人は居ない。
小さく溜息を吐いて、いつも以上に静かな書斎室で一振いる二筋樋。
『暇だ
……
』と思いながらも、彼女がいないのだから、何かできるわけでもない。指示がなければ何もできない自分にやや嫌気すら感じる。
本棚に目をやると、本を選ぶ桔梗の姿が見えたような気がした。
顔を上げて姿を確認しようとするも、やはり自分の記憶の中の彼女が映し出されただけで、その姿は泡沫のように消えてしまった。
再び深い溜息をついて、記憶の彼女が立っていた場所に立つ。
彼女が見上げていた場所に自分が立つと、見下ろすような形になり、随分身長差があるのだな、と改めて感じた。
彼女が手を伸ばして立ち読みしていた本に手を伸ばす。
どうやら小説のようだった。
裏を見ればあらすじと、当時の本の金額と購入するのに必要なバーコードが記載されている。
あらすじを読むと、どうやら恋愛小説のようだった。
――
あいつ、こんなのも読むんだな。
普段、桔梗が手に持っている本は参考書や図鑑が多かった。
仕事に関する資料や参考文献、もしくは『空』が好きな彼女は、当時の航空写真集や星に関する本を好んで読んていた記憶がある。
だから、二筋樋はここに立っていて、読んでいた本が物語めいた恋愛小説を読んでいることが意外だった。
間違えて手を取ってしまったのかと思い、上下左右の近くの本のあらすじを読んでみても、ここ一遍のカテゴリーが全て恋愛関係の小説だと知る。
本自体に興味はなかった。内容なんてどうでもいい。
ただ、あいつがその本に対して、どうしてあんな風に真剣に読んでいたのか気になった。
後ろ姿とも、横顔とも言えない角度で読んでいた彼女の姿が目に浮かぶ。
ページを少し捲ってみた。
流すように内容を追ってみる。
淡い青空の下、それを覆うように薄紅色の桜の花びらが雨のように優しく降り注ぐ。
亜麻色の髪をなびかせ、彼女は桜の下で待っていた。
声をかけると振り返る。
ぼくを見ると、彼女は幸せそうに笑いかけてくれた。
何がいいのか分からなかった。
途中から読んだせいかもしれない。しかし、最初から読んだところで興味はやはりわかないだろう。
『何が面白いのやら』
二筋樋は小さくため息を吐いて、その本を戻した。
後ろを振り返ると、ガランとした広い空間。
椅子に座って本を読んでいる彼女が一瞬だけ浮かび上がり、やはり一瞬で消えた。
どこを見ても、何を考えてもいない視界に彼女が必ず浮かび上がってしまう自分自身が滑稽に感じてしまう。
どんだけ占めているんだ。いい加減にしろ。
思わず悪態をつく。
それが、自分に対して何か、いない彼女に対しての八つ当たりなのかは見当もつかない。
それでも、残り数日いないのは確定だから、少しでもそんな滑稽な自分と彼女の面影に頼るしかないのかと、思う自分に呆れてしまう。
戻ってきたらなんと言おうか。
『今度は俺を警護として同行させろ』なんて言ったら、あいつはきっと困るんだろうな。
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