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ポほ
2026-03-28 06:13:45
3805文字
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跡取り息子、やめました!?
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恥ずかし椅子
りやめ二学期編第13.5話
別に婦人科の先生は何万人もの女性器を見てきているのに何を恥ずかしがることがあろうかと思うのですが、初めてかかる時はまあ緊張しますよね…という話
月城家にて。
夕方。リビングにはテレビの音がぼんやりと流れている。宗真はソファに座ったまま、どこか落ち着かない様子でスマホをいじっていた。
何度も画面をつけては消し、またつけて
――
やがて、意を決したように顔を上げる。
「
……
あのさ、静姉」
キッチンで手を動かしていた静乃が、振り返る。
「何?改まって」
「二週間経ってるのに、セーリが来ないんだけど
……
オレ、病気かな」
その一言で、空気がぴたりと止まった。
「え!? あんたまさか
……
!? 吉田ァ!」
「へ、ヨツダ今関係ある?」
静乃は一瞬だけ真剣な顔をしたあと、すぐに首を振る。
「
……
いや、そんなわけないか。吉田くんに限って」
「???」
「
……
この際だからちゃんと話しとくけど。妊娠してたら、生理って止まっちゃうの。だから、まさかその可能性はないよね?って心配してたの」
「妊娠したらセーリって止まるんだ
……
。で、どうしたら妊娠すんの?」
「そ、それは
……
したら、よ」
「へ?」
「
……
もういい! 保健の教科書でも見ときなさい!」
ぷいっと顔を背ける静乃。
(この反応なら、少なくとも“その”線はナシとして
……
)
軽くため息をついてから、改めて宗真を見る。
「あんた、そんなに不安だったら病院で診てもらったら?」
「えー
……
。やっぱオレ、病気なのか
……
?」
「病気かどうかは分からないけど。それだって、診てもらったら安心でしょ?」
少しだけ声のトーンを落として、続ける。
「うちの近くに婦人科あるから、行ってきなさい」
「婦人科って
……
行ったことないし、なんかコワいんだけど
……
」
「別に怖いところじゃないわよ。虫歯できたら歯医者に行くでしょ? それと同じ」
「うーん
……
そうなのかな
……
」
宗真はまだ少し不安そうにしながらも、静乃の言葉に、わずかに気持ちが落ち着いたようだった。
(
……
でも、何もなかったらいいけどな)
初めての「異変」に、これまでとは少し違う不安が胸の奥に残るのだった。
そして、病院にて。予約していたのは産婦人科だったらしく、待合室にはお腹の大きい女性の姿がちらほら見える。
(わ、妊婦さんがいっぱいいる
……
)
普段あまり見慣れない光景に、宗真は少しだけ背筋を伸ばした。やがて待合室が混み始めると、一人の若い女性が、空いている席を探して右往左往しているのが目に入る。まだお腹はそれほど大きくない。けれど鞄には、小さなマタニティマークが揺れていた。
(あ
……
)
一瞬迷ったあと、宗真は立ち上がる。
「あのっ! ここ、よかったら
……
」
「いいんですか? ありがとうございます
……
!」
ほっとしたように微笑む女性に、宗真は少し照れくさそうに頭をかいた。
(妊婦さんは大事にしろって、この前静姉に叩き込まれたからな。
……
いいことしたな、オレ)
どこか誇らしい気持ちで、壁にもたれかかる。そうしているうちに、宗真の名前が呼ばれた。
診察室。
「今日は、生理不順?」
(先生が女の人でよかった
……
!)
目の前の女医は落ち着いた雰囲気だが、どこか豪快さも感じる。なぜか宗真の頭の中では、ワ〇ピースに出てくるDr.く〇はのイメージと重なっていた。
「はい
……
」
「どのくらい来てないの?」
「二週間くらいです」
「ふーん。確かにちょっと遅れ気味だね。検査して、ホルモンの注射もしときますか」
「へ、注射
……
?」
「まさか中学生で注射が怖いわけないよねぇ?お尻の方に打つから、ほんとにちょっとチクッとするだけだよ」
「お尻に注射
……
?」
なぜか頭に浮かぶのは座薬のイメージ。
(え、なんかそれ
……
別のやつじゃ
……
?)
「ま、とりあえず検査するから。下着脱いで、そこ座って」
案内された先にあったのは、婦人科の検査で使う内診台だった。恐る恐る腰掛けると
――
ウィーン、という機械音。ゆっくりと椅子が上昇し、自然と脚が開く形になるよう、座面が動いていく。
(うわ、なにこれ
……
)
カーテンが腰のあたりで引かれ、医師とは顔が見えない状態になる。視界が遮られたことで、かえって感覚が研ぎ澄まされる。
(なんかロボットアニメのコックピットみたいでカッコいいけど
……
いや、待て。これ
――
オレ、今かなり恥ずかしい体勢になってないか!?)
状況を理解した瞬間、顔が一気に熱くなる。逃げ場はない。
(うわあああ
……
これ、慣れるもんなのかよ
……
!)
緊張と羞恥と、ほんの少しの好奇心が入り混じる中、宗真にとって初めての婦人科検査が始まろうとしていた。
そして、エコー検査が行われた。宗真はというと、内診の違和感にまったく慣れないまま、ぎこちなく息を詰めている。
(これが婦人科の検査なのか
……
なんか普通に怖いんだけど!)
「いっだぁ!?」
思わず声が漏れる。
(女医さんってもっと優しいもんじゃないのかよ!?)
※作者注:内診は女医の方が力加減が容赦ないことが多い、かも
……
「大丈夫だからね〜」
(大丈夫じゃねえよ
……
!むしろ男の先生の方が優しかったりするのか
……
?いやでもそれはそれで恥ずかしいし
……
!)
そんなことを考えている間にも検査は進む。しばらくして、女医の声が少し落ち着いた調子になる。
「
……
うん。ちゃんと排卵は起きてるし、内膜も厚くなってる。大丈夫だと思うけど、やっぱり少し遅れてはいるね」
「は、はい
……
」
「この感じだと、注射したら一週間以内には来ると思うよ」
「そ、そうなんですか
……
」
(
……
お尻に注射
……
)
じわじわと別の意味での緊張が押し寄せる。
「じゃあ一旦、待合室で待っててね。そのあと注射だから」
「はーい」
(なんだよ
……
どうせならさっさと打ってくれたらいいのに
……
)
再び、待合室。しばらく待っていると
――
「あの
……
」
ふと声をかけられ、顔を上げる。さっき席を譲った女性だった。
手には、このクリニックの一階に入っているコンビニの袋が下がっている。
「さっきはありがとうございました。これ、よかったらどうぞ」
差し出されたのは、鉄分入りの飲むヨーグルトだった。
「い、いえ、オ
……
いや、私はそんな
……
」
一瞬、いつもの調子が出かけて慌てて言い直す。だが結局、軽く頭を下げて受け取った。
「ありがとうございます
……
」
(
……
もしかして、生理絡みで来てるって思って買ってきてくれたのか?
……
めっちゃいい人じゃん)
手の中のヨーグルトを見つめる。
(なんか、いいことしてよかったな
……
帰ったら大事に飲もう)
小さくそう思った、そのとき。
「月城さーん」
名前が呼ばれる。
「は、はい!」
少しだけ気持ちが軽くなったまま、宗真は再び診察室へと向かった。
(お尻に注射か
……
)
身構えていた宗真だったが
――
実際は想像していたものとは全く違い、腰のやや下あたりにホルモン剤を打たれるだけだった。
「あ、なんか
……
あっさりですね」
宗真は思わず処置をした看護師に感想を漏らした。
「
……
もしかして緊張してた?」
「え!? あ、はい
……
!婦人科って初めて来たので、どんなことするのかなって
……
」
看護師はくすっと笑い、優しい口調で続ける。
「生理不順って、結構起きるものだからね。原因もストレスって言われたりするけど、はっきりしないことも多いし」
「そうなんですか
……
」
「特に月城さんくらいの若い子は、生理が始まってまだ間もないでしょ?ホルモンバランスがそもそも安定してないことも多いからね」
「なるほど
……
」
少しだけ肩の力が抜ける。
「でもね、月城さんみたいに若くても、こうしてちゃんと受診してくるのは偉いよ。恥ずかしがって放っておくと、いろんな病気のリスクもあるし。生理不順って、バカにできないんだよ」
「はい
……
」
「将来、妊娠に影響することもあるからね」
(に、妊娠って
……
)
その言葉に、思わず顔が熱くなる。
(オレ、ヨツダと赤ちゃんを
……
?)
ぶんぶんと首を振り、慌てて思考を振り払う。
「なに? 今、気になる相手でもいるとか?」
「な、なんでもないですっ! ありがとうございましたーーっ!」
勢いよく頭を下げ、そのまま慌てて荷物をまとめて診察室を後にした。
そして、月城家にて。
「どうだった?」
「緊張したよ
……
何あの椅子!すげえ恥ずかしいし
……
」
「椅子?」
「そーだよ!なんか股の方見るために脚開かされる椅子みたいなのに座らされてさあ!」
「へえ
……
そんなのがあるのね
……
」
「え、静姉
……
まさか行ったことないのにオレに婦人科行くの勧めてたの!?」
「そうだけど半分は違うわよ!私の友達がかかるの怖がってたからどういうとこか知りたかったの!私はちゃんと生理も来てるし、かかる理由がなかっただけで
……
!」
「でもさ、さっきのクリニックの看護師さんが、『若い子は恥ずかしがるけど、不安があったらすぐ受診した方がいい』って言ってたぞ。妊娠とか、病気にも関わるからって
……
」
「
……
確かに、それはそうね」
少しだけ真面目な空気になる。
「まあ
……
怖かったけど、行ってよかったかも」
宗真は、もらった鉄分入りの飲むヨーグルトを一口飲む。
(
……
ちゃんと知るのも、大事なんだな)
そしてその三日後、無事に生理が来たのだった。
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