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ちよど
2026-03-27 07:57:45
6068文字
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以蔵さんとカルデアの日々
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【番外編】キアラさんとカーマちゃんがチンチロリンでバトルする話
以蔵さんとカルデアの日々シリーズ番外編。pixivより再掲
作中のチンチロリンのルールは以蔵さんのハウスルールです。
サイコロは書きながらダイスメーカーさんで振ったのでこんな結果になるとは思っていませんでした。
地球が白紙化されてもカルデアはサーヴァント達で賑わっている。
昼食が終わり、談話室で子供の姿をしたサーヴァント達を寝かしつけていた岡田以蔵は何故か少女の姿をした愛の神に押し倒されていた。
いつもは以蔵達の他に数人が休憩を取っていたりするが、今は誰もいない。毛布にくるまった子供たちは穏やかな寝息を立てていた。
「私を子供扱いしないでもらえます?」
最近になってカルデア子供サーヴァント組に追加された少女は馬乗りになって以蔵に可愛らしい顔を近づける。マスターが『邪悪なカーマちゃんもかわいいよね』という笑顔に以蔵はこまったように手を彷徨わせた。
少女はくすくすと以蔵の頬をなでる。
「私、愛してあげますよ。あなたの望み通りの愛し方で。あなたひどくされるのが好きでしょう? 分かります。だってひどくされていれば被害者でいられますものね」
カーマの言葉に以蔵は左手で刀の柄を握った。この体勢でも刀は抜ける。マスターにそこそこ強化されている以蔵は人型の同じアサシンなら神だって斬れるのだ。実際、先日のSAITAMA特異点でアラハバキ相手にも活躍した。だけど。
「
…
おんしはキアラの友達やき」
「ハァ!? 私をあんな年増と一緒にしないでくれます!」
「そうですね。私も貴女とは友達ではありませんし」
冷静な声と共に少女の頭に紅茶のポットが置かれる。
「あっっつぃー!!」
飛び跳ねた少女に、ポットを持っていた殺生院キアラは微笑んだ。
「あらあら。物を置くのにちょうどよい空っぽの台があったと思えば貴女でしたの」
「誰の頭が空っぽですか!」
キアラにくってかかるカーマの下から以蔵が這い出したのを確認して、キアラは持っていたトレーにポットを戻した。そこには二人分のティーカップがある。
殺生院キアラはいつものように、子供の寝かしつけが終わった岡田以蔵とお茶をしようと思っていたのだ。新入りのアサシンが岡田以蔵を押し倒しているのを見るまでは。
「以蔵。この紅茶を食堂に返してきてもらえます? わたくし、ちょっと用事が出来たもので」
にっこり笑うと気圧されたように以蔵はトレーを受け取った。心配そうに振り返りながらも言われたとおりに以蔵は談話室から出ていく。
それを見送ってキアラはことさらゆっくりと微笑んだ。そんなキアラにカーマは
「なんですか。喧嘩なら買いますよ」
「もちろん買っていただきますわ。でも、例え影法師といえども私達ビーストが真正面から戦えばカルデアぐらい吹き飛んでしまいますわ。ここはひとつゲームをいたしましょう」
カーマが笑みを深める。
「あなた勧めるならさぞかし『面白い』ゲームなんでしょうね」
「ええ、友達に教えてもらったんですの。チンチロリンですわ」
キアラの言葉にカーマは目を見張った。
「なにそれ?」
◆
チンチロリンとは日本のゲームである。3つのサイコロを器の中に投げ入れ出た数字の役などで勝敗を決める。
今回は親が殺生院キアラ。子供がカーマである。
1巡でサイコロ3個を3回まで振り直し可能。
サイコロ3個のうち2個がゾロ目だった場合残りの1個の数字が「出目」となる。出目の数が多い方が強い。勝てば掛け金の1倍もらえる。
役はふたつ。
⚀⚁⚂(ヒフミ)は即負け。掛け金の2倍支払う。
⚃⚄⚅(シゴロ)は即勝ち。掛け金の2倍もらう。
そして、サイコロ3つがゾロ目だった場合。掛け金の2倍もらう。
出目なし役なしは負け。掛け金の1倍を支払う。
3巡で終わり。所持している掛け金の多いものが勝者。
◆
「ルールはこんなところですが、お金(QP)を賭けるのも無粋なので今回はこれを使います」
場所は変わって殺生院キアラの私室。
チンチロリンの説明を終えて、この遊びをキアラに教えた岡田以蔵を何度も身ぐるみ剥いだ彼女は虚空をそっとひと撫でした。何もない所からじゃらじゃらとこぼれ落ちるメダルのようなものをカーマは1枚拾う。
「サーヴァントコイン。
…
マスターが必死に集めていませんでしたか。これ」
「さぁ、どうでしょう。普通にお金を賭けるよりも『自分に縁がある者のサーヴァントコイン』を賭けた方が楽しいでしょう?」
なおその方法でも殺生院キアラは岡田以蔵を(以下略)
「選べるサーヴァントは3人。1人20枚の合計60枚。一度に賭ける上限はなし、で、いかがかしら?」
キアラの提案にカーマは手の中でコインを転がした。
「いいですよ。やはりここは『敗者は勝者のいう事をなんでもひとつきく』というのを付け加えるのが定番ですよね」
「了承しましたわ。以上でよろしいかしら?」
「ええ、もちろん」
条件の交渉を終え、ビーストふたりは小さなテーブルに向かい合って座る。各々の手前にはそれぞれが選んだ60枚のサーヴァントコインが積んである。
殺生院キアラの白い手が慣れた様子でテーブルの中央にサイコロが入った器を置いた。
「ちょっと待って、それを使うわけ?」
「ええ、そうですが。検めていいですわよ」
「そういう意味じゃなくて」
呆れたようにため息をついてカーマが器を手に取る。ずっしりとした重み。なめらかでありながら起伏のある表面。垂れた釉薬が雅な曲線を描いていた。
「どうみても茶器」
「以蔵がとあるセイバーから一本取った褒美ですの。わたくしに譲ってくれたのですわ」
譲った=掛け金が支払えなかったので担保にした。である。
そんな事とは知らないカーマは茶器の中から3つのサイコロを取り出した。
「あんな貧乏そうなアサシンに貢がれて楽しいですか?」
「あら、貢物と貰い物は違いますわ」
茶器とサイコロに仕掛けがないか確かめるカーマにキアラはくすくすと笑う。繰り返すがこの場合の貰い物=担保である。確かに貢物ではない。
「ふうん。そうですか」
人から奪ったことはあれど貰った事が少ない愛の神はサイコロを何度か転がした後、茶器と揃えてテーブルの中央へと戻した。
「それでは始めますわ。まずは掛け金を」
キアラが様子見とばかりに岡田以蔵のサーヴァントコインを10枚前に出すと、カーマはパールヴァティーのサーヴァントコインを20枚全て押し出した。明らかに捨て駒である。
「わたくしは親ですので貴女から先にどうぞ」
コインについて何も言わないキアラに促されてカーマは茶器にサイコロを転がした。
⚄⚃⚂
役無しである。
「振り直しますか?」
「もちろんです」
⚄⚃⚂
またしても役無しの出目に、カーマの眉がきゅっと寄った。
「次が最後のチャンスですわよ」
「分かってますよ。えいっ!」
⚃⚄⚃
4のゾロ目と余りが5。5の出目である。かなり強い出目が出たと言えよう。
このゲームの親は後からサイコロを振れる以外のボーナスはない。キアラにとって不利な局面となった。
だが、殺生院キアラは慌てない。なぜなら彼女には連日岡田以蔵に打ち勝ってきた実績があるのだから。
「では失礼して」
自信満々にキアラはサイコロを振るが
⚅⚁⚅
出てきた出目は6のゾロ目と余りが2。2の出目である。出目の数が多い方が強いのでこの出目では5のカーマに勝てない。
「おかしいですわね。もう一度」
⚃⚂⚃
5のゾロ目と3で出目は3。もちろんカーマに勝てない出目である。
結果に不思議そうに首を傾げるキアラにカーマは気づいた。
まさかこの女、自分より賭け事が弱い相手としか勝負したことがない!!
最後の3回目の振り直しにキアラが出した出目。それは
「なんてこと」
⚀⚄⚅
まさかの役無しであった。負けである。
呆然とするキアラの前からカーマは賭けられていたサーヴァントコインを奪い取る。
「私はこんな弱々なアサシンのサーヴァントコインなんていらないんですけど、勝っちゃったものはしょうがないですよねー。本当にいらないんですけど」
ニマニマと笑いながら増えたサーヴァントコインを見せつけるように積み上げるとキアラは唇を尖らせた。
「まだ勝負は分かりませんわ。それに以蔵とわたくしはお友達ですから。すぐに戻ってきますわ」
取り返す宣言にカーマは岡田以蔵のサーヴァントコインを弾く。
「お友達ですかー? 私がちょーっと誘惑しただけで真っ青になっているような弱っちいアサシンなんて友達になってもなんの得もないですよねー」
先程の騒ぎを揶揄するカーマにキアラは柔らかく微笑んだ。
「ふふふ。貴女は誘ってくださる方はいてもお友達はいませんものね。それに、私達以外はみな等しく『弱い』でしょう?」
言いながらキアラは新しいサーヴァントコインを20枚並べる。そこには直接的な攻撃力は皆無といっていい童話作家がコインの中からこちらを見ていた。
カーマの掛け金は変わらずパールヴァティー20枚のまま、2巡目が始まった。
この時点でのサーヴァントコインの所持枚数はカーマが70枚、キアラが50枚である。まだキアラの挽回の可能性がある枚数差であった。
カーマの小さな手がサイコロを転がす。
⚄⚃⚀
役無しである。無言で再度振り直したカーマは
⚁⚁⚁
まさかのサイコロ3つともが2のゾロ目である。キアラが同じ3つのゾロ目の3以上を出さない限り、カーマは掛け金の2倍のサーヴァントコインを奪えるのだ。
「さあどうぞ」
上機嫌に促すカーマに答えず、キアラはサイコロを転がす。
⚁⚀⚅
役無しである。
⚄⚅⚀
またしても役無しである。非常にまずい流れであった。
殺生院キアラは神頼みなどしない。なので無言でサイコロを振った。
⚁⚁⚄
出目は5。充分強い出目であった。ただし、カーマのゾロ目の2には及ばない強さであった。
「いただきますね」
語尾にハートをつけそうな勢いでカーマがキアラの前からアンデルセンのサーヴァントコインを根こそぎ持っていく。
「掛け金2倍ですから、残り20枚。払ってくださいね」
カーマの促しにキアラは積んであった残りのサーヴァントコインの山を崩す。
そして支払ったのは、岡田以蔵10枚。そしてカーマ10枚であった。ちなみにこのカルデアには水着のカーマちゃんはいない。マスターがまたしても爆死したのである。
「ちょっと、あなた何持っているんですか!」
カーマの悲鳴にキアラは表情を変えずに答える。
「どのサーヴァントコインを選ぶかは自由ですわよ」
「そういう問題じゃなくて! それ! 私のサーヴァントコインですよね!」
「そうですが何か?」
微笑むキアラにカーマは受け取った自分のサーヴァントコインを握りつぶしそうになった。
「
…
さすが、大切なお友達の上に座るような女は性格が悪いですよね」
ある時カーマは見てしまったのだ。人気のない談話室で以蔵とキアラがふたりっきりで、
…
筋トレをしているところを。
「あれは以蔵の腕立て伏せの重しになっていただけですわ」
とキアラは言うが。
「足をついていても重しになるんですかー? 肉付きが良いと重いから大変ですよね」
事の起こりはランサーの坂本龍馬に筋力で負けた岡田以蔵が、子供姿のサーヴァントでは重しにならないとキアラに自分の上に乗ってくれるよう頼んだ事だが。さすがに殿方の上に全体重を乗せるのはキアラの乙女心が許せなかったのである。
そしてその乙女心はカーマの今の発言をスルー出来なかった。
「そうですわね。男体化しても違和感ないとマスターに言われた方に比べれば大変ですわ」
「TSは最近の流行りです! もう貴女の負けは確定しているんですから、せいぜい負け惜しみを言うといいですよ」
現時点でカーマの所持するサーヴァントコインは100枚。キアラはたった10枚。ほぼキアラの負けは確定していた。
最終局。3巡目が始まる。
カーマは持っていた100枚のサーヴァントコインを全て押し出した。キアラも持っている10枚を出したがその物量差は明らかだ。
「な、に、を、し、て、もらおうかなー?」
楽しげに歌いながらカーマがサイコロを茶器に投げ入れる。軽やかな音を立ててサイコロが転がった。
⚀⚁⚂
ヒフミ。この役は即負け、掛け金を2倍支払うものである。カーマは100枚賭けたので200枚支払いとなる。
「もしかしてわざとやってますの?」
「
…
」
絶句するカーマに相手の自爆で大逆転したキアラはにんまりと笑った。
「勝負事ですし。いただきますわね。
…
さて、な、に、を、し、て、もらおうかしらー」
先程のカーマと同じリズムで歌うキアラを唇を噛み締めてカーマが見上げたその時、インターフォンが鳴った。
ビーストのアルターエゴであるキアラの部屋に尋ねてくる人物は限られている。キアラは確認もせずドアを開けて来客を迎い入れた。
レストランワゴンを押した岡田以蔵である。
「キアラ。もうええか? エミヤが女同士が揉めちゅう時は甘いものだ言いよったき、食堂で貰うてきた」
ワゴンには二人分の紅茶のセットとクリームが乗ったアップルパイが並べられていた。
「その姿もエミヤの入れ知恵ですの?」
「これはブーディカ姐さんじゃ」
岡田以蔵は最近マスターに買ってもらった(ツケを払わせたとも言う)スーツ姿の霊衣の上着を羽織り、ポケットチーフを胸に差している。
「仕方ありませんわねぇ」
賭け事にはなんとか無事勝ったことだし、露骨なご機嫌伺いにキアラは後ろを振り向いた。
やはり、カーマはこれ幸いとテーブルの上を片付けている。
証拠がなくなったからと言って負けた事実はなくならないというのに幼いこと。とキアラは笑ってテーブルについた。
即席の給仕が意外と丁寧な所作で皿を並べる。
「本日の紅茶はニルギリっちゅうインドの紅茶やき。インドの神様には合うんやないかとエミヤが言いよった。おかわりもあるそうや」
「あら、あなた。私が誰だか知っていたんですね」
カーマの言葉に以蔵は顔をしかめた。
「わしらを大奥とやらの材料にしたカーマやろう。知っちゅう」
ポットを持ち上げた以蔵が教本通り仕草でカーマのカップに紅茶を注いだ。
「マスターが言っちょった。『カーマちゃんは甘えんぼうだから子供姿の時は子供組に入れてあげてね』。やき、これは他の子供連中には内緒じゃ」
紅茶の柔らかな香りがあたりを包み込む。何かを言いたげに口元をもにょもにょさせていたカーマはカップを手にとった。ひとくち。
「
…
まあ、今回は許してあげましょう」
「負けはチャラにはいたしませんよ」
キアラも注がれた紅茶を口にする。
「おんし、また勝ったんか。強いのう」
以蔵の賛辞に微笑んで、キアラは紅茶のおかわりをしようと決めた。とてもおいしい。
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