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ちよど
2026-03-27 07:22:11
3933文字
Public
以蔵さんとカルデアの日々
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以蔵さんと初めてのカルデアクラス代表会議
pixivより再掲。以蔵さんがクラス代表会議に出席する話。ほんのり帝都騎殺
人類最後のマスターである藤原立香が節操なく喚びまくったせいでカルデアには様々なサーヴァントがいる。
思想も時代も異なる英霊達はいつしか生き残ったカルデアの職員達の数を上回り、とてもマスターひとりではまとめられなくなっていた。
そこで導入されたのが、カルデアサーヴァントクラス代表会議だ。キャスター、ライダー、アーチャー、セイバーなどのクラスごとに代表を決め、話し合いにて決定された事柄を周知徹底することでやっと治安が維持出来るようになった。
しかし、そのクラス代表者会議は一部のサーヴァントにはこう囁かれている。
―――
連中に人の心は分からない。と
キャスタークラス代表のメディアの推薦を受け、なりゆきで似合わないアサシンクラス代表となってしまった岡田以蔵は第5会議室の前で立ち竦んでいた。ここを開ければ初めてのクラス代表会議だ。胃が痛い。
思わず腹部を押さえた以蔵の肩を叩く手があった。坂本龍馬だ。
以蔵がアサシンのクラス代表になったことをどこからともなく聞きつけて、追いかけるようにライダークラスの代表になった幼なじみは振り返った以蔵ににっこりと笑いかけた。
「以蔵さん。どうしたの? もうすぐ時間だよ」
「ああ、わかっちゅう」
いつもは彼の背後を漂っている宝具のお竜さんは会議参加者は武装解除の建前上置いてきたのだろう。ひとりきりで銃と刀も外した無防備な龍馬がそれでも気負い無く笑う姿に以蔵は背筋を伸ばした。
以蔵もいつも腰に差していた二振りは部屋に置いてきている。あるべきものが腰にない状態で自分より格上の英霊達と会うことにいくら気後れしても逃げるわけにはいかないのだ。
深く息を吸って、以蔵は覚悟を決めて会議室へと足を踏み入れた。
自動で開いたドアの向こうにはコの字型に並べられた机と着席したそれぞれのクラス代表が以蔵を待ち構えていた。
一斉に視線を浴びせられて動きを止めた以蔵の背中を龍馬がそっと押す。
「遅くなってすまない。新しくクラス代表になった岡田以蔵と坂本龍馬だ。僕達の席はどこかな?」
人好きのする笑顔でするりと会議室に入った男に、正面の席に座っていたアルトリアオルタ(槍)が殺生院キアラの横の空席を示した。
「貴公らが最後だ。空いている席に座るがいい」
「新人のくせに最後に来るなんて、どうなのかしら?」
珍しく宝具から降りているイシュタル(弓)が退屈そうに椅子の上で背中を伸ばす。
「
―――
間に合ったからいいのではなくて?」
メディアが言うと、イシュタルはおかしそうに目を細めた。
「ライダーはともかく、アサシンの方はあなたの推薦って話じゃなぁい?」
「何が言いたいのかしら?」
女性二人の視線が交わる。剣呑な雰囲気を壊したのはこつこつと机を叩く音だった。
「時間が惜しい。はじめよう」
そうアルトリアオルタ(槍)を促すウラドⅢ世(狂)の横でキアラが以蔵を手招きする。ふらふらとキアラの横の席に座った以蔵を追いかけて龍馬は以蔵を挟んでキアラの反対側の席に腰をおろした。
「よろしく、殺生院さん」
「お手並み拝見いたしますわ」
表面上はにこやかに言葉を交わしてふたりは以蔵の様子を窺う。彼は明らかに緊張していた。
ここでカルデアクラス会議のメンバーを紹介しよう。アルトリア(剣)、イシュタル(弓)、アルトリアオルタ(槍)、メディア(術)、坂本龍馬(騎)、岡田以蔵(殺)、ウラドⅢ世(狂)、殺生院キアラ(EX)の8名である。他には記録係のカルデアスタッフが1名。WEBカメラの準備をしていた。
そのほとんどが、王や元王女や女神だ。生前自分が住んでいた藩の藩主の顔すら見た事が無かった以蔵が気後れするのも無理はなかった。
「それでははじめるとしよう」
ランサーオルタの隣に座ったセイバーアルトリアが記録係に合図を送る。それを受けて記録係がWEBカメラを起動した。
このようにサーヴァントクラス代表会議の様子はリアルタイムで公開されている。疑問があれば、代表の誰かに問い合わせれば次回の会議で取り上げられることになっている。生前の経験から政治というものに好印象をもたないサーヴァントも多いため、出来るだけの透明性を保つようにしているのだ。
「それでは第63回のカルデアクラス代表会議を行なう」
アルトリアオルタの宣言と共に、中央に立体映像が浮かぶ。自動販売機が並ぶカルデアの休憩室だ。
「自動販売機を利用した者がゴミの始末をしないという苦情が上がっている。各自意見を述べるように」
メンバーに似合わない生活感溢れる議題に以蔵はぱしぱしと瞬きした。思わず隣の坂本龍馬を見るが彼は真面目に話を聞いているようだ。
人の心が分からないと聞くカルデアクラス代表会議でこんな卑近な議題が話し合われているとは思っていなかった以蔵は、アルトリアオルタが続けた言葉にその評判の理由を深く納得した。
「私は元凶である自動販売機そのものを撤去してしまえばいいと思う」
「賛成~」
ひらひらと手を振ったのはイシュタルだ。何故か自動販売機と相性が悪い彼女はカルデアからそれらが消えたところで何も困らない。
「私も同意する」
と頷いたのはセイバーアルトリアだ。彼女はセイバーオルタとは異なりアーチャーエミヤの料理を至上のものとし人工の甘味をあまり好まない。
あっという間に半数近くが自動販売機の撤去に同意したのを見て、以蔵は青ざめた。
飲み会の帰りに、クエストの待ち時間に、休憩室で居合わせた暇な連中とだらだらとしゃべりながら見た事も無い味の飲み物をまわし飲みするのが以蔵は好きだった。
確かに、たまに、ごくたまに、以蔵達は酔っ払った拍子で缶を散らかしたままにしてしまったことがあった。だからといって、それだけの理由で突然全ての自動販売機が撤去されるのは犯した罪に対して大きすぎる罰ではないだろうか。
明らかに変わった以蔵の顔色にその心情を察した龍馬が片手をあげる。
「発言してもいいかな?」
「構わない。忌憚なき意見を期待する」
アルトリアオルタに龍馬は軽く会釈をして口を開く。
「カルデアはこの1年外界からの補給が無かったと聞いているけど、その間ずっと自動販売機の補充や保守点検をしていた業者の献身をそう簡単に無碍にしていいものだろうか?」
「業者。
…
なるほど、貴公は商人だったな。我々では気がつかない視点だ」
考え込むアルトリアオルタに、ウラドⅢ世が提案する。
「ならば、自動販売機はそのままに。下手人を捕らえ罰を与えればよい」
罰、の言葉に以蔵がびくりと体を揺らす。以蔵にとっての罰とはあの拷問の日々だ。休憩室で談笑した連中をアレと同じ目に合わせるわけにはいかない。
おそるおそる手をあげた以蔵にアルトリアオルタが声を投げる。
「話すがいい」
「
―――
その、下手人は全て罰を受けるのやか?」
以蔵の隣で龍馬が僅かに眉を寄せる。以蔵がいわゆる下手人のひとりであることに気がついたのだ。
「獅子王。よろしいでしょうか?」
頷いたアルトリアオルタに龍馬は進言する。
「貴女は馬に乗っておられますが、手綱を引いて理解する馬と、鞭を与えられないと理解出来ない馬を同列に扱いますか?」
ふむ、とアルトリアオルタは考え込むように顎に手を当てた。
そこにメディアが声をあげる。
「罪人の判別は行なうべきではないかしら。言って聞かないものだけ罰すればいいのではなくて?」
メディアの視線が一瞬以蔵を撫でる。龍馬と同じように以蔵が罰せられる可能性に気がついたのだ。
以蔵の横でキアラが頬に手を当てた。
「では、どんな罰がいいか考えておきますわね。ああ、わたくし興奮してまいりましたわ!」
蕩けるような笑みを浮かべるキアラに以蔵がちょっと顔を強ばらせる。
そんな以蔵にキアラは子供のように頬を膨らませて、以蔵の着物の裾をかるく引っ張った。
キアラが言い出さなかった場合、罰を与えるのはウラドⅢ世になる。以蔵が彼の処罰に耐えられるとは思えなかった。
それが分かったのはアルトリアオルタも同じだったようだ。
「貴公が話題に参加するとは珍しいな」
笑い含みの声にキアラはつんと唇を尖らせた。
「後輩が出来ましたもの。それらしくしますわ」
「なるほど。メディアはよい風を連れてきたようだ」
目元を和らげたアルトリアオルタはすぐに表情を切り替えた。
「では、警告を掲示し従わなかった者には殺生院キアラが罰を与える。それでよいか?」
◆
かくして岡田以蔵が初めて参加した第63回カルデアクラス代表会議は満場一致で可決された。
会議室から出てふぅっと息を吐いた以蔵はやっと肩の力を抜く。
「どんな恐ろしいところか思うたが、意外と小さな事を話しちょったな」
以蔵の感想に横を歩いていた龍馬は苦笑を浮かべる。
「小さな事じゃないよ。
―――
今度カルデアに査察が入るでしょ。サーヴァントのだらしがないところを見られたらマスターの資質が問われてしまうからね。僕達は彼の生存確率を少しでもあげておかないと」
当然のように言う幼なじみに以蔵の足が止まる。
急に立ち止まった以蔵に対応出来ず、2,3歩先に進んでしまった龍馬が振り返った。
「以蔵さん?」
「
―――
なんちゃあない」
ただ、わしとおんしでは見えちゅうものが違うのだと、また思い知っただけや。
以蔵はいつものように言葉を飲み込んで龍馬と共に歩き出した。刀を差していない腰が無性に軽かった。
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読んでくださってありがとうございます。
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