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asaumi
2026-03-26 20:16:47
8967文字
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童磨にエロ下着着せられちゃうしのぶちゃん
R18注意。
「負けちゃったねえ」
長い指に挟んだ煙草を燻らせながら、男はまさに勝ち誇った笑顔で言う。
頭脳戦の果てのチェス盤を挟み、対する自分の背中を冷や汗が伝う。喉を鳴らし唾を飲み込んでようやく、今まで息を殺していたことに気付いた。活路はないかと盤上に置かれている駒を何度も見た。
結果は散々だ。
どうにか、と必死の悪あがきを試みる様子を楽しみながら、煙草を燻らせている。辺りを漂う煙が息継ぎを始める肺に苦かった。
勝負はついたことはわかっていた。
負けを受け入れられなくって、それでも盤に手を伸ばすと、手首を掴まれた。
「つまらない意地張らないで、もう手はないよ」
「
…………
っ」
吸い途中の煙草を灰皿に押し付けて消し、片方の手は長い指で自分の手を撫でる。それから、握り包まれると大きな拳の中にすっぽり収まり見えなくなった。
「諦めて、俺のお願い聞いて欲しいなぁ」
身体のすぐ横には『俺が勝ったら、これ、着てよ』と渡されたチェス盤と同じ大きさの箱がある。仰々しいリボンと綺麗にラッピングされている箱を恐る恐る開けて、固まった。油をかけて燃やすべき品物だった。
拒みたくて全力で挑んだのに、どんなに考えて選んだか、そして似合うかを説く言葉に集中力を乱された。
余程着せたいのか、男はさらに本気を出して心理戦に持ち込み、王の駒に迫る。
絶望感に打ちひしがれる私に、満足のいく成果を得て微笑む。
「俺が着せてあげてもいいけど」
囁きながら男は絡ませた手で自分の指をひとつひとつなぞり弄ぶ。
それを荒々しく振り払った。
こうなったら、仕方ない。
「気付の一杯です。酔わないとやってられません」
『思考を鈍らせたくないので』そう言って、手をつけずにおいた酒を一気にあおる。ワインはぬるくなっていた。
「わぁ、豪快だね!」
「うるさい」
喉に焼けつき、食道を流れるアルコールが強く辛い。落ちれば胃に染み込んで身体が熱くなり、頭がぼうっと揺らいだ。空になったグラスを音を立てて置く。
濡れた唇を舐める舌に魅入る、男の目線を感じた。
「
……
ベッドで待っててください」
「わーっ、楽しみ」両手を合わせて嬉々として言う。「温めておいてあげるね!」
その次には、鼻歌でも歌いながら上機嫌で寝室へ向かう足音を聞いた。
***
恐る恐る包装紙を剥いたところで、世界が滅べばいいのに。
男にプレゼントされたもの、それはベビードールとランジェリーだった。本来あるべき下着としての機能性は一切無視され、ひとえに男を視覚的に悦ばせるためだけに作られたデザインに絶句する。
そんな俗物を着る日が来るなんて思いもしなかった。今までは。
「可愛いね、しのぶちゃん。似合ってるよ」
寝室に入るや否や「見せて」と催促した男は、バスローブを脱いだ姿をうっとり恍惚と眺めて褒める。ベッドの上で枕を背もたれにして座りながら微笑んだ。立ちすくむ自分を足先から頭まで虹色の瞳が何度もなぞる。
「いいねぇ、綺麗だねぇ。もう、家の中にいる時はその格好でいればいいんじゃない」
「ふざけるな」
着ているべビードールは大部分を繊細なレースで繕われ、腹部が辛うじてシルクの布地がある。キャミソールは細い紐で吊られた胸元が深く開き、鎖骨から胸の谷間まで露わになっている。丈は腰骨よりわずかに下、秘部が隠れるか隠れないかの際どい長さだ。色は白い肌に馴染む薄い紫、刺繍糸に黒が僅かに混ざっている。
にっこり笑う。
「それ、しのぶちゃんに合うようにデザインしたんだ。サイズまで全部特注だよ」
着た姿を見てご満悦に得意気だった。
「頭大丈夫ですか。正気とは思えませんね」
ドン引きだ。全体的にあしらわれている蝶のステッチといい、色といいサイズといい、デザインから何もかも全てに男の願望と好みが滲んでいる。
「気に入った?」
「脱いだら、油をかけて燃やしてやります」
「えーっ」心外だと言わんばかりに驚いてみせる。「だって
……
しのぶちゃんが持ってる寝衣はなんていうか、悪くはないけど独特じゃない?
ふぐが描いてあるやつ。だから、俺、思ったんだよ。小さいけど綺麗な女の身体してるんだから、良いものを着ないと勿体ないって」
「これが良いもの? 惚けたことを」
「しのぶちゃんが可愛いから、惚けたくもなるんだよ。その下もちゃんと着れた?」
「あんなもの着せるなんて、ただの変態です」
ネグリジェの下に着ているランジェリーはさらに目を覆いたくなるもので、今まさに辱められている。
「後で楽しませてもらうね。ほら、そんなところに突っ立ってないで、おいで」
こまねいていても連れていかれるだけ、抱き上げられるよりは自分で歩いた方がマシだ。そう思って足を動かせば、シルクの裾が揺れて腿に擦れる。普通に歩けばランジェリーがそのまま見える、際どい長さの丈と仕様に顔を歪ませた。
ふわり風が吹けば、シルクが翻るのが嫌で身を強張らせる。男の目線を痛いほど感じながら、ベッドに上がる時も腿を擦り寄せて見えないように必死だった。
「良い格好だね」
好きでこんな体勢をしてるのではない。しかし、ベッドに四つん這いになれば、シルクのウエスト部分が弛み、男の目線から下腹部から続く秘部をさえぎってくれる。後ろから見ればあられもない姿だが、幸い人間に目は二つしかない。
部屋の大部分を占めるベッドに、男は上半身は裸で下はスラックスという姿で寛いでいる。スラックスのボタンは意図的に外されており、そこを熱がもたげ押し上げているのがわかった。急いで目を逸らしたまま、これ以上は見ないことにした。
「そのまま、俺の身体に跨って」
言われる通りにするが、がっしりした男の腰骨を跨ぐには足を開かないと到底無理だった。ベビードールの裾が靡き上がる。レースがギリギリ秘部の際を覆っていた。
「んー、絶景だねえ。せっかくだから最初はしのぶちゃんを上にしてあげる」
「まったく嬉しくないですね」
男は枕を背から外し上体を寝倒す。ぎしり。スプリングが揺れた。
男は自分を抱く時は、ことさらに、常に己が占有権を握っていることを好む。
巨躯で自分の身体にのしかかり抵抗する全ての手段を潰して自我を奪う。己が与えるもののみ受け取ることを許す支配欲を散々覚え込まされてきた。
男が下になる時もあるが、決まって何か意図がある時だ。それはろくな結果になった試しがない。そして今は嫌な予感しかしなかった。
下腹部を合わせるのは抵抗があり、ちょうど臍上の腹部に腰を下ろす。仰向けに寝る男の上にのれば、筋肉で鍛えられた幅広く厚い体躯に否応なしに対比する羽目になり、自分の脚や腰に細さが目立った。
割れた硬い腹筋が秘部を擦りつける。その感触を感じたのか、男が目を細めて微笑む。
「あ、これプレゼントね」
側から仰々しい箱〝そのニ〟を取り出した。宝石箱のたぐいの箱から中を取り出す。それは男の好きな花である蓮を象るチョーカーで、ランジェリーと同じ素材と色で、合わせて作られていることが一目でわかった。その真ん中で赤い石が揺れている。
腕を伸ばし、慣れた手つきで細首に回して後ろで留める。つけたその映えを確認した。
「いいね、似合うね。首輪、気に入ってくれる?」
虹色の目を輝かせた。鎖骨の真ん中でぶら下がる大ぶりの赤い石を指で突きながら「これ、本物のダイヤモンドだよ」と微笑んで「いくらか知りたい?」と問う。
「
……
三万」
「一千万」
「馬鹿ですか」
だって、特注だしね。とさも当たり前に言い、ケラケラ笑う。億ションに住む、この男の狂った金銭感覚は今に始まったことはないが、自分の稼ぎでは着せられている変態エロ下着すら買えないような気がして、つくづく世の中は理不尽だと思った。
「じゃあ、これだけは捨てないでおきます。別れた時に、お金に代えられますから」
「
…………
」
一瞬で笑みが消えた。
「そんな物騒なこと、冗談でも言って欲しくないなぁ」
「あらぁ、冗談だと思ってますか?」
「ふぅん、じゃあ、逃げられないように捕まえてないとね」低い声で言う。「この後ろ、留め具に輪っかがついてて、そこにリードがつけられるんだ。あんまり変な事を言うと繋いじゃうよ」
想像したくないが出来る。男がやろうと思えば、するだろう。
一千いくらのなんやらがついた紐が急に喉元にきつく感じ、息が詰まった。
なんとかしないといけない。
これ以上、物騒な言葉を吐かせないためにも、男の唇を塞ぐ。初めは氷の冷たさで見ていたが、優しく、丁寧に唇を合わせれば機嫌を直したのだろう、目を閉じて受け入れた。どうすれば喜ぶか知っている。ゆっくり唇を割って、舌を潜り入れた。鋭い犬歯が掠め怯むものの、そのまま舌で舌をつつき絡ませる。
二人の唇からくちゅ、と唾液が弾く音が響く。
顔の角度を変えるときに離れた隙で「これは、〝言い過ぎてごめんなさい〟の意で受け取るね」と微笑む。
男の手に手を合わせて頭の上に上げさせ、指を絡ませる。口づけを深くしていく。鼻と鼻が擦れて、吐息が交じった。男の口端から流れる唾液を舌先で丁寧に優しく拭って、再び唇を合わせる。満足気に男の喉仏が上下に揺れた。
されるがままであることを楽しんで、完全に心を許している男の身体に力が入ってない今しかなかった。
舌を舌で愛撫しながら、枕の下に隠しておいたものを手探りで手繰り寄せた。男が枕をどかしたときにバレるかどうか冷や冷やした。あった。手錠だ。唾液を吸いながら、その鎖を柵を通し両方の太い手首に輪っかをかけた。
「えっ?」
驚いた声を出す男の唇を軽く噛んだ。
「何、これ」
「手錠です」
にっこりと微笑む。男の身体にピタリとつけていた上体を起こす。
「私は身体が小さいですし、貴方には力で到底勝てません。なので道具に頼ることにしました」
「あー、なるほどね」
男は手首を揺すって具合を確かめた。
「結構、頑丈だね。ただのおもちゃってわけじゃなさそう」
「ええ、強度が一番高いものを選びましたから」
「何だか、わくわくするね!」と男は浮かれた気分で七色の色彩を煌めかせた。
「でも、拘束してどうするの? しのぶちゃんが俺を気持ち良くしてくれるのかな?」
「するわけないでしょう。貴方の行いを悔やむまで、仕返ししてやります」
「んー? 目をほじくるとか」
「貴方の目が私にとって何になるんだというんですか。詫びにもなりませんよ」
その言葉にあははっ、声を出して笑う。「そんな、しのぶちゃんが好きだよ」と喜んだ。今の会話のどこに嬉しがる要素があるというのか、この男の感性はやっぱりわからない。
ベッドの柵に手錠を介して繋がれた男の腹部の上に、馬乗りになった状態でゆっくりベビードールの裾に手を添える。
「まずは貴方が用意した悪趣味としか思えない下着を見たいでしょう」
男の目線を引きつけながら、ゆっくりとシルクをまくる。
一見は上品なブラジャーとショーツだが、胸と秘部を包む箇所しかシルク生地はなく、他は紐が渡っている。ところどころに蝶を象る細かい刺繍が入っていた。紐は結ぶタイプではなく、自分の身体に沿って長さが整えられている。バストの大きさだけでなく、何から何までサイズは把握されていると思うと頭が痛い。
「ねえ、しのぶちゃん」
「
……
何ですか」
目を輝かせて、満面の笑みで言う。
「その姿、写真に撮らせて」
「ふざけるな、馬鹿野郎」
首を絞めてやりたい、と殺意を覚えた。
「しのぶちゃんはやっぱり綺麗だよ。身体は小さいけど胸は大きいよね、柔らかいし」
確かに小柄な体躯にしては、胸が大きい方かもしれない。そして、男に抱かれるようになってからさらに大きくなった。今、その両胸を収めているのはただの普通のブラジャーではないことは、シルクのカップの真ん中に入っているスリットでわかる。胸の頂きが、その裂け目から覗くように出来ていた。
なめらかなシルク生地からつんと出ている胸の蕾を魅入る。
「綺麗なピンク色だねぇ」それを眺めて、言う。「立ってるよ。噛んであげようか?」
しかも、胸の頂きを強調するように、上下に凝った蝶の刺繍がある。その蝶の体が真珠を縦三連にして表されていた。その粒が固くなった頂きに当たることもきっと計算されている。
「なんで訊くんです? 噛みたいんでしょう」
「まあね。噛んだときに気持ち良くなって泣く、しのぶちゃんの可愛い声が聞きたいんだよ」
「
……
っこの」 男に呑まれたくない。「減らず口、この上ないですね」
「男は自分が可愛いと思う女の子は苛めたいと思うものだ。ああ、それと、その蝶の真珠も本物だからね。紫色のを探すの大変だったよ」
男は余裕だった。両手を頭上に上げ、柵で手錠で固定されて何もできないと言うのに、声だけで采配を握り、子供のように無邪気で気まぐれに振って遊んでいる。
苛立つ。身体が熱いのは、あおった酒だけのせいではない。
しかし良い具合に、アルコールが効いてきた気がする。酔いは理性を抑えて大胆にさせる。
膝を立てる。そうすると臀部が沈み、下敷きになっている体躯に体重がかかるが知ったことではない。いつも、難なく抱え扱う男が重いと嘆くこともないだろう。
「ここもですか」
そうして男の目の前に秘部を自ら晒すなど、絶対に素面ではしない行動だ。
恥気を覆う程度のシルク生地しかないショーツも、そこからブラジャーと同じくスリットが作られている。秘部の割れ目に沿うように臀部まで深く入っていた。秘部の上に蝶の刺繍があり、その両羽の真ん中に真珠が連なってる。
「
……
そうだよ。こっちは、胸のよりも粒が大きいんだけど、わかるかな」
「っ、知りませんよ」
「良く見たら、違うんだよ」
その言葉に唆されて下を見れば、シルクの布地の色が濃くなってる。秘部から愛液が滴り、それがショーツの割れ目からシルクが吸い取っていた。
「すごく濡れてる。それがわかるように薄い藤色にしたんだよ」
その部分だけ濃い紫色に変わっている。
「
…………
っ」
「欲しいでしょ?」
言葉に恥ずかしくなり腰を引くと、勃ち上がる男の硬い自身が臀部に触れる。
「気持ちよくしてあげたい」硬い熱を臀部に押し上げながら、虹色の目を恍惚に細めて言う。「ねえ、しのぶちゃん。手錠、外してくれない?」
耳をくすぐる甘い声に下腹部が疼く。そしてまた愛液が流れるのを感じて足を閉じたくなった。
「言う通りにしてくれたら、優しくしてあげるよ」
両手を拘束されて身動きが取れないのに、主導権を握ったまま言葉で責め立てていく。太々しい余裕に奥歯を噛み締める。その顔を崩してやりたい、酒の力を借りて大胆になっている胸中に反逆心が首をもたげた。
「願い下げです」
「
…………
」
「別に、貴方じゃなくても気持ち良くなれますから」
「どういう意味かな?」
「見せて、教えますよ」
まくし上げたベビードールのレースで飾られた裾を口で咥えた。
両手を秘部に持っていき、指でその唇を開く。男の目線が移り、注がれるのを感じて、口がひくりと疼いた。そこから垂れる愛液が男の割れた腹筋の溝を伝う。
細い指で愛液をすくい取り、真珠の下にある膨らんだ蕾に擦り付ける。
「
…………
、っ」
「しのぶちゃん」
手錠の鎖が鳴る音がした。男の腕が動くが、手枷はぎっちりとハマっていることを確認して、ゆっくり蕾を指でまさぐる。
こんなことしたことない。どうすれば良いのかなんてわからないから、男になぶられてきた記憶を手繰るのが悔しい。
上下に擦り、円を描き指を動かすと、背筋を甘い刺激が走った。声は出したくないから、シルクの裾を咥えている唇を噛み締める。
「
……
っ、」
こうすれば気持ち良くなれる、それは全て男の指で教え込まれたことだ。
「
……
ねぇ」
男の顔から笑みが消えた。真顔なんて、そうそう見られない。
「ねぇ、しのぶちゃん。それは俺がやることなんだけど」
せいぜい悔しがればいい。両手を繋がれている今は出来ないのだ。
男の指と違って、自分の指は細い。感触も違う。だから、同じような強烈な快感には遠かった。それでも、男がほぞを噛んでいるという高揚感がそれを補う。呼吸が速くなるのがわかった。開いている足がぴくり震える。
「最後にもう一回言うよ。これ、外して」
鎖を鳴らした。もちろん、聞き入れる筋合いはない。
「嫌です」
男自身が弄ぶために用意したランジェリーに身を包みながら、手出しもできず、自分一人で快感を追い求めることがこの上ない意趣返しだった。
「しのぶちゃん」
苛立たしげな目はもう秘部を見てはおらず、自分の瞳を射抜く。
「どうして、そんな意地悪するの?」
ざまあみろ。
いい感じで快感を追えている。男の声が意識の彼方に追いやられていき、次第に大胆に指を動かしていく。温かく濡れる秘部を腹筋に擦り付けながら、徐々に昇り詰める。背筋を逸らすと、胸の頂きが真珠に挟まれて刺激を産む。それは下腹部まで降りて、口から熱い吐息が漏れる。
「
……
、あ」
気持ちいい。
このまま、達せられるかもしれない。息を張り詰めたときだった。
「少し戯れが過ぎるんじゃない」
バキッ──鈍い金属音が響くと同時に我にかえった。
は?
さぁっと快感が引いていく。
手錠が壊れた?
驚愕に口を開き、噛んでいたベビードールの裾が唇から落ちる。
柵が曲がり、砕けた手錠の鎖と虚しく破壊される金属がこぼれ落ちる。
「ごめんねぇ、せっかく用意してくれたのに壊しちゃった」
「ーーっ」
身を引く間もなく、自由を得た太い両腕に掴まれ囲われる。両手で抗おうとするが、すでに遅く、そのまま上体を勢い良く胸板に押し付けられる。
「
……
苦しいつ」
太い腕が自分を羽交締めにした。背中の上で、男が両手を動かしている。頬と頬が擦れ、白橡の髪が耳をくすぐる。
「離して
……
っ」
男は優しく頭を撫でた。その感触が不気味だ。
「十分、楽しんだでしょ? 俺を虐めて気分は良かった? 今度はしのぶちゃんが動けなくなる番だよ」
よいしょ、と言いながら私の身体を抱き込んだまま、容易く体重をかけてぐるりと入れ替わる。
「手錠はめられるより、動けないよ。きっと」
あっという間に自分が男を見上げていた。 動けないことなんて言われなくても、いやというほど思い知っている。
「うん。やっぱり、しのぶちゃんを組み敷いている方が好きだなあ」
見下ろす男の笑顔は禍々しい。しかも、この体格差だ。普通ならば、怯まずにはいられない。
「さっき、イきそうだったね」
「
……
言ったでしょう。貴方じゃなくても気持ち良くなれます」
口元の笑みを消して、目を細める。私の両手をシーツの上に縫い留めて言う。
「触らないで。俺がしのぶちゃんに気持ちいいことを教えた身体に、悪い手癖は覚えて欲しくない」
身動きしようとももはや敵わない。まるで標本にピン留めされた蝶の如く、腕に腰をはじめとする身体がベッドの上で捉えられている。
「しのぶちゃんが俺以外ではイけないようにしないと、気が済まないね」
「傲慢
……
ですよ」
虹色の瞳を細めて、にっこり微笑んだ。その表情は笑顔と呼ぶには不穏だ。
「付き合ってくれる?」
そういうと呼吸も全て奪うように、荒々しく唇を重ねた。愛情を示す口づけというよりは、仕留めた獲物の息の根を止める噛み付く行為に近い。口の中にねじこまる舌も容赦はなかった。絡んで、吸う。苦しげな息遣いと、くちゅりと粘液が弾く音がふたりの口の間から零れる。
頭の思考が鈍く、遠くなる。
ようやく男が唇を離す気になった頃には息が上がっていた。唇と唇の間に唾液の糸が繋がりぷつりと切れる。
「
……
あ」
思考が回らず、鈍っていく。
「あれ? もう、のぼせちゃった?」
「
…………
」
とろんとしている表情を見下ろして、男が尋ねる。瞼が重いのは酸欠だけではない。
「ええ
……
薬が効くころですから」
「え? 薬?」
男が驚いた顔をして言葉を発する。
「実は睡眠薬を盛りました」
「本当に? いつ? うーん
……
」首をかしげる。「効かないみたいだけど?」
「
…………
」
禍々しい表情で言う。
「むしろ興奮してる」
自然と口角が上がった。今回ばかりは辛勝したのではないか。
「何も貴方に盛った、とは言ってません」この男を手玉に取った。「私の飲んだ酒に入れたんですよ」
一瞬、時間の流れが止まる。見下ろしている虹の目が見開く。
「
……
」ようやく、思い至ったらしい。「あの、ゲームに負けた時に
……
一気に飲んだ、一杯
……
」
七色に彩る瞳孔が見開いた。
「正解です。強い睡眠薬で、効きも長いんですよ」
「そんな
……
まさか
……
」
動揺する男の前で、わざと大きくあくびをする。
酒と睡眠薬は飲み合わせとしては最悪だ、しかし抜群の効果を発揮する。
「えー
……
」
「あと数分で寝てしまいます、いえ、数十秒でしょうか?」
「しのぶちゃん! 薬、分解して! 本業でしょう!」
「関係ないですよ」
一気に深い眠りに突き落とされる私は、男が何をしようとも起きることはない。穏やかな呼吸だけ繰り返し、表情を変えることなく手足も動かさず、目も開ことはない。まさしく、人形と化す。迎えるのは心地よく、目覚めのいい朝だ。
「こんな俺の前で無防備に寝っちゃっていいの? ぐちゃぐちゃにしちゃうかも知れないよ」
「大丈夫でしょう」筋肉で硬い背中に腕を回す。といっても、広すぎて届かないそれを優しく抱きしめた。「私、貴方のことをそれなりに理解していると思います」
優しく微笑む。
「
…………
」
「いつも寝かさないようにする貴方が、無反応な私で愉しめるわけないですから」
「
……
しのぶちゃん」
甘える、よりは煽るように熱い胸板に頬を擦り寄せた。
瞼を閉じて、優しい声で囁く。
「おやすみなさい」
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