しっかり閉じているはずのまぶたを透かして、朝日が忍び込んできた。まだ目覚まし時計は鳴っていない。一之倉はどうにかして再度眠りの世界に沈みこもうとして、朝日に背を向けるように寝返りをうった。そのまましばらく粘ってみたけれど、意識はどんどん明瞭になっていくばかりだ。どうしたって寝付けそうにない。仕方なく重たいまぶたを開けて、ぐっと伸びをする。それから静かに起き上がった。
窓際で部屋干ししている洗濯物の隙間から、枕元を狙いすましたように日が差し込んでいる。一之倉は小さくため息をついて、まだ五時前を指している目覚まし時計のアラームを解除し、布団から這い出た。ちょっと前までは布団から出るにも一大決心が必要な寒さだったのに、いつの間にか空気が緩んでいる。秋田にもようやく春が訪れようとしている。
窓際の洗濯ハンガーから靴下とタオルを収穫し、静かに部屋のドアノブを回そうとしたところで、背後から唸り声が追いかけてきた。
「……いちのくら?」
「ごめん、起こしちゃった?」
振り返ると、松本がしょぼしょぼと目をこすりながら身を起こすところだった。
「いや……」
普段は寝起きのいい松本が、はんぶん眠ったままのような顔をして布団を這い出してくる。一之倉は踵を返した。四畳半しかない寮の二人部屋では、一歩踏み出せばもう松本の肩に手が届く。寝間着兼練習着のトレーナーに包まれた肩は、まだ布団と同じ温度をしていた。
「まだ寝てていいよ」
「いや、起きる」
今度はやけにはっきりした声でそう宣言した松本が、意を決したように立ち上がった。それから、枕元にきちんと畳んで置いてあったタオルと靴下を手に取る。
「毎日一之倉と一緒に走るって、自分で決めたから」
そう宣言すると、松本は一之倉を追い越して部屋のドアを開けた。松本の背中に、白っぽい朝の光がまっすぐに差している。
一之倉はその眩しさに目を細めて、それから、松本の背を追った。
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