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もろみ(もず味噌)
2026-03-23 07:46:50
3522文字
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セ部屋のデュマオラ
今やる気が無いので本番前まで公開しとくね
『ここはセックスしないと出られない部屋です!』
見覚えのない部屋、丸っこい手書きの文字で書かれデカデカと掲げられたあまりにも馬鹿馬鹿しい看板にオーランド・リーヴは額を押さえた。隣で立ち尽くしているのはオーランドのサーヴァントであるキャスター。
「
……
だとよ」
「ふざけるな
……
仕事中だぞ私は
……
!」
肩を竦めて見せる男は工房で作業中だったはずだが、オーランドも署長室で通常業務中だったというのにわけのわからない部屋にいるのだからそういうこともあろう。業腹である。
「あー兄弟、どうする? 宝具とか一通り試してみるか?」
「どうせあの老害の仕業だろう。であれば他の抜け道などない。対界宝具レベルなら話は別だが」
こんな意味不明なことを仕掛けてくる上に強固で複雑な結界を形成できる相手をオーランドは一人しか知らない。老害。つまり、フランチェスカ・プレラーティ。何を思ってこのようなことをしているのかは知らないが、十中十で嫌がらせか暇潰しだろう。
誠に遺憾ながら、あれを相手に力押しでどうにかできるほどオーランドは有能ではない。己の無力に歯噛みしながらキャスターを見た。苦虫を百匹噛み潰したような顔をしている。キャスター、と呼び掛けると男は一歩足を引く。
「するぞ」
「嫌だね」
即答だった。
いや、気持ちはわかる。オーランドとて前向きな気持ちで提案しているわけではない。聖杯戦争直前という非常時であり業務時間中という緊急時に、警察署長でありマスターたるオーランドが無為に時間を浪費することは出来ない。
──であるならば、キャスターに対して最大限譲歩して条件をクリアするしかあるまい。
「頼む。私は仕事に戻らなければならない。君も、聖杯戦争の行方が見られないのは嫌だろう」
「ああ嫌だね! ったく何で俺がこんなことに巻き込まれねえといけねえんだ!? どうせあんたへの嫌がらせだろ、俺じゃなくてあのファルデウスとかいう奴にしろよ、ふざけんな──男とセックスする方が嫌に決まってるだろうが!」
喚くキャスターに溜め息を吐いて、看板が掲げられた壁に近付く。よくよく見てみると、悪徳業者の免責事項のような小さな字で壁にいくらか文章が書き付けてある。ええい読みづらい。
「
……
身体的な問題は自動で補正される、とのことだ」
「おい生々しい話すんな馬鹿野郎! つーかどこまで補正されるんだよそりゃ、腹ん中勝手にピカピカにされるってことか? それともすぐあんあん鳴くようになるってことか? 勝手に勃起させられるのか? まさかチンコの方を小さくするんじゃねえだろうな?」
「やってみなければ分からん。不都合のないようにしてくれるなら寧ろ有り難いと思いたまえ。いいから腹を括れキャスター」
壁の小さな文字には『男性器を女性器または肛門に入れて両者がオーガズムに達することをセックスと定義付ける』という旨の記述があった。最悪オーラルセックスで、というのも無理そうだ。
オーランドはくるりと部屋を眺め回した。窓や扉はない。通気孔のたぐいも無し。真っ白な独房のような部屋にはベッドが一つ。『オモチャの貸し出しサービス☆』と腹の立つ張り紙がされた冷蔵庫のようなものがあるが、あまり中は見たくない。
キャスターに向き直る。オーランドが一歩詰める度にキャスターも一歩退く。
「
……
君も分かっているだろう。私は指揮官の立場だ。現場を離れるわけにはいかないし、部下を見捨てるわけにもいかない。まして、君を失うわけにもいかない」
ちら、と壁の方を見る。
壁の小さな文字は増えたり減ったりしている。恐らく製作者が思いつきで条件やら何やらを付け足したり消したりしているのだろう。とにかく見た限り現状最悪なのは、『セックスする以外に脱出の術はない』、『ただしセックスの条件を満たすことが出来ない状況となった場合はその限りではない』、『この部屋と外側の世界の時間経過は同一』、『この部屋の中で損壊したものが外でもそのまま』といった点だ。
すなわち──時間の猶予はなく、キャスターの退去を防ぐような補正はない。つまり額面通りに受け取るのであれば、最悪サーヴァントを自害させて脱出しろ、ということになる。悪趣味極まりない。
キャスターは変わらず苦々しい顔をしている。気持ちはわかるが、オーランドも「頼む」と頭を下げるしかない状況だ。
「あ~
……
あんた
……
女になれたりしないか?」
「む
……
そのあたりどうだ?」
キャスターの言葉を受けて、オーランドは何となく看板の方を見て虚空に問い掛けてみる。身体的な問題を自動で補正する、というのがどこまでカバーできるのか。ややあって壁に走り書きのような文字が浮かんだ。『面白くないので不採用!』とのことである。オーランドとキャスターは同時に壁を蹴った。
「チクショウ
……
やるしかねえのか
……
こんなおっさんと
……
」
「言っておくが条件は私も同じだからな」
コートとジャケット、ベストを脱ぐと、どこからともなくハンガーとハンガーラックが出現した。どういう気遣いなんだ。拳銃は念のため枕元へ。続けてシャツも脱いでベルトも外す。
「今更だがずっとモニターするつもりか?」
再び壁に浮かんだ文字曰く、『ルール改正以外は自動生成・自動判定だよ! 真っ最中を覗いたりはしないから安心してね♪』とのことである。まったく安心できない。
「キャスター」
「待て、今覚悟決めてんだよ
……
ああクソ、いや待て、早いなあんた、ベッドに座るんじゃねえ」
「待っても脱出できないのだ、仕方がないだろう
……
」
上半身は裸、下はまだ一応下着だけ履いている。恥ずかしがることでもないので堂々とはしているが、わりと気まずい。
キャスターはいつもの外套姿のまま顔を片手で覆っている。あーだのうーだの唸って一向にベッドに近づこうとしないキャスターに、徐々にオーランドの眉間の皴が深くなる。こうしている間にも外では常に状況が変化する可能性があるという焦燥がオーランドを苛立たせた。
「覚悟くらい早く決めろキャスター、いい加減にしないと私が突っ込むぞ」
「
……
今なんつった?」
「は?」
何かおかしなことを言っただろうか、と指の隙間からこちらを睨みつけるキャスターを睨み返す。しばし無言で睨み合い、先に気を緩めたのはキャスターの方だった。
「
……
あんた抱かれるつもりだったのかよ
……
」
深い溜め息と共に絞り出された声に、オーランドははたと記憶を探る。
そういえば説得に気を取られてどちらがトップでどちらがボトムかなどの譲歩を伝えるのを忘れていた。
確かに、身体的負担で言えば生身であるマスターよりは霊体であるサーヴァントの方がいくらかマシだろう。部屋の補正があるとはいえ、きっと合理的な魔術師ならばそちらを選ぶ。キャスターが身構えるのも無理はない。
「
……
すまない、言いそびれていた。では改めて、君が嫌なら私が抱くが」
「いやいいやめろ、確かに嫌だが嫌ってわけじゃねえ、チンコ突っ込まれるよか突っ込む方がマシだ。あんたの肛門括約筋が俺のチンコ捩じ切らない限りはな」
キャスターが外套姿のままベッドに座ると、光源もないのに不思議と煌々と明るかった部屋が一気に暗くなる。とはいえ、互いの表情はしっかり確認できる程度の暗さだった。だからどういう気遣いなんだ、これは。
身体的な補正があるといってもいきなり突っ込むのは無茶だろうから、肛門の拡張は必要だろう。オーランドが最後の砦の下着を脱ぎながらローションはあるのか、と虚空に問うと手元にポンとチューブが落ちてきた。いよいよ後戻りできないな、と思いながらチューブの蓋を開けようとすると、するりとそれをキャスターの手に掠め取られた。
「キャスター、返せ」
「俺がやってやるよ兄弟、多分尻と腹は綺麗にされてるんだろ?」
キャスターの問い掛けにどこからともなく『ピンポーン』と人を馬鹿にしたような妙に間の抜けた音がした。まったく腹の立つ部屋だ。
何故だか知らないが出しているらしいやる気を削ぐこともないだろう、とオーランドはキャスターに委ねることに決めた。尻の穴を他人に晒して任せるのはかなり心許なくはあったが。
「俯せの方がいいか」
「あ~
……
いや、このままでいい。あんた無理しそうだからな」
痛かったり辛かったりしたら右手上げろ、と歯医者のようなことを言いながらキャスターは外套を霊体化させた。
枕を一つ腰の下に差し込まれて、オーランドは小さく息を呑んだ。グチャグチャとローションを握り潰す音がする。
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