roku
2026-04-10 21:00:00
1651文字
Public 松エジ
 

普通のデート【松エジ】

・社プ69
・映画館デートする話
・ククvol.3開催に合わせて書いた松エジ

「ねぇ松本さん。今度の休み、普通のデートしましょうよ」
ソファで寛ぐ沢北がこうして松本を誘うことは珍しくもなんともない。むしろ松本の中では2人でいることが当たり前となっているのであえて口にしなくともというところだった。が、今回引っかかったのはデートに〝普通の〟と沢北が付け加えていたことだ。
……普通の?」
「そう。いつも目的地なく車で出かけるじゃないすか」
「ドライブも立派に普通のデートだと思うが?」
「そうなんですけど!そうじゃなくて!」
松本の言うことはもっともだが沢北曰く〝デート〟と検索して出てくるようなベタなデートがしたいらしい。ドライブもそれに当てはまるはずだがと腑に落ちない松本だったがひとまず「どこに行くんだ?」と訊ねてみた。すると少し考えた沢北は「映画館とかどうすか?」と質問で返した。
「お前2時間もじっとしてられるのか?」
バスケ選手としてコートに立つ沢北の集中力は半端ないが、恋人である松本といるときの沢北は完全にオフであり集中力の欠片も持っていないのだ。そんな沢北が2時間もの間じっとしていられるとは思えなかった。
「はぁ?オレのこと何だと思ってんすか?2時間ぐらい余裕っす!だから映画でいいですよね!」
「オレは別に構わねえよ。見る映画はお前が決めろよ」
沢北はスマホを手に取り近くの劇場を検索し上映中の映画をチェックした。正直言えば作品は何でもよかった。ただ松本と映画館デートという普通のデートがしたかっただけなのだから。
そんな沢北が選んだ作品は話題となっている恋愛映画。その方がより普通の恋人感がでるという単純な考えからだった。ポップコーンとドリンクを買い、背の高いふたりは周りに迷惑がかからないよう一番後ろの席を取った。本編前の予告を興味なさげに眺める沢北の手はポップコーンと口を往復している。本編が始まると少しは興味を示した沢北だったがそれも束の間、あっという間にジュースとポップコーンを空にし、その手を松本の手に重ねた。が、松本は視線ひとつ寄越すことなくスクリーンに目を向けたまま。それにムッとした沢北は指先で松本の手の甲をなぞると、そのまま指を絡めた。
こっち向いてよ。そう言わんばかりに。
それでも松本は、映画に夢中なのかはたまたあえて沢北に意識を向けないようにしているのか、どちらにせよまっすぐ前を向いたままだ。一瞬でも視線を向けることすらしてくれない松本に対し沢北は大胆な行動に出た。少し腰を浮かせて松本の視界を遮るように覆いかぶさると唇を重ね合わせた。松本の眉根がきゅっと寄る。その表情かおは「何やってんだよ」と怒っているようにも呆れているようにも見えた。だが沢北はそれを見ないようにすっと目を伏せ松本の唇を割り舌を滑り込ませた。松本の口内で行ったり来たりを繰り返す長い舌はなんともたどたどしい。松本の視界は大きなスクリーンではなく必死に構ってと主張する可愛い沢北の顔でいっぱいだった。色んな意味で我慢の限界を超えた松本は繋いでいる手に力を込める。ピクッと反応した沢北の身体。沢北が逃げてしまわないように左手で後頭部を捕え、蠢く舌を絡め取った。沢北の口から甘い息が漏れる。
「沢北。映画の途中だから声は抑えろよ」
小さな声でそう忠告し、沢北の唇を奪う。
耐えきれなくなった沢北は涙目になりながらふるふると首を左右に振った。
静かに息を整える沢北。そんな沢北を横目で見ている松本の口角が緩やかに弧を描く。返り討ちにあい噛みしめた唇はふたりの唾液で濡れていた。
上映が終了し明るくなった館内で、沢北は真っ赤に染まった顔を見られまいと俯いた。
「そうか。これがお前の〝普通の〟デートってやつか」
覗き込む松本の声が弾んでいる。
「ちがっ!これは映画が思ったよりも面白くなかったからで……
沢北はごにょごにょと口を動かし視線を泳がせた。そんな言い訳にほぉと目を細めた松本は「それでこれはどうすんだ?」と沢北の下半身の膨らみに手を滑らせた。