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蝋爛
2026-03-22 13:56:22
1287文字
Public
B
彼方を立てれば此方が立たぬ
小話 2026/03/22
────
依頼をこなすうちに夜も更け、眠りに付くべく自室へと帰る。暗い部屋。今日は居ない、と内心ほっとした。
だが、自室の照明を点けようと手を伸ばした瞬間、奥から微かな物音が聞こえてきた。──賊にでも入られたか。念の為背に掛けた幻具に手を伸ばす。
耳を澄ませ、悟られないよう歩みを進める内におそらく寝所にいるであろう気配が何かを発した。
「ひと〜つ
……
ふた〜つ
……
」
聞き覚えのある声に、またかと思いつつも安心し警戒を解く。ようやく照明を点け確認すれば、ベッドにもたれかかっているいつもの姿が目に入る。
「何してんだ」
「あ、おかえりなさい。今ね、数を数えてたんです。どんぐりの」
指された先に視線をやる。ベッド上は更地にされ、幾つものエーコンが几帳面に等間隔で敷き詰められていた。いやおかしいだろこの数。ざっと100はあるだろうそれを視界の端に寄せこの現状を作り出した犯人を見やれば、
……
自慢げな顔をしてこちらを見ていた。
「いっぱい集めたんですよ!つやつやで綺麗でしょ」
ひとつひとつつまみ上げ、これは長くてつやつやだの、丸くてつやつやだのと説明が始まる。どこからどう見ても同じにしか見えないそれをどう見分けているのかと感心はするものの、全て聞かされる頃には夜が明けているというのは非常に困る。一刻も早く寝床を取り戻したい。
「とりあえずわかった。その大事なものを潰されたくなければすぐに片付けろ」
「まだ終わってないよ〜!でもそれは嫌なのでしまいます」
大量のエーコンを両腕でかき集めて、そうしたそれらを何処に持っていくのかと思えば
……
側にあったチェスト?何故だか嫌な予感がした。
「おい待て!まさか」
「えぇ?いつもここだよ。ここにしまってるんだぁ」
「クソ、どけ!」
はぁいと軽やかに避けたのを確認してチェストを開ける。──うわ。後ろからも「ぴぇわ」という悲鳴。
そこにしまわれていたであろうお気に入りたちからは
……
案の定、虫がわいていた。思わず顔を覆う。
「ぼくの大事などんぐり〜!うわぁん」
「俺のチェストをどうしてくれるんだ
……
」
これをこのままにしておくわけにもいかない。不快ではあるが引き出しを抜いて外に出る。何か言っているがそれどころではないと無視。リリーヒルズ傍の森へひっくり返しに行った。
戻った先ではめそめそと未だにエーコンを抱えていたが、今度はこれの処遇をどうするか考えねばならない。またそこに入れられても同じ事になるだろう。
「お前はそれをどうしたいんだ」
「大事にして、みんなに配ったり
……
色々
……
」
「ならせめて防腐処理をしろ」
「なるほど!」
閃いたような顔をして鍋を取り出す。何やらトームストーンで調べ出しているのだが、手段を見つけたとして今からやるのは勘弁してほしい。
「俺は寝たいんだが」
「じゃあ向こうでやりますね」
ふふんと鼻歌を歌いながら囲いの外へと移動していった。
無事に寝床は取り返せたものの安眠は何処かへと去っていく。余計なことを言ったな、と少し頭が痛くなった。
────
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