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ugr28
2026-03-22 13:55:19
2060文字
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プロローグ
「ライダー、武田
……
晴信だ。お前の召喚に応じ参上した」
主人の威厳のある声が響く。どこか聞き覚えのある少年少女が感嘆の声を上げていた。
「戦国時代最強の騎馬隊を率いたとされる甲斐の武将、武田晴信さんです!大変心強いですね、先輩!」
「ようこそカルデアへ!
……
晴信さん、俺たちのこと覚えてますか?」
「今魔川軍や北の軍神との戦いのことか?俺の国を舞台にお前たちと共闘したんだ。忘れるはずがなかろう」
晴信様の返事を聞いた少年が笑い、何か喋っている。喜びの再会、といったところであろうか。心なしか晴信様のお声も弾んでいて、心地の良い会話が続いた。
「
……
黒雲、お前も出てこい」
不意に名前を呼ばれ、光が差し込んだ。晴信様が胸ポケットから車の
鍵
キー
を取り出し、放り投げた。その瞬間に合わせて、空中で己の姿を馬に変えて着地する。ドシン、と音と共に床が揺れた。
眷属となって得た新しい身体は生前より遥かに大きく、大人を二人乗せても走れる自信があった。晴信様の宝具の一部である赤い甲冑を纏い、黒毛を炎の如くたなびかせる。
「我が愛馬、黒雲だ。よろしく頼む」
そうして己─名を黒雲という─はあたりを見渡し、首を下げて一礼をした。部屋には晴信様と会話していたと思われる少年少女だけではなく、大人も数名揃っていた。その中で、小麦色の頭髪と髭を持つ男がうむむ、と唸った。
「こいつがあの車の姿にもなる馬か。いつか性能を試してみたいものだ」
「明日、早速メディカルチェックをさせてもらうよ。でも今日はこのカルデアを歩き回ってきてほしいな。なにせここには古今東西、老若男女の英雄が揃っているからね!ぜひ仲良くしてほしいな」
美術品のような美しさを持つ少女が笑いながら晴信様に手を差し出す。晴信様もその手を取り、握手を交わした。その光景を己は静かに見守っていた。
この第二の生で、絶対に忘れられない光景だ。
人理継続保障機関カルデアに我が主人が認められ、その一員として招かれたことは黒雲にとっても誇らしいことだった。そしてまた晴信様と一緒に戦へと身を投じることができる。胸が躍るような気持ちだった。
「
……
古今東西の英雄か。先の戦いでは、森長可、森蘭丸。新八の同僚である沖田総司という剣士もいたな。そして
……
」
「お待ちしてましたよ、晴信!」
晴信様が言葉を濁すのと同時に、可動式の扉が開いて女が部屋に飛び込んできた。白と黒の長髪を靡かせ、手には槍を携えていた。まっすぐと晴信様のもとへ歩み寄り、萌葱色の瞳を細めて笑っていた。
「
……
景虎か」
「ええ。息災そうで何よりですよ、晴信」
晴信様と同じ時代を生き、五度にわたり戦を繰り返した戦国武将──上杉謙信、もとい長尾景虎だ。
2人が対峙したことにより部屋の空気は一気にひりついた。桃色の髪の少女は目を輝かせているが、そのとなりの少年は心配そうな表情を浮かべている。
「まずは一献、といきたいところですが、それよりもあなたの腕が鈍ってないか確かめないといけませんね!
……
マスターのお役に立てないような実力であれば、すぐに、退去してもらいますよ!」
「
……
ふん。俺より少し先にやってきたからといって調子に乗るなよ」
長尾景虎は顔こそ笑っているが、饒舌しがたい凄みがあった。軍神を自称するだけあってその一挙一動が洗練されている。目を離せば、次の一歩を見逃したら、すぐに心の臓を突かれてしまいそうだ。晴信様も腰から吊り下げていた軍配を抜き出し、構えようとしたところに。
「こーら!私闘は禁止だよ!長尾景虎!」
美術品の少女が勇敢にも2人の間に割って入り、腰に両手を当てた。
「もしシュミレーター以外の場所で喧嘩をしたら、君の酒瓶をぜんっぶ割るからね」
「にゃ、にゃんと
……
それは勘弁を、ダ・ヴィンチ
……
」
少女に何か言われたらしい景虎は露骨に困った顔をする。どうやら士気が下がったらしい。それでも様子を伺っていると、ふと目が合った。
「おや
……
後ろにいるのは黒雲ですか?ならば放生月毛、あなたもご挨拶を」
景虎が柔らかく微笑むのと同時に、音も立てず一頭の馬がその横に並んだ。こちらを凝視したのち、首を縦に降ろした。その名の通り月の色をしたたてがみがさらさらと流れていく。
長尾景虎の愛馬、放生月毛だ。
土埃の舞うあの日、あの戦を思い出す。衝撃と熱は書に残り、絵師が芝居家がこぞって取り上げて後世の民に浪漫として語り継がれた、我が主人、武田信玄と上杉謙信の一騎討ち。その舞台、武田の本陣まで自身の主人を導いた立役者。
──そして、戦場から逃げた不忠者。
カルデアでは古今東西の英雄が揃い、生前は敵同士であったとしても、呉越同舟という言葉のとおり共闘する場所だと聞いていた。当時を知る者たちからすれば天地のひっくり返る出来事かもしれないが、人理のためという崇高な理念を掲げ手を携えて災厄に立ち向かうのだ、と。
しかし黒雲は放生月毛を心の底から嫌悪していた。決して相容れないと軽蔑の眼差しを向けた。
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