匣舟
2026-03-22 09:06:35
1244文字
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最後の最後でツメが甘い

SSの鉢乱。乱の一人称視点です。いつも鉢に翻弄されている乱がやり返す話。


 三郎先輩ってば、いつも私にいじわるしてばかり。そのいたずらを見ているいつも三郎先輩の隣にいる不破先輩は乱太郎がかわいいからついいたずらしちゃうんだよ。って苦笑いして三郎先輩のことをフォローするのがいつものパターンになりつつある。
 不破先輩はいつも、三郎にとって乱太郎にいたずらをすることがアイツにとっての愛情表現なんだよ。って言うけれど、私はそれが本当にそうなのか、まだよくわかっていない。だって、それならちゃんと言葉で言ってほしいし、行動で表してほしいんだもの。
 だからね、今日は私から三郎先輩に愛情表現をしてみようって決めたの。いつも三郎先輩にやられっぱなしの私だけど、今日は私が三郎先輩をドキドキさせてやるんだ!と、意気込んでみたものの、いざとなるとなかなか難しい。
 私は三郎先輩をドキドキさせるような愛情表現ってどんなのがあるか考えてみたけど、全然思い浮かばなかった。手を繋ぐだとか、ぎゅーっと抱きしめるとかでは三郎先輩はドキドキしないだろうし、でもチューをするのは私が多分恥ずかしがって無理だと思う。
 じゃあ、私にできることってなんだろう?って廊下歩きながら考えていると、廊下の曲がり角に差し掛かったところで誰かにぶつかってしまい、体が後ろに倒れそうになった途端、乱太郎っ!という声と共に私の手を力強く掴まれて、そのままグイッと引き寄せられた。
 来たる衝撃に耐えようと目を閉じた私に待っていたのは、ドンッ!という衝撃ではなくて、ふに。という柔らかい衝撃が私を襲った。あれ?痛くない?と思って瞼を開けると、私の目の前にはすぐ近くに三郎先輩の顔があって、気づけば、私の唇と三郎先輩の唇が重なっていた。
 きっとぶつかった時に三郎先輩が私の手を引いてくれて、私の顔の着地がたまたま先輩の顔だったという何とも奇跡のような出来事。私は、一瞬何が起こっているのか理解できなくて、ポカンとしながらふと三郎先輩を見てみると珍しく顔が赤くなっている彼が私の瞳の中に映った。
見るな。」
「嫌です!」
 だって三郎先輩が赤面するなんてないから!とあっけらかんと言う私に向かって三郎先輩は小さく舌打ちをすると、私を引き寄せて自分の顔を見させないようにしてきたから、私は迫り来る手を掻い潜って、三郎先輩のかわいい赤面を目に焼き付ける。
 ふふ、かわいい、先輩。なんて言って微笑んで油断している私を見たのかいつの間にか赤面していた三郎先輩の顔はいつもの私にいたずらするときのニヤリ。とした顔に戻っていて、その顔が私の顔の前に来た時にはもう遅くて、そのままキスをされる。
 息継ぎもさせてくれない乱暴なキスに私は翻弄され、気づけば三郎先輩に抱えられていた。はっ、はっ。と熱のこもった吐息を出す私に対して三郎先輩は口元だけで笑いながら、さあ、私のどこがかわいいか聞かせてもらおうか?と耳元でそう私に囁く三郎先輩に対して、私は、先輩のいじわる。としか返せないのであった。