匣舟
2026-03-22 09:03:23
1806文字
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早く答え合わせをさせて

SSになりきれなかった利乱です。乱の一人称視点。
乱が恋に気づくまで奮闘する利の話

 私が利吉さんに会えるのは、決まって利吉さんが山田先生に家に帰るように催促をする時と、学園長先生たちに受け持った仕事の報告をするときだった。会えるのは大体二ヶ月や三ヶ月に一回で、多い時は一ヶ月に一回会えたりする。
 私はいつも利吉さんが来る日、補習帰りだったりはたまた保健委員の当番で医務室にいたり、日向ぼっこをしながら寝ていたり、常に違う場所に居たりするのだけれど、いつも利吉さんは私のことを見つけて喋りかけてくださるのだ。
「やあ、乱太郎。」
「あ、利吉さん!」
 私は利吉さんを見つけると、勢いよく彼に飛びつく。私が走って飛びつくのを予想していたのか、利吉さんは両手を広げて、少し勢いをつけながらも私をしっかり抱きとめて、そしていつものように乱太郎はいつも元気いっぱいだね。と笑ってくれる利吉さんに、私はいつも照れてばかりだけれど、利吉さんに抱きつくのはすきだからやめられないでいる。
 それからはいつものように隣で座って色んなことを話す。利吉さんと私の話はいつも他愛もないものばかりだった。例えば私の友達のこととか、最近の委員会事情とか、授業のこととか、そんな些細な話ばかりだったのだけれど、不思議といつも会話が途切れることはなかった。
 でも、きっと私たちの会話が途切れないのは、利吉さんの話を聞くのが上手いからだと思う。私の話に相槌を打ってくれたり、質問を投げかけてくれたり、楽しそうに聞いてくれたりする利吉さんに、私もなんだか嬉しくなって、自然とたくさんおしゃべりをしてしまうのだ。
 利吉さんとおしゃべりすることは楽しいけれど、ずっと私の中にとある疑問がひとつ、いつしか思い浮かんでいた。
それは、利吉さんが忍術学園に寄る度にどうして私を見つけてくださるのかだ。
 最初はただの偶然だとあまり気にしていなかったのだけれど、利吉さんが私の元へとやってくる度に、不思議に思うようになってしまった。だって、利吉さんは本当に毎回、必ず、どこにいても私を見つけてくれるから。
 だから、私はもう何度目か分からない利吉さんと会う日に、勇気を出してその疑問を利吉さんに投げかけてみることにした。
「利吉さん。」
「ん?なんだい?」
「いつも、どうして私がいる場所が分かるんですか?」
 そう私が言った瞬間、利吉さんの瞳が見開かれたような気がしたかと思えば、私の顔の数センチ先に利吉さんの整った顔があって、どうしてだと思う?と微笑んでいる姿が瞳に映った。
 突然のことに驚くよりも先に、綺麗すぎるその微笑みに胸がどくんと大きく跳ね上がるとともに、私の心臓は壊れるのではないかと思うほどバクバクと音を立て始める。そんな私を見透かしているかのように、利吉さんはさらににこりと微笑んだ。
 そんな利吉さんの瞳から目が離せずにいる私は、顔は熱くて燃えてしまいそうで、変な汗まで出てきて、頭の中がぐちゃぐちゃになっていて、そんな頭で考えられるはずもなく、出てきた言葉はか細いものだった。
「わ、わかりません。」
「まあ、そうだろうな。」
 何故だろうか。なんだがすごく得意げな顔をしているような気がする利吉さんに、ほんの少しだけむっとしてしまう。私はこんなにもいっぱいいっぱいになっているのに!なんでこの人はこう余裕そうなのか、まったくわからない。
 そんな頬を膨らませている私を見て、利吉さんはごめんごめん、と全く申し訳なさそうにせず、再びにこりと笑いながらこう言った。
でもね、答えは教えてあげない。」
「え?」
 そんな意地悪な利吉さんに、思わず利吉さんの方を見上げれば、視界に映ったのは、真剣な表情をした利吉さんだった。
乱太郎。きみが、自分で気づいてくれなくちゃ意味がないんだよ。」
 だから、今はこうしてきみの元に通ってあげる。きみがこの意味に気がつくまで。でも、いつか、きみがこの意味を分かる時が来たら
乱太郎、きみが私のことを見つけて、会いに来て。」
 その時まで、ちゃあんと待ってあげるから。だからね、約束。そう言いながら小指を差し出す利吉さんは、私が見蕩れるほどにとても綺麗な微笑みを浮かべていた。
 その微笑みにつられて、私も小指を差し出す。約束したからね。絶対に会いに来てね。と小指を絡めながら笑う利吉さんに、私も会いに行きますよ。と言いながら笑い返すのだった。