kgsg_hirg
2026-03-21 16:46:27
1141文字
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芽吹(こんな風に・眩しい)

ワンドロワンライ3/7分

春とは言うがまだ肌寒い。これから暖かくなるがまだ冬物を仕舞うのは早いだろうか。
その一方で庭先の小さな桜の木がほのかに桃色かかった蕾を芽吹かせている。
「これから催花雨が降って花が咲き始める」
「さいかう?」
「この時期頃に雨降って一気に花咲くやろ? その雨のことや」
「へぇー」
知らなくても生きていけるこの知識を当然のように有しているのは農家だからなのか単純に興味があるからなのか、おそらく後者だろう。そしてそんな知識を共有されてまたひとつ彼の世界を一緒に見ることができると思ってしまった。
思えば俺のこの気持ちが芽吹いたのもこんな時期だった気がする。それからじわじわと咲こうとして失敗し続けてきた。
今日だって結局仲のいい後輩の枠で訪れているわけで。
最近は表情筋が鍛えられて顔に出ることがなくなった。しかし逆にこの人の表情筋が俺の前で仕事しなくなってしまい、……そうして俺の表情筋はまた鍛えられていくのだ。
「北さんの話聞いとると賢なった気ぃします」
「話聞いただけで賢ぉなるか。まぁ知識は増えるけど」
「あとは気にしてへんかったことにも目ぇ向けるようになって……なんかええなって」
「ふふ、なんかええか」
ほら、この綻んだ表情。この顔は親しくなければ見られない。この数年で一番見ている自信がある。
「これ咲いたら花見しよか」
「ええですね。料理は任せてくださいよ」
「花より団子やな。泊るんやったら月見酒できるで」
「んぁあ! 魅力的なお誘い!」
気を許してくれているのはわかるがその相手が自分に気があるなんて思いもしないだろう。花見までに関係性を帰れらたらまた変わるだろうけれども。
風が吹いて視界の端で桜の枝が揺れて顔をそちらに向けた。雲の隙間から桜を照らす光が差し込んで咲いていないのに幻想的に魅せている。
「治」
今俺の視線は忙しい。声をかけられて彼の方を向くと柔らかな光を受けて灰色の髪を輝かせ、俺に向かって微笑んでいる。
目が、眩んでしまう。
「はぁ……北さんってホンマ変わりましたよね」
「そうか? そうやとしたらお前に影響されたんやろ」
「ええ? ホンマそんなこと言わんといてくださいよ……
俺に影響されたと言うほどだから彼にとっても今それほど近い存在になったのだと思っているのだろう。
すると彼は少々不思議そうに俺を見返した。
「お前だって俺の影響出とるやろ。そやったら俺が影響されへんわけないやん」
くらくらする。こんなにも近くなった相手からさも当然だろうと言われたら勘違いしてしまう。彼は俺をどうしたいのだろうか。
……小悪魔や」
「はぁ?」
いつぞやに芽生えた恋心がどんどん膨らんでいく。この木の蕾のように花を咲かせられたならいいのにな。