ひよこ
2026-03-21 14:31:04
3017文字
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謝罪はキスで

・サンルシのエイプリルフールネタ
・ルシフェル復活時空

 ルシフェル様は団に所属してから少しずつ空の民との交流を深められるようになった。戦闘ができない代わりに団の炊事や掃除などの役割に勤しまれていて、その際に色々な者と話をしているとの事らしい。それ自体はとても好ましいと思っているのだが、何やらルシフェル様に不必要な知識を入れる輩がいるらしく、手を焼かさせる時もあるのだ。ローアイン達からの悪影響で、帰宅した俺に対して「今日はDoだった?」とか「どぞどぞおくつろぎください」などと、にこやかに言葉をかけてくるルシフェル様を見かける事態になった時もある。解釈不一致にも程があり、危うく泡を吹いて倒れるところだった。世俗から掛け離れた厳か且つどこか可愛さを滲ませるような話し方をされるルシフェル様を愛おしく感じている俺にとっては死活問題である。そこで、毎夜ルシフェル様にその日起きた出来事を詳しく説明頂き、不要な情報の断捨離を行うことにしたのだ。こんな事を言うと束縛系厄介彼氏と思われるかもしれないから予め否定しておく。進化にも良い進化と悪い進化があり、あくまで俺はそれを見定めて導いているだけだ。


 その情報整理の一環でウェールズにハローランドという観光地がある事を知った俺はルシフェル様に今度遊びに行かないかと誘ってみた。それを聞いたルシフェル様は目を輝かせながら賛同してくださった。しかし、ハローランドに遊びに行く当日の朝、部屋に戻られたルシフェル様は昨日までとは打って変わってとても悲しげな様子でこうおっしゃられた。

「サンダルフォン……。実は急な用事が入ってしまい、ハローランドに行けなくなってしまった。本当にすまない」
「急な用事……ですか?」
「ああ。急な用事を受けたのだ」

片腕を抑えつつ、俺から目を逸らすルシフェル様。様子がおかしい。いつもであれば、用事についての詳細な説明と埋め合わせの手段を提案してくれているはずだ。……もしかして、嘘か?と考えたところで合点がいく。そうだった。今日はエイプリルフール。嘘をついてもよい日なのだ。だからといってあれほど楽しみにされてた観光を行けないなどと嘘をつかなくてもよいのに……。演技が迫真に迫るものだったため気付くのが遅くなってしまった。ルシフェル様なりに真剣に空の民の文化に向き合った結果なのかもしれない。だからといって時と場合を選ぶ必要があるだろう。仕方ない。ルシフェル様に少しお灸を添える事にした。

「貴方とハローランドに行けること、とても楽しみにしていたんです。あーあ。残念だなぁ」

それを聞いたルシフェル様は目を丸くする。俺がすぐ嘘に気付くと思っていたのだろう。

「サンダルフォン……。あの……
「それにしてもルシフェル様に急用を言い付ける不敬な輩は一体誰なんですか?俺が直談判して、今すぐ撤回させます!」
「そ、それは……

歯切れ悪く答えるルシフェル様。想定と違った言葉が出てきたのか焦っていらっしゃる。貴重な焦り顔をもっと見たくなり、ルシフェル様のお顔付近の壁に手をつけた。所謂壁ドン状態である。俺の方が背が低いため、いまひとつ格好がついていないが。

「ルシフェル様はお優しいから俺に教えられないのですよね?無粋な輩に遠慮なぞしなくていいんですよ!さあ、一体誰から言われたんですか?!」

笑顔をより一層近付けて、ルシフェル様に問う。その勢いに怯んだのか、嘘つき者は遂に白状した。

「サンダルフォン。実はハローランドに行けないと言うのは嘘なのだ。本当にすまない……
「えっ。嘘だったんですか。なぜそのような事を?……ああ、今日はエイプリルフールか。全く気付きませんでした」

素知らぬ顔で言葉を続ける。

「ルシフェル様、知っていますか。エイプリルフールは嘘を付いてもよい日ではあるのですが、些細な嘘でないといけないのですよ。嘘だと分からないと、トラブルの元になるでしょう?」
「そうなのか。知らなかった……
「ええ。嘘をすぐに見破られなかった場合、謝罪を行うのです」
「謝罪?」
「ええ。ただ言葉で謝罪するのではありません。相手との関係性にもよりますが、恋人以上の関係の場合は……謝罪のキスが一般的ですね」
「謝罪の……キス」
「はい。キスの時間が長いほど謝罪の効果として認められます」
「そ、そうか。分かった。私からの謝罪 ・・を受けてくれるか?」
「ええ。勿論」
「では、目を閉じてくれないか」

ルシフェル様はお顔をほんのり赤めつつおっしゃった。目を閉じ、視覚情報を断つ事でそれ以外の感覚が研ぎ澄まされる。ルシフェル様の吐息が段々と近付いてきて、それから唇に暖かく柔らかなものがあたった。キスは俺からする場合が多く、粗相の無いよういつも少しだけ気を使っていた。だが、今日はその必要はない。ルシフェル様からの誠心誠意の謝罪 ・・をただ一身に受ければよいのだ。ルシフェル様の舌が俺の口に入り込み、俺の舌と絡み合う。正常な思考ができなくなる。とても気持ちがいい。ただひたすら愛しいヒトからの謝罪 ・・を受け止めた。

 ルシフェル様からの謝罪 ・・を受けるのに夢中になってしまい、気付いたらお昼どころかおやつの時間になっていた。今から行っても遅くなってしまうのでハローランドに行くのはまた今度にしましょうと声を掛ける。ルシフェル様は少しぼんやりとした表情で同意なされた。まだ余韻に浸っているのかもしれない。予定が無くなってしまったためこの後は何をしようかと考えているとルシフェル様が声を掛けてきた。

「サンダルフォン。一つ言いたい事があるのだが」
「はい。なんでしょう」
「私の勘違いかもしれないが……君は私の嘘に気付いてたのではないか?」
「えぇ?気付いていたのにキスを続けていたのですか?」

ルシフェル様は目蓋を数回瞬きさせた後、リンゴのように顔を真っ赤にさせる。

「君が気付いていない可能性も充分あったから私は誠心誠意謝罪 ・・をしたのだ。意地が悪いぞ、サンダルフォン」
「すみません。でも貴方もいけないんですよ。貴方とハローランドに行くのを楽しみにしていたのは本当ですから」
「そうだな。今度は必ず行こう。それでだな、サンダルフォン」
「なんでしょうか」
「君も嘘をついたのだから私に謝罪 ・・が必要なのでは?」
……そうでした。申し訳ありません。」

僅かに瞳を潤ませながらお話しされるルシフェル様。あんなに長い間キスしていたのにまだ物足りないとは、なんて欲深い方なんだろう。俺と一緒だ。

「では、目を閉じてくださいますか?心を込めて謝罪 ・・いたします」

その言葉に従い、ルシフェル様は期待に満ちた瞳に蓋をされた。今日は本当に良い日だ。色々なルシフェル様を堪能できて。しかし、エイプリルフールに謝罪のルールなどないのにまだ気付かれないのだろうか。いや、どうだろうか。もしかしたらルシフェル様も……

「サンダルフォン?謝罪 ・・はまだか?」
「ああ、すみません。少し考え事をしていました」

目を閉じたまま催促してくるルシフェル様に慌てて謝罪する。まぁ、こちらの謝罪ではルシフェル様を到底満足させられはしないだろうが……。今度こそ、俺からの誠心誠意の謝罪 ・・で満足して頂かなくては、と思案しながら濡れそぼった唇にかぶりついた。

終わり