Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
山茶花
2026-03-21 13:07:49
5000文字
Public
[シルデュ]シリアス・ダーク系
Clear cache
葡萄色陶酔【209SR015】
穢しゆく話/4500字程度/感情重ため
*ユニーク魔法の設定捏造してます
*香椎モイミさんの楽曲「葡萄色陶酔」にめちゃくちゃ影響受けてます。楽曲にリスペクトを込め、タイトルもお借りしております。
*なのでタイトルは「葡萄色陶酔(えびいろとうすい)」と読みます。
以上すべて大丈夫な方はスクロール↓
植物園の片隅。薫る葡萄色(えびいろ)の粒をひとつ摘まみ、俺は、口に含んだ。独特の深みを含んだ甘みと酸味が、口の中に広がる。
――
これは、俺の重ねた罪の味だ。
まずは此処に、俺の置かれた残酷な世界のことを言葉にするとしよう。
俺の世界には、親父殿がいた。マレウス様がいた。幼馴染であり、弟弟子の、セベクがいた。
家族と過ごす日常、穏やかなものであった。ナイトレイブンカレッジに入学して、友達が増えた。
まだ、穏やかなものであった。
だが、2年目。ソイツは現れた。木陰でうとうとと昼寝をする俺の前を、「急がなきゃ」と走り回って。
一瞬、俺の方を振り向き。その瞳を目に映した俺を、狂った世界<ワンダーランド>へと導いた。
とはいえ、俺も最初から狂い咲いていたわけではない。
俺は彼を目に入れ、心を奪われたその日から、デュースへの切なる想いを胸の内に秘め、重ねるようになった。
彼にとって手本となれるような良き先達であれるようにと、日々の努力と会話をこなした。
順調だった。順調な純情だった、何もかもが。
だが、ある日。彼が薄く小さな唇を快活に大きく開けて、零しているのを耳にした。
「好きな人、って
……
。い、いいだろ別に! いてもいなくても! お前らには関係ないっ!!」
いつもつるんでいる学友たちと、デュースの会話。その中で俺だけに響いた、その言葉。
『デュースの、好きな人』。
いつかどこかで、誰かが。俺ではない、誰かが。アイツを求める、好きになる。
……
俺ではない誰かが、アイツを求め、ものにし、触れ、穢す、のか?
耐えられなかった。
心が、葡萄色(えびいろ)に濁っていくような心地がした。
ワイングラスの縁まで並々と、その液体を注いでいくかのように。
デュースといつか隣りあって共に笑い合うような、そんな向こう側の景色が見えるほど透明に澄んでいた俺の心は、赤黒く濁っていった。
グラスに罅(ヒビ)が入り始めた、そんな折のことだった。偶然なのか、それとも俺の強い想いが引き寄せたのかは分からないが。
デュースの夢に、入れた。彼が俺を親しい先輩だと思い、心を開いていてくれる証拠だと、胸の内に白と黄緑に彩られた花が開き、葡萄の蔓が巡り蔓延るような想いがした。
俺はその夢の中で、デュースを見ていた。じっと、ただじっと、見つめていた。
そうすると、夢の中にいたデュースの方が俺に気づいて、駆け寄ってきた。
「せんぱい」と、小さく柔らかそうな唇で、舌足らずに呼びかけてくる姿が可愛くて。
じっと見つめ返してくる純粋な瞳が、可愛らしくて、愛おしくて。
……
気がつけば、キスをしていた。
驚いた顔をするデュースに、俺は、すまないと言い、もう一度キスをした。
二度目のキスは、欲じゃなかった。
口の中に、葡萄色(えびいろ)の液体を含んでいて、それを、キスを通してデュースに飲ませた。
何故ならこの液体は、緊急用の手段だったから。
夢の中で取り返しのつかない過ちをしてしまった際など、その夢の記憶を忘れさせるための緊急手段として作ったものだ。
夢の世界なら、この液体はいくらでも、どこにでも、イマジネーションで作りだせる。
もちろん、俺の魔力から作られたものだ。効きに個人差はあるだろうが、デュースなら問題ないだろう。
液体を飲まされたデュースはぽうとして、ガラガラと、忘れさせられた夢が崩れていく。
俺は、自分も目を覚まそうと、自分の頭を殴った。
翌日。デュースに出会った。
「シルバー先輩、おはようございますっ! 今日も良い天気ですね!」
「ああ、おはよう。
……
昨日は、よく眠れたか?」
なんでもない顔をして、デュースの調子を尋ねる。少しの罪悪を感じながら。
「はい! ぐっすりでした! 疲れてたのか、夢のひとつも見なかったです!」
「そうか」
良かった。デュースはやはり、あの夢のことを覚えていないみたいだ。
だが、安堵の海に溺れる俺を差し置いて。デュースはその後、たった一言で。俺の理性を壊した。
「あ、でも。なんか、良いことがあったような気がするな!
……
気がする、だけだけど!」
なので今日もとりあえず一日頑張ろうと思います、とデュースは言い、去った。
その場にひとり、残された俺は。
「いいこと、はっ、そうか。いいこと、なのか」
なら
……
、遠慮はいらないな、もう。と、口の端が歪むのを自覚しないように努めた。
それからも、俺の罪は続いた。
デュースが友人と楽しそうに話していれば、肩に触れられていれば、距離が近ければ。
その度に、夢の中でデュースに向けてくちづけて言った。
「よそ見をするな。お前は俺のものだろう?」なんて。
現実では絶対に言えない言葉を、五月の驟雨のように与えながら。
デュースが3年生の先輩方へ無邪気に懐いていれば、衣服を貰っていれば、顎を引き口元を見られていれば。
俺は、その都度デュースを抱きしめた。
「お前はどうして、他のやつへ無防備に懐く? なあ、俺がいればいいだろ?」
なんて、縋った。現実では口にしようともしない本音を、夢のデュースに叩きつけて。
デュースが俺の同級生にからかわれていれば、遊ばれていれば、面白がられていれば。
俺は、デュースへと触れた。
「この嗜虐心は、なにゆえ俺の心に鎮座して、消えないのだろうな? お前をこうして苛めるのは、俺だけで十分なんだ」
本当は、純粋で眩しいデュースのことを大切にしたいのに。俺の欲が、それを叶わせない。
何度も、夢の中で罪を重ねた。
そうしてデュースに触れる度、俺は知った。嫌というほど、己の醜さを知った。
そして、罪を重ねる度に、俺はその記憶を消した。忘却の毒を含んだ、葡萄色(えびいろ)のくちづけで。
だから、当のデュースをはじめ、身近な人すらも、俺の罪について誰も知ることはなかった。
俺さえ知らない顔で日々を過ごしていれば、誰も知ることのない罪、いわばこれは、完全犯罪だ。
だというのに、何故なのか。チクチクと、茨の棘のようなものが心に絡みついて、食い込むような心地はしていた。
日々エスカレートしていく心情と行為、そして背徳と罪悪に、幾度も「もうやめよう」と俺の理性が提案した。
俺はその提案を受け入れ、何度もこの馬鹿で愚かな行いを辞めようと試みた。
だが、デュースが俺ではない誰かを目に入れ、受け入れ、その眩しい笑みを向けている度に。
俺はどうしようもなくなって、デュースの夢へと入り、また罪を重ねてしまった。
そのうちに、夢と現実の境がなくなり始めて。
「シルバー先輩?
……
どうしたんですか?」
「あ、ああ、いや。なんでも、ない」
現実のデュースの顎すら、時にくちづけようと引くようになってしまった。
まるで酩酊だ。今ここにいる俺たちが現実なのか、夢なのか。自分でも分かっていないのだろう。
『たとえ明かせば汚泥でも、秘すれば花』だと自分に言い聞かせ、現実ではどうにか、デュースとの距離を保った。
ただ、どうしてか。デュースの方も、俺のそんな間際の距離を。なぜかだんだん、受け入れ始めてくれている気がした。
……
だが、それも。俺の都合の良い錯覚だ。きっと。
そうでなければ。顎を引いた瞬間のデュースの少し潤んだ目が。俺と同じ温度を持って見つめ返してくれているのだと、馬鹿な幻想の罠へと嵌まりそうになってしまうから。
今日も今日とて、俺はデュースに触れないことを試みる。
でも、駄目だった。今日も、駄目だった。
廊下の先に、デュースがいる。彼が立っている。そして、見つめる俺に気付いて、振り向いて笑う。
たったそれだけのことで、視界から彼以外が消えてしまう。こんなのは、革命だ。
そうして今日も俺は夢の中で、デュースを貪る。デュースという存在そのものを、好き勝手に貪り続ける。
くちづけ、抱き寄せ、愛の言葉をささやき、触れ。
そうしてこの病を誰にも悟らせまいと、葡萄色(えびいろ)の液体を呑ませ、すべてを忘れさせる。
いっそ何もかもを現実のデュースに教えて覚えさせてしまいたい気もしたが、それは彼にとって毒になるだけだと、最後の理性が控えさせていた。
この誠実が、俺を孤独にする。他でもないデュースだけが、うんざりなほど俺をたったひとりの孤独な男にしてしまう。
こんな気持ちが、恋と呼ばれるに相応しいのを知る度、俺は悲しくなった。もう、昂然としてはいられなかったから。
デュースの真っ白な心に残す、俺の葡萄色(えびいろ)の染みは、すぐに色褪せ、消えていく。
だからこそ、俺は繰り返す。すべての理想も、事情も、無意味に零れ、帰すままに。
何も知らないデュースを穢し続ける罪悪と背徳に苛まれながら、俺は今日もまた、罪を重ねるのだろう。
*
……
。まただ。
また、シルバー先輩に、ぎゅってされる夢を見た。
最近、こんな夢を見ることがたくさん増えた。
シルバー先輩にキスされて、好きだって言われて、ぎゅってされて。
なんだか恋人みたいな振る舞いを、たくさんしてもらえる夢だ。
僕はこれに、最初は戸惑っていた。なんで僕、こんな夢見るんだろう、恥ずかしいな。欲求不満なのかなもしかして、なんて。
自分がえっちなんじゃないかって思ったり悩んだりもした。でも、途中で、そうじゃないのかも、って気づき始めた。
夢の中のシルバー先輩は、いつも、お別れのとき。僕にぶどうジュースみたいなのを飲ませていくから。
それを飲むと夢が崩れて、目が覚めるんだ。
シルバー先輩の触れ方や、言葉が違っても、毎回それだけは同じで。
となると、シルバー先輩自身が何かしてるのかな? って。
そういえばシルバー先輩のユニーク魔法って他人の夢の中に入れるんじゃなかったっけ、って僕は思って。
もしかしてシルバー先輩、僕の夢の中に入ってきてるのかなー、なんて思った。
それで、キスしたり、抱きしめたりしてくれてるのかな、なんて。
ちょっと前に、現実の世界でもキスしようとしてるのかな、なんてことがあったし。
僕は、それを嫌だとは思っていなかった。シルバー先輩、もしかして僕のこと好きなのかな、って思ったから。
そう思うと、僕もなんだか顔が熱くなって、ドキドキするような気がして。
たくさん好きだって言ってぎゅってしてもらえるうちに、シルバー先輩のことをいつの間にか、好きになってしまっていて。
今日も来るかな、今日は来るかな、来るときと来ないときは何が違うんだろうな、なんて考えながら、いつも眠りに落ちる前、シルバー先輩を待っていた。
ま、まあシルバー先輩はちゃんとした人だし。こんなの、僕の妄想ってか、想像でしかないのかもだけど。
でも僕はなんか嬉しくて、だから、そうだったらいいなって思ったんだ。
シルバー先輩が僕のこと好きで、好きだって言いに来てくれてるなら、それがいちばん嬉しいからな!
だから今はまだ、このままで待ってるんだ。
もしこれが僕らにとってただの夢じゃないのなら、いつか夢から覚めた現実の世界で、シルバー先輩の口からちゃんと、僕のこと好きだって言ってくれる日を。僕は今、ただ、待ってるんだ。
あ、でも。本当は僕から、好きだって言ってみてもいいのかもしれないな。待ってるだけなんて性に合わないし。
だけど、ただもう少し、今はちょっとだけ。まだ、このシルバー先輩にふと与えられる、ふたりの秘密みたいな時間を、楽しんでたいな、と思うから。
いつか僕が「好きです」って言うそのときまでは、待っててほしいな。そんなことを思いながら、今日も先輩との逢瀬を楽しみに、ちょっと期待しながら眠りについた。
*おしまい
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内