ne🌟
2026-03-20 13:06:16
1100文字
Public 高諸
 

眠れない夜の、たった一つの安眠法

過去作、『おやすみ、大好きな人』にちょっとリンクさせたかった話

おやすみ、大好きな人→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24522771

闇が月ごと覆い隠した暗い夜。
高坂は長屋の廊下を灯りも持たずに歩いていた。
彼が両腕に抱えているのは荷物、ではなく尊奈門。高坂に運ばれながら、穏やかな寝息を立てている。

高坂は自分の部屋に着くと、全く起きる気配がない尊奈門を予め敷いていた布団に寝かせた。
主が不在だった布団はひんやりと冷たいのか、尊奈門はぶるりと身体を震わせる。それからもぞもぞと暖を求めて布団の中に潜り込んだ。少しして落ち着く場所を見つけたのだろう。再び穏やかな寝息を立て始めた。
その様子を静かに見守っていた高坂も、同じ布団に入り込み抱き枕のごとく尊奈門を背中から抱きしめた。
少し高い体温がじんわりと身体を温めてくれる感触が心地良く、それだけで心がほぐれていくような気がした。


自分以外の気配がある場所の方が、寝れるようになるなんて思っていなかった。

静かな夜、一人用の布団、自分以外の気配がない部屋。
それは親も友もいない狼隊に所属した高坂にとって、唯一肩の力を抜いて休める場所のはずだった。

それが崩れたのは、いつだったか。

実家を勘当された、憧れが怪我と療養を余儀なくされた、尊奈門が雑渡の療養に駆り出された。

それは今となっては過ぎた過去。
だが時折、それらは夜の静寂と共に高坂の心を蝕むときがある。そんな夜はもう駄目だった。目を閉じればあの日の絶望が蘇り、聞こえないはずの嫌な報告が頭の中に反響した。
何度かそういう寝れない夜を過ごしたある日、気晴らしに向かったのが尊奈門の部屋だった。

同郷、幼馴染、先輩後輩

尊奈門と高坂の関係を表す言葉は多い。彼なら夜中に起こしてしまったとしても、許してもらえるだろう。そういう気安さが二人の間にはあった。

――最初こそ、そんな軽い気持ちだった。
それがいつの間にか、寝れない夜は決まって尊奈門を自身の布団に招き入れるくらい、依存することになるとは。
高坂は、自嘲するように笑ってみせたものの、尊奈門を寝床に連れ込まないという選択肢は、もうない。

静寂ではなくなったが、心地いい寝息に満たされた部屋。
狭いけど、温かくなった布団の中。
一人ではなくなったが、感じる気配は昔から傍に居るのが当たり前だった。
それらすべてが、過去のトラウマに蝕まれる心を癒し、高坂の眠気を誘い込む。

「おやすみ」

先ほどまで荒んだ心を思わせないほど、穏やかで優しい声は、誰の耳に届くことなく、すぐに夜の静寂な中へ溶け込んだ。
寝ている相手からの返事など、当然無い。

だが、高坂はそれで満足だった。
自分の横に安心しきった寝顔の尊奈門が居る。それが一番の返事だから。