イライジャは目の前の疑問を解き明かすために、彼女と契約することを決めた。他の人間に任せるよりは、自らの手で解き明かしたかった。自分が見つけて回収してきたダーリンだ。
拾った犬は最後まで面倒をみよう。
「あんたと契約する」
「決断が早いですね」
そうかも知れない。少なくとも前回は熟考したし、一度持ち帰ってから後で回答を伝えた。しかしその熟考を得た上での二度目だ。
他の誰かと契約を結ぶよりは、おとなしい彼女がいい。
「軍人だからな」
「軍人なんですね。俺は初めてその職業の人にお会いしました」
「この街にはいないからな。それで、契約というのは」
その方法は、ダーリンごとに異なっているはずだ。
「今ここで?」
ラダは少し意外そうな顔をした。
確かに本来ならば許可がいる。しかし今回は上からそうしろと言われていて、しかも二度目だ。承諾したのなら任意で契約に移行していい。
「わかりました。俺の呼びかけに、特定の言葉を返してください。能力を扱うときも、それで発動できます」
「その言葉というのは」
「死が二人を別つまで」
まるで愛を誓うような言葉だ。ダーリンとファタールの契約にふさわしいといえばふさわしい。
「恋人同士みたいだな」
冗談めかすと、ラダの眉間に珍しく皺が寄った。
「この文化圏で、そのような意味を持っているということは知っています。だから不本意でした。俺には、妻が他に存在しているので」
ダーリンが生前の姿以外の形をとるとき、それは概ね強い執着を持った相手だ。彼女がどうしてその女性の姿をとったのか、ようやくわかった気がした。
「今の姿が、お前の妻か」
「ええ」
ラダは肯定した。
「ラダというのは、妻の名前だったのか」
ディレイルボマーの家族の話は、聞いていない。その存在について語っている映画はなかったはずだ。ハリウッド映画にありがちなロマンス要素として加えられているものもあったが、史実に沿ったものとは思えない。
「いいえ、彼女の名前ではないと思います。ただ、彼女の呼び名です」
わかりにくい言葉遣いをする。しかし、生前の妻ということで間違いはないらしい。妻以外の人と、愛を交わしたくないというのは、存外かわいらしい思考回路なのではないだろうか。
思ったより人間らしいところがある。
「それでは、俺と契約を結びますか?」
「ああ、死が二人を別つまで」
契約は、成立した。
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