ortensia
2026-03-18 11:55:38
1112文字
Public カトマク
 

カトマク(?)


 カートはむしゃくしゃしながら仕事からの帰路をマックスと歩いていた。路地は薄暗いが、二人を危険に晒せる存在はそういない。
「ねー。あの客ホント失礼しちゃうよねー。」
 マックスがカートに同調し、しかし煽るようでもなく、内緒話でもするように言った。マックスはこういう時静かだ。
 例えばカートとマックスがゲームをしていると、マックスに騒がしい印象を抱く人間が大半だが、そうでもない。カートが、マックスが騒いでも自分も煽られないのは、そのせいかもしれない。
 カートはマックスと違って、不機嫌さを隠しもしない不穏な空気を出している。これは相手になめられないよう、態と振る舞うこともあるが、全くの演技というわけでもない。その辺の崩れそうな壁を、もっと粉々に、前衛アートに作り直してやっても良い。これがリノベーション。
……マックスも、苛ついてんならそのまま叫んだっていいんだぞ。」
「ナニソレ俺イカれ野郎じゃん。」
 カートがこう言っても、マックスは笑って返すばかりだ。マックスがいくら静かだからと言って、それはむしゃくしゃしていないということではない。怒りにリソースを割く価値を感じていないだけだ。カートはマックスにもっと感情豊かでいてほしい。怒りに身を任せて暴れる姿だって見たい。
……その辺の壁殴ったりとか。」
「俺がそれやったら、痛い目見るのコッチだよね?……じゃあカート体貸してよ!」
「えっ?」
 マックスがむしゃくしゃして、怒りの捌け口にカートを選んだというのだろうか。それならそれでいい、寧ろそういうのもいいな。熱烈歓迎バッチコーイ。熱く激しい夜になりそうだ、上に乗ってくれるかベイビー、いいぜ発散させちまおう、何処までも付き合ってやるよ銀河の果てまで。
 どこかのホテルに強引に連れ込まれでもするのだろうかとカートが期待にどぎまぎしていると、きゅぽんと聞き慣れた、しかし今じゃない音。マックス愛用ガジェットの取り付け音、仕事の音だ。
「えっ?」
「じゃ、借りまーす。」
 カートの腕をハッキングで借りたマックスは、なかなかの出力でその辺の壁を殴り付けた。
「やっほーい!やっぱカートくんの腕は違うねー、さすが!カッチョイー。ありがとねー。」
 マックスは歓声を上げながらカートから機器を外して片付けると、自分の腕で殴ったわけでもないのに、殴るのに使ったカートの手と同じ側の自分の手をぶらぶらと振った。
 全くの予想外だったが、マックスは楽し気で、カートも楽しかった。それに、マックスが感情の発露のためにカートを使ってくれるなら、カートはそれで構わない。例え助平心を裏切られても。二人でいれば楽しかった。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。