望月 鏡翠
2026-03-18 10:45:05
1049文字
Public 日課
 

#2028 ラダ5

#毎日最低800文字のSSを書く/ダーリンランデブー!


 収容されたあとのラダは、しばらく内勤をしていたらしい。イライジャは契約の話を一度断ったし、ファタールという首輪がついていないダーリンは、外に出すのは危険すぎる。協力的であり物覚えもいいから、そちらの方面では重宝されているようだ。
 再び彼女と(少なくとも外見は女性なので、そう呼ぶことにした)会ったのは、かなり後だった。
 Ag:47の職員に選択肢はあると言われているものの、実質的には存在しない。一度断っても、再び話は回ってくる。きっと再検討という時間を経て、再度回ってくる。おそらく、うんというまで。
 断り続けるか、折れて受け入れるまでは。
 再度の面談。
 ラダは身綺麗になっていて、そして言葉が少し流暢になっていた。
「お久しぶりです」
 イライジャは彼女に名前を覚えられていたことに、少し驚いた。収容された直後、意識が朦朧として状況がよく理解できていなかったようだ。それでも、イライジャのことを覚えていたのだ。
 それは警戒心を強めるに十分な理由だった。
 映画作品で見ただけだが、彼が周囲の人間をたらし込んで自分の味方にしていたことは知っている。そういう才能があったはずだ。
 こうして思ったよりも自分のことを覚えているという部分で、他人の関心を惹いていたのだろう。
 能力は精神操作系ではない。であれば、気をしっかりと保っていれば、飲み込まれることはない、はずだ。不安になったらすぐに申し出よう。こういうとき、危ないのは自分こそ大丈夫だと思い込んでいる人間だと、相場が決まっている。
「前回お会いしたときには、お名前を聞きませんでしたね。俺はあなたのなんとお呼びすればいいですか」
「イライジャ。ファミリーネームはない」
「わかりました。あなたをイライジャと呼びます」
 相変わらず、AIと会話をしているようなぎこちなさがある女だった。喋り方の速度が一定で変わらないところが、そう思わせるのだろうか。感情がわからない。
「じゃ、俺はなんと呼べばいい」
「ラダ」
「ノイ カシパ ウタネ コン マヨリじゃなくてもいいのか」
「いいえ、この人物はラダです。そのように登録されていると思います」
 珍しいな、と思った。
 何もかも好きにしてくれて構わないという態度なのに、この件だけは妙に頑なだ。その性格や性質を解き明かすために必要な、拘りなのかも知れない。
「なら、お前のことはラダと呼ぶ」
「ありがとうございます」
 ラダという顔の女は唇の端を少し持ち上げて、笑って見せた。